夜は渋谷で暁の夢を見る

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偶然の出会いから5日後の水曜日、真彦と暁斗は道玄坂のイタリアンバルで再会を祝った。 今夜の暁斗は仕事帰りだと言い、ネイビーではなくブラックのジャケットを着て、花束ではなくビジネスバッグを持っていた。 彼は改めて真彦になぜ渋谷に来たのかを尋ね、返答に迷う様子を見て、 「ま、あんな狭いコミュニティじゃーな。“オレらみたいの”は」 何か察したように、グラスに口を付けた。 どうやら、当時の事を忘れているわけではなさそうだ。 その薬指に、先日なかったはずの指輪が光っているのに、真彦は待ち合わせた時から気が付いていた。 「入籍したんだよね。まあ、デキ婚なんだけど」 「そ、そうなんだ。おめでとう……」 「ちなみにだけど、真彦と会ったあの日だぜ」 現状を話し合う中で、真彦は中学以来、男性としか交際経験がないと打ち明ける。 上京して来たのは、それが勤め先の郵便局に知られ、地元に居づらくなってしまったためだ。 人目のある場所で、何かやましい事をしていたわけではない。ただ、同僚女性の、彼女ら特有の勘と話好きな性質によって、噂を流されてしまった。 男性客へは対応が良かった、郵便物に何か汚い物が付いていた、などと、苦情が入るようにまでなっていた。 真彦は両親に迷惑をかけるまいと、仕事を辞め、バッグひとつで出て来たのだった。 暁斗は、真彦が悪いわけじゃないと憤り、新宿二丁目なる場所の存在を教える。 「ヤツが集まる所! 新しい出会い探して、見返してやろうぜ」 「あ、あんまり、今は探してないかな」 実は、真彦はまだ、地元に残してきた相手と正式には別れていない。 その相手とは、暁斗の実の弟・夕斗だ。
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