第4章 異世界転生した女性

1/8

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ

第4章 異世界転生した女性

平安時代の末期では、 聖の愛が憎しみへと変化しており、 聖「ニクイ、憎い、、、憎い!!」 水面下ではございますが、 平家の一族全員を呪っていました。 その時代から遥か先の未来を生きていたとある女性が何とも不思議な体験をする事になりました…。 その女性とは…。 ××××年××月××日。大阪難波。 中村 紬は難波駅で通っている高校・三つ葉西関高等学園に通学する為いつも乗る普通電車がホームに来るのを待ちながら… ♪~♪~♪~。 ヘッドフォンで大好きなアイドルグループ・フォーリミックスの最新曲・ベストオブラブを聴いていると誰かが突然後ろから… ドンッ 柚の背中を思いきり押しました。 柚「うっ…。」 優月が何とか踏ん張ったため、 ホームには落ちませんでしたが バランスを崩してしまったため、 駅のホームにある椅子で… ドンッ 強く打ってしまいました。 榊原貴斗(さかきばらたかと) 「君!君!大丈夫か?君!」 柚の1番近くにいた駅員の榊原貴斗が声を掛けたものの当然の事ですが、 柚からは何の反応もありませんでした 西川和明「俺、警察に電話してくる。」 大きな音を聞いた運転士の西川和明も 電車に乗るためホームで待っていたのですが大きな音と普段は大人しい駅員の榊原貴斗が大きな声を出していたので慌てて駆けつけました。 但し… 正義感が溢れ出ている彼は、 何を血迷ってしまったのか… 東山智人(ひがしやまのりと) 「えっ?俺は押してないよ。」 たまたま紬の近くにいたサスペンス映画なら完全に通行人扱いとなるであろう東山智人という名前の青年を確保していました。 榊原貴斗「じゃあ誰が押したんだ?」 皆に疑われる東山智人の無実を証明したのは榊原貴斗の関係者でした。 それは… 榊原夕凜(さかきばらゆり)「貴斗~!私の彼氏が女の子を突き飛ばすはすがないじゃない!今からプロ野球の観戦に行くのよ?」 榊原貴斗とは年子の姉である夕凜。 貴斗とは正反対な性格をしており暇さえあれば野球観戦に出る程のアウトドア派です。   夕凜「貴斗、この世に1人しかいない身内の彼氏を疑うなんて…どうして?」 貴斗「姉ちゃん!でも…プロ野球は平日だとナイトゲームだけどどうして朝からプロ野球の観戦に…?」 ちなみに貴斗はインドア派…。 但し… 大阪に本拠地のある球団・大阪セオリーズファンである姉・夕凜のご機嫌を損ねない為に試合開始予定時刻くらいはいつも確認している貴斗。 しかし… 大人しい性格をしていて恋愛経験はあまりない貴斗は…彼女はいない歴=年齢のためカップルの常識には全くついていけないようで… 夕凜「東京でのナイトゲーム。智人がチケットを取ってくれたんだけど早めに行って東京見物も兼ねるつもり…」 ちなみに夕凜の彼氏である東山智人は  東京出身ではありますが夕凜と同じく 大阪セオリーズのファンで好きが高じて大阪へ転勤願いを書くほどの熱烈ファンの1人でした。 それと…   カップルだけのイベントも秘かに考えられていたようで… 智人「それにお母さんが夕凜に会いたいって言っていたからもうすぐ夕凜も東山姓になるかな?」   彼氏の家にご挨拶…です。 夕凜「智人…?それ…本当?」  付き合って2年が経ち実のところ 結婚する気がないなら別れようと 考えていた夕凜の瞳には輝くものが… 智人「嘘なんて言わないさ。 お待たせ。夕凜。」 2人だけの世界に入る貴斗の姉カップルにあきれ果てながらも西川和明が… 和明「で、それはさておき…貴斗のお姉さんは犯人の顔、見てませんか?」 話を本題に戻したところ自分達の世界に入っていたカップルが今更…有力だった証言を始めてしまいました。 夕凜「そう言えばさっき改札を急いで出て行った女の子が背中を押していたよ。」 貴斗「姉ちゃん!そんな事はもっと… 早めに言って欲しいんだけど…!」 