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好きな人の腕の中で※
風呂に入るとすぐにマサに求められた。道香はそれに応えて甘い嬌声を漏らし、二度ほど絶頂を迎えた。
一度目は湯船の淵に座らされ、蜜口をひたすら責め立てられ、逃げ場もないまま果てた。
そして湯船から上がると、壁に手を付くように言われ、後ろから何度も熱で中を突かれ、激しく抱かれた。足が震えてまともに立っていられなくなるほど、何度も激しく責め立てられ、熟れた蕾が弾けるように熱くなるのを感じながらマサより先に甘く喘いで絶頂を迎えた。
それから髪や身体を洗い、顔も洗ってきれいにメイクを落とすと、再び湯船に浸かってゆっくりと身体を温めた。
マサは先に出て、出しっ放しになっていた料理を冷蔵庫にしまうとビールを飲み、道香は昨日めぐみの家でも寝巻きに使ったTシャツと短パンを履いて髪をしっかり乾かすとバスルームを出た。
「寒くないか?」
「大丈夫だよ」
マサの隣に座ると、ビールを飲むか聞かれたが、道香はそれを断ってマサにもたれかかりながら、引っ越しの話をし始める。
時期はどうするか、決定の期限はいつまでなのか、お互いの通勤を考慮した場所で探すのか。確認したいことは山ほどあった。
「それなんだけどな」
「ん?」
「うちとビザリーがコラボする企画があるんだ。共通のコンセプトで独自のラインを作る構想だな」
「え、うちの会社と?」
「プロジェクトチームが組まれる中に、道香の名前もあったぞ」
「そんなの初めて聞いた!」
「まあ水面下での交渉ではあったからな。俺は元々営業企画の本部長で、レディースの展開を検討してたんだ。そこに家の事情で急遽専務になる話が浮上して、まとまり掛けてた話が一度立ち消えたんだ」
「そうなの?」
「俺がメインで担当したんだ、ビザリーの神山さん分かるだろ?」
「ああ! 営業企画の神山部長?」
「ビザリー側のゴーサインは神山さんが出してくれたんだが、俺の方が家のゴタゴタで専務になることになって、商談が一時的にストップしたんだ」
ビールを飲むと少し表情を歪めて困った顔をする。
「ゴタゴタって何か聞いても大丈夫?」
「ああ。姉貴の旦那もうちで働いてるんだけどな。優しくて真面目な人なんだけど、経営側には無頓着で常務のくせにデザイン室にこもるような職人気質なタイプでさ」
「……常務」
「親父は娘婿としては可愛がってるしデザイナーとしても買ってるんだけど、義兄さんを経営者としては見込んでないんだよ。だから今更ながら俺にお鉢が回って来ちまった」
姉婿を思い浮かべているのか、困ったように笑ってマサは良い人なんだけどなと呟く。
「なるほど。で? 本部長から一気に専務に昇進しちゃったの」
「役員会とか諸々の段取りはあっただろうけど、俺も中途半端に実績を出してたから、話が通っちまったんだよ」
道香にはもう理解が及ばない世界線の話である。つまり嫡男であるマサは自他共に認める仕事をこなし、実力で専務にのし上がったことになる。
「なるほど。とはいえよく分かってないんだけどね」
道香は正直にそう言って笑ってごまかすと、マサはそれで良いよと道香を抱き寄せた。
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