「そんなに魅力ないですか」

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 それから少しして、仕事の電話があったようで和泉さんとケンさんが話しながらスタッフルームへと入って行った。カウンターの中には山本くんとアルバイトの男性の2人だけだ。  あの女性たちがチラリと私の方を見ると、グラスを持ってテーブル席へと向かってきた。 「詰めて詰めて〜」 「えー、と…」 「一緒に飲もうよ〜」  私を奥へ追いやると、隣にひとり、向かいに2人の女性が座る。  その様子を見て、山本くんが焦ったようにカウンターの中からこちらへ来た。 「すみません、元の席へお戻りいただけますか」 「なんで〜?この子と仲良くしたいだけなのに」 「さっきはこっちに移動して欲しいって言ってたでしょ?」  女性たちは聞く耳を持たない。 「すみません、注文いいですか?」 「…はい、お伺いします」  奥にあるテーブル席のお客さんに呼ばれ、山本くんは心配したような顔で立ち去った。 「前会ったよね、開店前のお店の前で」 「そう、でしたっけ」 「前は否定してたけど、和泉くんと何かあるよね」  やっぱり。この人たちは和泉さんのことを聞くために私のそばに来たのだ。 「いえ、特に何も」 「ふーん、まあいいけど」  こんな人たちに本当のことを言う義理なんてないし、言ったところで信用されずに文句を言われるだけだ。私も学習した。 「てかさ、和泉くん変わったよね〜」 「ね!思った〜。何年か前まであんなに遊んでたのに」 「選り好みはするし来る人拒まずって訳ではなかったみたいだけど、シたいときは性欲我慢しない、みたいなさ」 「そうそう!そんなイメージ!」  私はこの人たちに何を聞かされているんだろう。昔のこととはいえ、気分の良いものではない。 「それが今は誰が誘っても靡きもしない」 「つまんない男になったわ〜」 「あの適当さが良かったのに」  先ほどまではあんなに女性らしさを全面に出してアピールしていたというのに、本人がいないところではこうだ。 「あんなの和泉くんじゃないよね。ダッサ」 「昔のままの方がかっこよかった〜」 「…あなたたちに、和泉さんの何が分かるんですか」  好き勝手に言う彼女たちに我慢ができず、つい口に出てしまった。
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