プロローグ

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プロローグ

 マナーモードに設定していたスマホがブブッと小さく震えた。ちょうど2コマ目の講義が終わったところで、カバンからスマホ取り出してロック画面を見ると、12:20と大きく表示された時間の下にメッセージアプリの通知が目に入った。 『別れよう。』  驚きを隠せずに呆然と画面を眺めていると、再度スマホが震え、またメッセージが送られてくる。 『怜南(れな)の気持ちが分からなくて辛い。俺も怜南に対しての気持ちがよく分からなくなった。ごめん。』  昨日までは彼が私と別れたがっているなんて、そんな気配すらなかった。いつものようにお互いのバイトが終わったころに連絡が来て、彼が好きなごはん屋さんに一緒に行って、駅まで一緒に帰った。「またね」と言って笑ってくれた彼の笑顔に、ウソはなかったはずなのに。どうしてだろう。知らず知らずのうちに私は彼を傷つけてしまっていたのだろうか。  どうしたら私の気持ちを分かってもらえるのか、どうしたら彼を引き留められるのか。それでも、別れたいと言っている彼をこれ以上困らせたくはなかった。 「穂乃花(ほのか)、ちょっと待ってて」 「うん。どうしたの、彼氏?」  隣に座っていた友人に声をかけ、スマホのロックを解除してメッセージアプリを開く。 『分かった。今までありがとう。』  それだけ返信すると、机に出しっぱなしだった教科書とレジュメを少し乱暴にカバンの中へ放り込む。そんな私を見た穂乃花が心配そうにこちらを覗き込んだ。 「なに、彼氏からじゃなかったの?」 「そうだけど。…別れようって」 「はぁ!?またぁ!?これで何回目よ!」  穂乃花がすごい剣幕で私に言い寄ってきた。彼女がこういった反応をするのには訳がある。
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