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何も気にもせずベッドに座り、自身のスマートフォンに手を伸ばす暁斗。
「俺も奥さんに連絡しなきゃ」
もちろん、真彦との関係は秘密にすると言う。
妊娠して入籍したが、その間に夫が浮気。しかも、その相手は男だった。それは可哀想すぎると、他人事のように笑う。
「でも、女の人って鋭いもんな?」
からかうように聞かれ、真彦は何も返せなかった。
暁斗はさらに、
「な、晩メシ何リクエストしたらいいと思う?」
と尋ねてきた。が、真彦は何も思い付かない。
「だろ? 分かんねーだろ? 毎日聞かれてみろよ、嫌になるぜ」
そして今度は、結婚生活への愚痴を吐き始める。
何でもいいと答えても聞いてくる事、リクエストをしたらしたで大変だと言われる事。女性特有の、気分が不安定である事や、大人になっても自分の機嫌が取れない事などをつらつらと並べ立てた。
そして、ふと目が合うと、
「やっぱ真彦といるの安心するわ。デキ婚でこんな話してんの、他人にバレたら終わりだもんな」
と言って、裸の胸に抱き寄せてきた。
真彦は、どうしようもない喜びを感じた。
女性でなくて良かった。暁斗にとって落ち着く相手になれて良かったと。
やはりパートナーにしろ夫婦にしろ、所詮は書類上の話でしかない。今ここにおいては、まったくの無意味なのだ。
いかに社会的に正しくなかろうと、そう感じずにはいられなかった。
「子供出来たら愚痴増えるかもだけど、これからもよろしくな」
その言葉は真彦にとって、プロポーズとも言えた。
ずっと思い続けた暁斗と、今度こそは関係を続けていくという、幸福感と安心感があった。
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