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少し前にテーブルに置いた怜南のスマホが光っているのには気付いていた。きっとメッセージを受信していたのだろう。すると今度は着信音が鳴った。
「怜南、電話じゃない?」
「んー?美晴が出て〜。もう全部イヤなの」
「ええ…」
画面には『和泉絢斗』とあった。男性?この時間だから、例の年上だという彼氏だろうか。
「和泉って人、彼氏?」
「和泉さん…?うん、そうー」
俺は仕方なく通話ボタンをタップした。
「もしもし…」
『…あ?誰だ』
「あ、えっと…怜南の友人の平岡美晴と申します!」
『怜南は』
こ、怖っ。そりゃそうか。彼女の電話に知らないヤツが出たら、確かに不信感はある。
めちゃくちゃ丁寧に自己紹介してしまった。
「えーと…。だいぶ酔ってるみたいで…」
『…場所どこ』
「S区役所近くの◯◯っていう居酒屋です」
『ああ、そこか。今から行く』
そう言って電話が切れた。
居酒屋の名前だけで分かるのだろうか。今からってどのくらいだろう。
「怜南〜。彼氏、和泉さん?迎えにきてくれるって」
「迎えに来ないよ〜。約束はいつも破られる。私はいらない子だからね」
どういうことだ?先ほどの電話ではすごく心配そうな様子だったし、迷うことなく迎えに来ると言っていたけれど。いつもはそんなことないのだろうか。
「はーい!みんな潰れてるし、今日はお開きで!三次会行く人は勝手にどうぞー!潰れてる人は手分けしてなんとか連れて帰ってー」
二次会も先輩たちがご馳走してくれた。お会計も既に済んでいるようで、なるべく早く外に出たいところだ。が、しかし。
「怜南〜、起きな〜」
「んー」
怜南が一瞬のうちに寝てしまった。あと少しで彼氏に引き渡せるというときに。
俺は仕方なく怜南の腕を自分の肩に回して腰を支えて立ち上がった。周りの子たちもほとんどがお酒が回ってテンションが高い。フラフラと危なげな子もいるし、怜南のように抱えられている子も数人いる。
「おー、怜南ちゃんもいい感じに酔ってるねー」
「このまま三次会行こうよー」
そう言って近付いてきたのは男の先輩たち。
俺の反対側から彼女の腰に手を回そうとしてきた。止めたいけれど、逆の手では届かない。かと言って俺が支えている手を離せば、怜南は地べたに座り込んでしまうかもしれない。
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