第3章 深き怨み

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第3章 深き怨み

宗盛は時信から厳しい宿題を与えられたため正月3日の蹴鞠大会は何とかではありますがそれなりの様でした…。 宗盛は大会が終わると、 とても疲れたようで部屋で2日程 バタンキューしておりました。 そんな宗盛はさておき… 正月5日となった現在、 宗盛「漸く元気になったのだが… 蹴鞠のし過ぎで倒れてしまうなど 平家の恥だと総帥から言われてしまったのだ…知盛。」 回復したものの総帥である清盛から叱られた宗盛は肩を落としていました。 知盛「回復した昨晩、総帥から雷を落とされてしまいましたからね…。お疲れ様です、兄上…」 宮中勤めをしながらも兄のご機嫌も取らなければならない知盛もなかなか大変でございました…。 それともう1つ大変な事が起きており 鳴海「知盛様、何か御手伝い出来る 事はありますか?」 治部卿局こと武藤 鳴海はあの日から 何かある度に…いいえ…何もなくても 知盛の元を訪れるようになりました。 知盛「今のところは何もないですよ。兄上の頑張りが実を結んでもう蹴鞠の稽古をしなくても良くなりましたので…。」 聖の事を案じ想い続けている 知盛の言い訳に使われた宗盛でしたが 宗盛「そうだろ? 私、頑張っただろ?」 単純明快な宗盛はそれさえ気づかず 満面な笑みを浮かべながらただ… 喜んでおりました。 知盛「はい、ありがとうございます。」 鳴海の想いは知ってはいるものの 知盛は聖の事を誰より慕っており… 実のところ…鳴海の好意をありがた 迷惑だと感じておりました…。 しかし… 知盛と聖の想いとは裏腹に… 事態は最悪の方向へ向かっていました 知盛の切なる想いを知りつつも 到底成就させる気などない平清盛の 元へある話が舞い込んで来たのです。 清盛「これは、武藤 頼兼殿。 如何しました?」 鳴海の父親である武藤頼兼が 清盛の屋敷を訪ね相談をしました。 その相談とは… 頼兼「鳴海を知盛様の正室に お迎え頂きたいのでございます。」 鳴海から知盛への想いを聞いた 頼兼からの提案ではありましたが 清盛と時子は大喜びでした…。 しかし… 何事も道理を重んじる平重盛が 清盛に対して意見を述べました…。 重盛「聖殿と知盛は婚約しており 破棄するのは無礼な態度では?」 30歳となり清盛を唯一諫められる立場にある重盛の元にはたくさんの相談や情報が届き…なかなか祝言を挙げられない聖の身を案じた時実からも相談を受けていたのでございます…。 但し… 清盛「あれは正式な婚約ではない。 知盛と聖が勝手に誓い合ったまでのこと。」 清盛ははっきりと2人を結ばせるつもりがない事を口にしてしまいました。それを聞いた頼兼がすかさず… 頼兼「ならば… 鳴海と知盛様の祝言を お願い申し上げまする。」 娘の願いを叶えて欲しいと懇願し、 清盛はそれを快諾したのでした…。 清盛「必ずや 貴殿の望み通りに致そう。」 武藤家の力を欲する清盛と、 鳴海の恋を成就させたい頼兼。   2人の利害が一致したため、 頼兼と清盛は満足そうでした…。 白拍子を嫌っている時子も ほっとした表情を浮かべていましたが 重盛「このような横暴、 許されませぬ。」 重盛だけは道理を重んじる事なく、 一門の繁栄しか願わない2人の事を 非難しました…。 清盛「一門の繁栄を願うのが、 総帥たる儂の役目である。」 清盛は正月15日、 知盛を自身の居室へ呼び出しました。 知盛「父上…、 いえ、総帥。知盛です。 お呼びにより参上致しました。」 清盛の居室の前で ひと言声を掛けてから入ると そこには… 鳴海「知盛様。」  顔を赤らめた治部卿局こと鳴海が既に 下座に腰を下ろしまるで知盛を待っているような雰囲気を醸し出していたではありませんか…。 知盛「これは何の冗談でしょうか?」 知盛が現状を理解できず動揺したまま鳴海の隣に腰を下ろすと清盛は更に驚愕してしまうような発言をしました。 清盛「知盛、冗談ではなく本気で、 明日2人には祝言を挙げて貰う運びとなった事のみを報告する。」 明日…とは急すぎる話ではありますが清盛は武藤家の協力を得ているので、もう既に支度の方を終わらせていたのでございます。 知盛「父上…いいえ、総帥…。明日、 鳴海様と祝言を挙げよなんて…。 まさか…そんな…。私には聖が…」 知盛は聖の事を本気で愛しているので父親の強引過ぎるやり方に憤懣やるかたないといったところでした。 清盛「そのまさかだ。その名を口にする事は2度と許さぬ。」 清盛は時忠と良く似たところがありましてまさに自分の常識が世界の常識だと思い込んでいる節がございます。 天下を狙う人間というものは大体そんなもので覇を求めすぎるあまり人心を気にしない者がそこそこいました。 清盛の壮大な野心はさておき… 鳴海は知盛に惹かれていたので、 思い立ったが吉日というくらいの心境でございます。 鳴海「私は嬉しゅうございます。 知盛様。あの日、私は知盛様に惹かれましたから…」 後白河法皇との関係性が不安定な清盛にとっては1人でも多くパイプ役となる人間が欲しいと思っているので…治部卿局を身内に取り込めた事で思惑通りにはなりました。 その翌日鳴海と知盛は… 清盛の思惑通り祝言を挙げる事に なってしまいました。 知盛『聖。ごめん。 無力な僕を許して欲しい。』 知盛は心の中で聖に謝りましたが その想いは聖に届きませんでした。
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