それぞれの行方

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それぞれの行方

 山の方々で色づいた葉が落ち始め、冬の足音が聞こえてくるようになっていた。若は母猫を連れて街へと戻り、二か月を過ぎた子猫たちも、仮の住まいであった狛山家からそれぞれ里親に貰われていった。神術のせいかは定かではないが、町から募った里親には、三毛猫が餌を貰いに訪れたあの家々が請け負った。三毛猫と面識がないはずの洋館の婦人も、あの白猫の里親となった。  多忙な敬子に代わって、里親への受け渡しは、汰朗と眞弓が行った。白猫を届けた際の婦人との会話で一つ、不可解な点がある。婦人は、猫を飼うのが初めてだというのだ。ただ、祖父からの言いつけで、キャットフードと水は必ず一日二回、出窓のある部屋に置く決まりになっており、一度も欠かしたことはないという。婦人に見送られながら出窓を仰いだ汰朗は、黄昏色の双眼を持つ白猫と、二又のしっぽを器用に使ってその遊び相手をしてやるペルシャ猫を見て、その真相をひとり理解した。  三毛猫の事件を機に起こった大きな変化が一つある。汰朗が以前よりも眞弓との会話を大切にするようになったことだ。眞弓を守り導かなければいけないと頑なになっていた汰朗だが、眞弓の求める関係が、そのようなものではないと気づいたからだった。  全ての子猫を里親へ受け渡した帰りのこと、ふたりで歩くあぜ道で、汰朗は足早に数歩前へ出た。主従や上下のないふたりの関係を、曖昧に築いて過ごした時間に決着をつけるためだ。眞弓の方へと振り向くと、少し考えてから口を開いた。 「これからもよろしく頼む、相棒」  眞弓は目を見開いたが、すぐさましゃがみ込むと、汰朗をぎゅっと抱きしめる。  眩しいほどの西日が、ふたりとその行く先を照らしていた。
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