「そんなに魅力ないですか」

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 数杯お酒を飲んでから、寝室へ移動した。いつものように私がベッドの奥側へ。 「明日バイトは?」 「えっと…17時から、かな」 「じゃあ一緒に行くか」  こうして一緒に出勤できると分かっているから、最近は夕方からのバイトにしている。 「おやすみ」  そう言って、軽くキスをする。  これもいつものこと。 「…もう寝る?」 「ん?寝れない?」 「そういうわけじゃ、ないけど…」  和泉さんは私の唇に触れること以外、何もしない。  何故なんだろう。年末年始の旅行の時はもっと、なんていうか…求められていた気がするのに。 「どうした?」  ギュッと抱きしめてくれるけれど、それだけ。  別に何もなくたって、彼の気持ちを疑うことはない。でもやっぱり触れたい、触れて欲しいと思うのは私のわがままなんだろうか。 「和泉さん」 「ん?」 「…私、そんなに魅力ないですか」  私の髪の毛でくるくると遊んでいた彼の指がピタリと止まった。 「だから、何もしないの…?」 「何、していいの」 「え、と」  和泉さんは意地悪そうに笑って唇を合わせる。 「ん…っ」 「キスするだけでこんなにガチガチに固まってるヤツに手ぇ出せる訳ないだろ」 「だって…んんっ」 「本当に魅力ないなんて思ってんの?こっちは毎回毎回我慢すんのに必死だわ」  何度もキスを繰り返しながらそう言う彼は、完全に男の人の目をしていた。  私、そんなにガチガチだっただろうか。緊張していたのもあるけれど、いつその先に進むのだろうという落ち着かなさもあったのかもしれない。  それより和泉さん、我慢してたの…?全くそんな素振りも見せずに余裕たっぷりだと思っていた。そんな彼の視線を浴びて本心を聞いたら、嬉しいのやら恥ずかしいのやらなんとも言えない気持ちになって、フッと顔を逸らしてしまった。 「逃げんな」 「逃げて、ない」  横を向いていた私の身体をグッと押し倒すと、唇がまた捕まった。  唇の隙間からぬるりと入ってきた彼の舌と私の舌が絡まる。 「ん、んん…っ、ふぁ…」 「俺さ、結構性欲強いんだわ。一回タガ外れたらもう我慢なんてできねえよ」 「…っ、ん、そ、れで…いい、よ…」 「言質取ったぞ。…あとで撤回はなしだ」  下から見る彼の熱っぽい視線と唇に溶かされてしまいそうだった。
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