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すっかり出来上がってしまった真彦は、暁斗に担がれて店を出た。
夜遅くでも多い人通りの中、同性同士で肩を組んでいても、誰からも注目されずに済むのが心地よかった。
2人は文化村通りの裏手、ネットカフェのあるビルに到着する。四方をラブホテルに囲まれた、ひとけのない道に面している。
エントランスにしゃがみ込み、眠気に耐える真彦。
その手に、暁斗が名刺を握らせてくる。
「しばらくいるなら、アテがねー事もねーぞ? 社員じゃなくてバイトだけど」
今後どうするか決めるまでの繋ぎにでも、と仕事を紹介すると言うのだ。
自分のために憤り、面倒まで見ようとしてくれる彼に対し、真彦は忘れようとしていた想いが再燃するのを自覚する。
中学時代、2人は確かに、関係を持っていた。彼の部屋に呼ばれ、キスをしたり、体を触り合ったりしていた。
しかし、今この時、同じように迫ろうとはしなかった。真剣であるほど、酒に酔った勢いという事にされたくなかったからだ。
暁斗は真彦をエレベーターに乗り込ませ、
「生きてたら連絡しろよ」
ドアが閉まる寸前、そう言った。
翌日も無事に生きていた真彦だったが、やはり連絡するのは躊躇ってしまう。
時間だけが過ぎ、数日後、ついに暁斗の方から連絡をよこしてきた。
『生きてる? 仕事決まった?』
くすぶる感情を抜きにしても、まだどうするか決めかねている真彦は曖昧に返信したが、暁斗はランチタイムに合わせて来るよう呼び出す。
オフィスは、渋谷駅直結の施設にあると言う。
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