/// 41.大樹の家構想 in ラミアドルフ獣王国

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/// 41.大樹の家構想 in ラミアドルフ獣王国

ラミアドルフ獣王国3日目。 アンジェはウェストのギルド長室に来ていた。 「では、孤児院を取りまとめて、支援していく体制を作りたいと・・・」 そう話すのはギルド長ライゼンであった。獅子獣人の金髪が麗しい美丈夫マッチョであった。 昨晩、なんともなしな会話の中でここ周辺の孤児院などの状況はどうなのだろうという話になった。やはりラビの故郷。皆が楽しく過ごしてほしい。そんな思いで出てきた話で合った。獣人族が多数いるこの地では、家族以外でもだれかれかまわず助け合う習慣があるという。 昔は弱肉強食な風潮があり、弱いやつは捨てておけといったことが普通であったらしいが、徐々に他の種族が増えてくるとそれに異を唱える者も増え、今では逆に弱いものを保護して助け合うことが正しいと、ごく当たり前なことなのだがここ異世界においてはあまりない風潮になっていたようだ。 孤児院としての集まりは小さく、その他に小さな地域ごとに数名で助け合うサークルのような形で成り立っているようだった。 ラビから、エルザード帝国イースト地区の大樹の家の仕組みを説明されたライゼンは唸る。そして、それは未来の冒険者を育てるということにもつながると聞き、なんとか導入にこぎつけたい気持ちも芽生えていた。 結局は資金面の問題もあったが、アンジェから実現するなら100万エルザぐらいなら毎月ギルドを通して送金することを約束されると、他国の、それも可愛らしいお嬢さんに言われてしまえば、ライゼンも重い腰を上げないわけにはいかなかった。 ライゼンは資金援助については無理はしなくては良いと返答し、エルザード帝国イーストのギルドとも連携して運用を決めるということになり、ラビたちの様子を見たいという要望に手の空いている職員を案内につけるということになり、その日はお開きとなった。 「ども!ミルフェルです!よろしくねー」 目の前にはギャル?といった感じのラフな格好をしたラビと同じ兎獣人のミルフェルという女の子が、アンジェに握手を求めてきていた。アンジェは腰を引かせながらその握手に答えていた。 「久しぶりねミルフェル」 「ラビたんもお久~戻ってきたんだね」 ミルフェルはラビと幼馴染ということもあり、今後の案内や孤児院に関するあれやこれをまかされたらしい。 「とりあえずは現時点で孤児院って登録されているのは3か所。その内一つは遠いから今日は2つだけかな?」 そう説明され「レッツゴ~♪」の掛け声とともに最初の孤児院に向かった。途中はラビとミルフェルは仲良く話しをしていたので、加われないアンジェはキュルを頭にのせながら、ラビの腕にくっつき現実逃避をしていた。 ここに来てから徐々に他の人と話すことも多少はできていきているのだが、やはり恥ずかしさがこみあげてくる時も多い。そんな時はラビの腕にしがみつきその感触を堪能するのが一番である。そんなアンジェを受け入れ、そっと頭を撫でてくるラビのやさしさにキュンキュンきながらも最初の目的地に到着した。 「ここでは10名の子供たちが、近所の人たちに助けながら生活してるよー」 豪華ではないがそれなりの広さのある小屋?のような場所に案内されると、そのまま中に通されると子供たちが「こんにちわ」と口々に挨拶をしてきた。人族も2人ほどいるようだ。お風呂や台所もあり家事全般を子供たちがちゃんとこなしているという話だ。 近所の援助で成り立っているので、決して満足とはいえないが、飢えることは無いようであった。 幸い冷蔵の魔道具などもあったため、大量にストックしてあるボア肉とオックス肉の塊を冷蔵の魔道具に詰め込めるだけ詰めると、動力源の屑魔石も大量に置いていく。それらを出すたびに子供たちから大きな歓声と「お姉ちゃんありがとう」という言葉に恥ずかしくもあったが嬉しくもあった。 近所の支援していた人たちにも挨拶とお肉や魔石について説明しておく。ここでも感謝の言葉が飛び交っていて嬉しくなってしまう。その気持ちの高揚した状態で次の孤児院へ行き、同様の状況にまたお肉と魔石を取り出すアンジェであった。 その日の夜は、久しぶりに再会した幼馴染ミルフェルと一緒に地元の個室居酒屋に繰り出した。 最初のうちは恥ずかしそうに言葉少なだったアンジェも、ラビとの昔話というなの黒歴史を話し始めたミルフェルに、喰いつくように鼻息を荒くさせ、根掘り葉掘り聞き続けていた。ミルフェルは「アンジェちゃんかわいー!」と言いながら酒が進んだようだった。 ラビは少し恥ずかしそうにため息をつくながらも、酒も進んでアンジェを撫でまわす手の動きもまた滑らかになっていった。その楽しい宴は、閉店となる深夜4時に店のサービスとなる仮眠室に、三人ともべろんべろんになって放り込まれるまで続いていた。 翌日になって、なぜだか三人ともが少し頭の痛みをこらえての視察となった。 3件目の少しはなれた孤児院に行き状況を確認する。孤児の人数が30人程度と数は多かっただけで、状況は同じようなものであった。もちろん肉と魔石は置いていく。 そしてその日の午後から、アンジェ達はダンジョンに潜って黙々とお肉を狩ってはギルド経由で孤児院への支援に充てるよう手配していた。 ◆西部・ラミアドルフ獣王国・ウェストギルド長室 滞在最終日の午前。出掛ける際は、ラビの屋敷の一同が盛大にお見送りをしてくれた。そして出向いたギルド長室で話を聞く3人。 「なんでか知らんが、どこからか話を聞きつけた地元の有志が結託して支援に乗り出してくれるようだ。もちろんギルドを通しても支援する。ギルド近くに広大な土地も用意した。少しづつにはなるが支援が必要な孤児たちはすべてそこに集め、支援していくことになる」 その説明をしてから「ありがとう」と深く頭を下げるライドウに恐縮してしまうアンジェとラビ。どうやら良い流れとなりそうであったので、こちらでもできることがあればと伝えてその場を後にした。 午後一の飛竜便で1週間ぶりのエルザード帝国イーストに戻ってきたのは夕方過ぎであった。 その日は、色々な疲れもあって簡単な食事を収納から出した三人は、住み慣れた部屋で疲れた体を癒すように眠りにつくのであった。 ◆神界 「明日から!45階層!行くのよね?」
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