プロローグ

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♢♢♢♢♢  彼女、斉木(さいき)穂乃花と仲良くなったのは、高校に入学してすぐのことだった。何のことはない。ただ出席番号順に座った席が前後だという理由でよく話すようになり、自然と一緒にいるようになっただけだ。それでも4年以上も一緒にいるのだから、気が合ったということなのだろう。  私にはじめての彼氏ができたのは、高校入学からひと月ほど経ち、5月の大型連休も終わってようやくクラスに馴染んできたころだった。隣のクラスの男の子に告白されたのだ。 「篠崎(しのざき)さん、俺と付き合ってくれないかな。入学式の時に見て、それからずっとかわいいなって思ってて…」 「付き合う…?それってどういうこと?具体的に何をするの?」  真っ赤になって少しうつむきがちだった彼の顔が、キョトンとした表情に変わり、私の顔をまじまじと見つめた。それはそうだ。今時小学生だって彼氏彼女がいるような時代に、突拍子もないことを言われて驚くなという方が酷だ。 「えーと…、何って言われても…。放課後一緒に帰ったり、デートしたり…とか…かな?」 「なるほど」  言い訳をしておくと、中学までは勉強しかしておらず、色恋沙汰なんてものは全くなかった。朝起きてから夜寝るまでずっと机に向かっていたといっても過言ではない。部活動は必須だったので、とりあえず部員の少なかった文芸部に所属だけして、部活動のある週2日は部室で勉強。それ以外は塾に通っていた。知識がどんどん身に付いていくのが楽しかったからそれ以外のことに時間を割くのはもったいないと感じていたし、特別興味もなかった。これまでは。 「いいよ」 「えっ、付き合ってくれるってこと?」 「うん、付き合う」  突然、恋愛というものに突然興味がわいたのだ。高校生にもなると、どこのクラスにかわいい子がいるだの、あそこの部の先輩がかっこいいだの、誰と誰が付き合いだしただの。そういった話題が途切れることがなかった。  恋ってどういう感情?誰かを好きになるってどういうこと?誰かに思われるってどんな気分?とにかく私は、いままで感じたことのない気持ちを知りたかったのだと思う。
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