そんなやり取りを頭の片隅で聴きながら柚の意識はゆっくりと薄れました。 紬『私、死んでしまうのかな? お父さん、お母さん、先立つ不孝を お許し下さい。』 紬が心の中で両親に許しを乞うた瞬間 紬の意識はなくなりました。 高階詩織(たかしなしおり) 「和明、一体何の騒ぎかしら?」 西川和明の彼女で車掌ではあるものの医師免許を持つ高階詩織が、 いつの間にかホームにいました。 和明「詩織、どうした?」 詩織は三重県へ向かう特急の車掌で、 普通電車を運転する和明とは反対側の  ホームにいたのですが… 詩織「反対側のホームから和明と貴斗くんの慌てている様子を見ていたら心配になったのよ、で、どうしたの?」 和明「詩織、実は人身事故が起きて 被害者の方が意識を失ってしまったんだ…。それで…どうしたら良いのか悩んでいたのだけど君がいて良かった。」 詩織「残念な事に電車絡みの事故ってかなり起きているのよ…だから運転士か車掌が医師免許を保有する必要性があるのよね…。」 詩織は和明に手伝って貰いながら 紬を診断しましたが… 詩織「07時48分、ご臨終です。」 紬は心肺停止状態で和明が心臓マッサージをしましたが息を吹き返す事はなく近所の病院に運ばれ正式な死亡診断書を出される事となりました。 和明「悲しいな、詩織。」   詩織「和明…」 詩織はどうにかして紬を救いたかったのですがそれは叶わず和明の腕の中で少しの間ではありますが泣きました。 和明「…彼女の為に黙祷するよ、詩織」 それから少し経って和明、詩織、貴斗、夕凜、智人は紬のため黙祷。 優樹「詩織、車掌がいないと運転出来ないから早く来て貰える?」 こうして事故から1時間後、 詩織は持田優樹と共に 三重県行きの特急へと乗りました。 詩織「行ってきます、和明。」 和明は詩織の同僚である汐田菜知と、 普通電車を運転する事になりました。 和明『複雑な心境だが仕事は仕事。』 持田優樹は和明と詩織が付き合う1年前に詩織と付き合っていた元カレ。 菜知「和明くん、詩織なら心配ないわ…いつもメールで和明くんの事を私に送って来るくらいだもの…」 和明の複雑な心境はさておき… 歴史大好きな歴女である紬は、 思わぬ人と遭遇し驚きを隠せず 大きな叫び声を挙げておりました。 紬「きゃあ~。」   すると… 菅原道真「きゃあ~とは失礼な。 私は命を喪い悲しみに暮れるそなたを異世界へ転生させようと思ったまで」 太宰府天満宮の御本尊である 菅原道真は現在でも受験合格を願う受験生達を救う神様。 そのような尊いお方に対してきゃあ~などと叫んではなりません、例え何があろうとも…。 それにしても… 紬「菅原道真公がどうして私を輪廻転生させようとなさるのですか?」 それは紬だけでなく皆が感じる疑問ではあるのですが菅原道真は意味深な微笑みを浮かべながら… 菅原道真「輪廻ではなく異世界転生だ 平安時代末期、平家の公達がたくさんいる時代にな…美形は好きであろう…」 菅原道真は持っていた杖を振り 紬は強制的に意識を失いました。 紬『また…?』 紬は心の中で泣きそうになりながらも 運命を受け入れる事にしました。 すると…次の瞬間 目覚めた紬が立っていた場所は… 見慣れた大阪難波の駅…ではなく… 紬「ここは…どこ?」 大阪城も大阪城ホールも見えず、 あるのは教科書に出てきそうな雅な?平安貴族が住んでいるような建物…。 紬「もしかして本当に異世界転生を果たしたのかしら?」 菅原道真が言っていた事が もし事実ならば… 紬はポケットに入れていたスマホを確認するとやはりそこには圏外の表示が出ていました。 紬「つまりこれは本当なのね…」 戸惑いながらも現実を受け入れた紬はとりあえず人を探す事にしました。 すると… 紬「牛、牛が車を引いてる!? やはりここは平安時代末期なのね…」 それは… 現代でよく見る車…ではなく、 牛が車を引いてる牛車でした。 紬「教科書では見たことあるけれど まさか…」 紬は中学の頃からテストの直前になれば…大親友から名前も知らないクラスメートまで… 「紬、ノート見せて?」