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親友に報告を
そのまま週末はマサの勧めもあり自宅に帰らずにマサの家で過ごした。その分平日に自宅で独り夜を越すのはしんどくて辛かった。
仕事は変わらず慌ただしく、必死に打ち込めばなにも考えずに済んだ。それだけでも気が紛れた。
今週末マサはどうしても外せない仕事があるらしく、一緒には過ごせない。家の鍵を渡されてはいるが、マサのいない部屋で独りで過ごすのも寂しさが募る気がした。
道香は悩んだ末にめぐみに連絡をとり、今回あったことを説明した上で、泊まりに行っても良いか尋ねた。二つ返事でOKされたので、小ぶりな旅行カバンを持ち、仕事帰りにめぐみの新居に向かった。
「よー。いらっしゃい。上がって上がって」
「お邪魔します」
十帖のワンルームのめぐみの新居には、必要最低限の家具だけが揃えられていた。聞けば実家から見合いの話が出ているらしく、結構な良縁のようで見合いの席に顔を出すらしい。
「めぐみがお見合いとか、なんか不思議な感じ」
「思ったより元気そうで安心した」
「……うん。ごめんね。きちんと忠告してくれたのに私」
「怖かったよね、思い出させてごめん」
「まだね、時々体が震えるんだ」
「道香……」
めぐみは涙ぐんで道香をハグする。もっときちんと釘を刺せば良かったとめぐみは自分を責めるので、そうじゃないと返す。
「私がいけないの。もちろん悪いのは向こうだけど、今回のことで人のことを信じすぎる自分の甘さを痛感した。世の中善人ばかりじゃないんだよね」
ハグをほどくと、めぐみの手を取って友達は良い人だから人を見る目が無いわけじゃないと思うんだけどねと苦笑いする。
「で、あの口も態度も悪いマサって人が助けてくれたんだよね。付き合い始めたの?」
「分かんない。同情から一緒にいてくれてるのかも。家の鍵は預かってるけど、どんなふうに思われてるのか本当に分からなくて」
「まあ、難しいところだよね」
デリバリーでも頼もうかとめぐみはスマホをタップして、たまにはピザのドガ食いとかどうよと笑う。つられて道香も笑うとそれなら大量のビールが要るねと買い出しに行く相談をする。
とりあえず先にコンビニに行ってビールを大量に買い込むと、帰宅してすぐにLサイズのピザを二枚と他にもサイドメニューを山ほど頼んだ。
「で? アンタ自身はマサさんのことどう思ってんの」
熱々のピザを頬張りながら、めぐみは道香を見てこれ美味い! と早く食べるように促す。
「どうかな。凄く優しい人だよ。同情からだったとしてもそばにいて癒してくれる人だし、好きは好きだけど……」
言い淀んだのは、未だにマサの本当の仕事を知らないからだ。出会って日も浅いし、身体の関係が先行したこともあって、同情してしまう哀れな女だと思われているような気がしていた。
「マサさんて、まだあの店で働いてるの?」
「あ、うん。なんだかオーナーにお世話になったことがあって、恩返しって言ってた」
ピザを頬張りながらしばらくマサの話をする。話と言ってもあまりよく知らないことの方が多い。結局どこらへんに惹かれるかなど、当たり障りのない恋バナになる。
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