「そんなに魅力ないですか」

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 一度言葉にするともう止まらない。 「和泉さん、確かに昔はそうだったかもしれないですけど、だから何なんですか。昔と違うからってどうして関係のないあなたたちがそこまで言うんですか。つまらないとか、ダサいとか、昔のままが良かったとか、好き勝手言わないで」 「はぁ?何急にキレてんの?」 「自分が少し相手してもらってるからって調子乗ってんでしょ」  突然怒りを露わにした私に、女性たちの態度もガラリと変わる。 「それにこの紙袋、チョコでしょ〜?」  隣に座っていた女性は私が彼に用意したチョコレートが入った紙袋を手に取ってゆらゆらと揺らす。 「知ってた?和泉くん、個人的な贈り物は受け取らないの」 「今日女性客多いでしょ?みーんなバレンタイン渡したくて来てるんだろうけどね。お店にってことならこれも受け取ってくれるよ?」  以前からバレンタインの贈り物は多いようで、お店に対してチョコレートを持ってきてくれた人たちにお返し代わりにお酒を1杯サービスしているのだとか。 「私たちは今の腑抜けたカッコ悪い和泉くんには興味もないし、個人的に受け取ってもらわなくてもいいんだけどね」 「…だから何でそんなこと…っ」 「なあに?またキレんの?」  この人たちが和泉さんを誘っていたということは、好意があったということではいの?これが好意のある人に対する物言いなの? 「和泉さんは、面倒くさがりだけど優しいし、滅多に感情出さないけど笑ったら可愛いし、かっこいいし、気遣いもしてくれるし…。あなたたちが知らない魅力、たくさんある」  だめだ。腹が立ち過ぎて涙が出る。語彙力がなくなる。悔しい。こんなことで泣いていたら、また子供扱いだ。 「…こんな人たちだから和泉さんは振り向いてくれなかったんじゃないですか」 「はあ?何言ってんの、このクソガキ」 「私たちが何言おうが、私たちの勝手でしょ」  彼女たちは激高しているようで、今にも私に掴みかかってくる勢いだ。 「返してください、それ」  怒りに任せてギュッと握り潰されている紙袋を取り返そうと、私も手を伸ばす。 「別にこんなのいらないし。返してあげるわ」  そう言って、女性は私に紙袋を投げ付けた。
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