と 頼られる事は日常茶飯事でした。 なので… 紬のノートは何回か 行方不明になった事がありました。 そんな紬の知識によるとここは 間違いなく平安時代でした。 つまり… 紬「菅原道真公は本当に私を平安時代へ異世界転生をさせて下さったのね…」 まさかおとぎ話とかSF映画でよく聞く 「異世界転生」が自らに起こるなんて誰が予想出来たでしょうか? 紬『しかし…歴女だから時代は分かるけれど…誰に協力して貰おうかしら?』 異世界へ転生を果たしたものの 紬が身につけているものは制服と通学カバン、それにローファー。 どう考えてもこの時代には似つかわしくない格好で歩いている紬。 すると… 「もし…そなたは一体誰だ?」 怪しむような顔で紬を品定めするように上から下まで眺める無礼なこの男、 それは… 源頼政の次男・頼兼でした。 そして… 紬「もしや貴方様は… 検非違使ですか?」 検非違使とは現代の警察官のようなもので紬が尋ねると頼兼は驚愕しながらも頷きました。 しかし… 頼兼の父親である頼政は、 清盛の味方をするため… 一族を裏切りました。 但し… 平家では源義朝の代わりとして 検非違使というあまり偉くはない 役職に付けられていました。 源頼兼「確かにそうだが…。はっ!俺が検非違使だと知っているという事は…。やましい事でもあるのか!なら捕まえてやる!待て!」 なんと紬を追いかけ始めたではありませんか…。 しかし… どこの時代に待てと言われて待つ者がいるのでしょうか? 答えは〈否〉です。 という訳で危機を感じた紬は、 時代劇で良く使われるあの台詞を 口にする事を決めました。 それは… 紬「どなたかお助け下さりませ~!」 やがて助けを求めながらも検非違使である頼兼からの追跡から必死に逃げようとしている紬の元へ2人組の男性が現れました。 男「野蛮だな、源氏の検非違使は。」 頼兼「なんだと?誰だ?」 突然現れ検非違使の一族を野蛮扱いした人は勿論源氏にとって犬猿の仲と言わざるを得ないくらい仲の悪い平家。 しかし… 紬にとっては突然現れた救世主といったところでございます。 宗盛「源氏より上品な一族・ 平家登場。」 但し… 救世主と言うには 宝飾品で膨れている懐が残念の極み。 知盛「兄上、突然現れて源氏に 喧嘩を売るのはお辞め下さりませ。 それに宝飾品でそのように懐をパンパンにしていては下品の極みです。」 そんな宗盛にあきれつつも 紬に対して優しい眼差しを向けるのは清盛の四男で知盛です。 弟の諌言そっちのけであまり女性にモテない宗盛は紬の事を(しき)りに見ており… 宗盛「知るか。それよりそちらの可愛らしいお嬢さんは一体誰だ?」 またもや見境なしに女性に逢う度に、 声を掛ける兄の事を気にしていた知盛は聞く耳など持たぬと思いながらも 知盛「女性を見る度に声を掛けるのは お辞め下さりませ。」 弟として念のため諌言してみたものの宗盛はなんとまさかの回答をしました それは… 宗盛「そこに毬があるから公達は 蹴鞠をする。」 これには知盛もかなりあきれ果ててしまいいつもより厳しく注意しました。 知盛「女性を毬扱いしてはなりませぬ。女性は丁重に扱うものですよ。」 しかし… 宗盛は全く気にしておらず… 宗盛「君、可愛いね。妻になって?」 なんと出逢ったばかりの紬に自己紹介を通り越して求婚しました。 紬「嫌です。」 勿論、 紬からはバッサリ断られてしまい 知盛もすぐ謝罪を入れました。 知盛「兄が大変申し訳ありません。 女性を見掛けると手当たり次第に声を掛ける困った人なので気にしないで下さい。」 紬は知盛の丁寧な謝罪が気に入ったようで宗盛に対する怒りはすぐ収まり優しく微笑みました。 紬「大丈夫です。全く気にしていません。私は中村紬と申します。助けてくださりありがとうございます。」 自己紹介と御礼を告げましたが、 その態度がとてもきちんとしており 知盛もどうやら良い印象を持ったようで嬉しそうに微笑みました。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加