第4章 異世界転生した女性

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すると… 知盛は紬に聞かなくてはならない事が1つあった事を思い出しました…。 それは… 知盛「失礼だとは思うのですが 紬殿は幾つですか?」 どうやら年齢を聞きたかったようで、 女性に対して年齢を聞くのは失礼だと知っている物腰の柔らかい問い掛けを心掛けていました。 なので… 紬も素直な気持ちで、 紬「16です。」 答える事が出来ましたが、 ここで面倒な男が茶々を入れました。 その男とは無論、 宗盛「私は21歳だから5歳も下なのか?やはりお子様だな…」 女心が分からないのに、 モテたい願望があふれ出ている 矛盾たっぷりな知盛の兄である宗盛。 紬「お子様ではありませぬ、 女性を子ども扱いしないで下さい。」 これには知盛も… 知盛「兄上!無礼ですよ。女性をお子様扱いしてはいけませんと先程お話したばかりではありませんか?」 宗盛「お子様にお子様と言って何が悪い?お子様はお子様ではないか?」 知盛「…」 またもやあきれ果てていましたが、 紬と同い年である事を知り嬉しかったようで満面の笑みを浮かべました。 すると紬は今更ながら大事な事を 失念していた事に気づきました。 紬「私は名乗りましたが私、お2人のお名前を伺っておりませんでしたわ。」 紬自身は名乗りましたが… 知盛と宗盛は名乗りませんでした。 とは言え… 歴史の大好きな紬が平家の公達の事を全く知らない…なんて事は全くなく… 紬『本当は平宗盛、知盛兄弟だと知ってはいるけれど…知らないフリをしておかないと源氏の間者〈=スパイ〉だと思われては困るから…』 紬の心の声など聞こえるはずもない 知盛は名前を名乗る事にしました。   知盛「あ、すみません。 僕は平 知盛でこの方は兄の…。」 知盛もその事にようやく気づき、 兄である宗盛の事も代わりに紹介するつもりでした…。 何故ならば目立ちたがり屋の宗盛は、 何にでもあの偉い一門の…などと付けなくても良い冠言葉を使うからです。 宗盛「自己紹介くらい出来るわ! 私はあの偉い平家一門の…。」 知盛が案じた通り宗盛はまた 訳の分からない冠言葉を付け 知盛はまた頭を抱えてしまいました。 知盛「偉いは要りませぬ。兄上が何でも偉いをお付けになるので源氏からの反感を買うのですよ?」 頼兼とも偉いの冠言葉をきっかけに 関係を悪化させてしまったのは、 はっきり言って宗盛の責任でした。 知盛「紬殿、こちらは兄の平宗盛です。 ちなみにモテない事を悩んでいる 可愛らしい兄なのです」 5歳下の弟から苦言を呈された宗盛は心底不服そうにしていました…。 宗盛「えーい!自分の自己紹介くらい好きにやらせろ!それにその紹介は悪意を感じるのだが…褒めているのか?貶しているのではあるまいな?」 実のところは貶していると言うべきなのかもしれませんがそこは知盛… 知盛「紬殿を父上や母上にも紹介しなければなりませんので屋敷へ参りましょうか?」 まさかの兄を無視して紬の事しか 気にしていない様子でした。 それにしても知盛のように 細かい気遣いが出来る事こそ モテる秘訣なのですが… 鈍感な宗盛はそんな事など気にしておらずそれよりも…まさかの発言を… 宗盛「紬、私の妻になって下さい。」 宗盛は紬の生きていた現代〈=西暦2024年〉ではまだまだ若い方です。 但し… 平均寿命が30代くらいの平安時代では 結婚適齢期をかなり過ぎた売れ残りの公達でございました。 宗盛「ぐすん…」 しかし… 名前しか知らない紬に電撃求婚とは まさに…焦りすぎと言うより他なく… 知盛「兄上、焦りすぎです。 誰彼構わず求婚なさる癖は平家の名前に傷を付けてしまいますよ?」 知盛から注意を受けました。 しかし… 身寄りのない紬からすればまさに渡りに船とはこの事でしたので思わず 紬「宗盛様の事より今夜泊まる所すらないので是非ともお屋敷に連れて行って下さりませ。」 紬は知盛に対して頭を下げ 知盛もそんな紬に微笑みました。 知盛「兄の無礼をお許し下さるなら 母と父に話してみましょう。」 宗盛「私が兄なんだけど…もしもし… おーい!やはり知盛の方がモテるのか?」 宗盛が2人に対して散々文句を言っておりましたが全く2人には届いておらず 紬「あの…知盛様。 清盛様にお逢い出来ますか?」 知盛とは同い年だと言うのに 〈様〉を付ける紬に対して 知盛が何かを言おうとした所… 宗盛「そなたは父上のような男が好みか?年齢的に考えて我らの方が良いと思うが?」 また宗盛が無意味な横やりを入れ 知盛はまたもやあきれ果てました。 知盛「兄上、決めるのは彼女ですから ああだこうだ言わないで下され。それに…紬殿は屋敷に住みたいので父上に挨拶したいだけなのでは?」 宗盛がああだこうだ言う度に 知盛は頭を抱えながら… それに… 宗盛が聞きもしない事を知りながらも諌言をする事になるのです。 宗盛「ああだこうだ、今言わずにいつ言うんだ?女性には積極的に…だ。」 知盛「…。もう…嫌だ。疲れた…」 今まで知盛が宗盛の為になれば…と思って言い続けた事は全く宗盛には届いておらず知盛は頭を抱えました。 そんな知盛に対して 紬はある事を相談しました。 それは… 紬「知盛様、宮中勤めをするのは納得しましたが私は着物も何も持っていないのでどうしたら良いですか?」 宮中に勤める女官なら 誰しも十二単を着ています。 但し… 着物と言うかあれは… 宗盛「着物というより戦闘服に近いな…。12枚着込むのだからあれは重いぞ…」   そう、十二単は半端なく重く 全部で20キロくらいの重さなので 宗盛曰く戦闘服というのも… あながち間違いではないのですが… 知盛「兄上。紬殿を恐がらせるのはお辞め下さい。女性に戦闘服なんて言ったら嫌がるじゃないですか?」 そもそも前提はそこで、 女性に対する扱いがきちんと出来ない宗盛がモテるはずなどないのです…。 宗盛「しかし…あれは重いぞ…」 人の非は大袈裟なくらい言う宗盛ですが自分の非は絶対に認めません。 そのため、 まだ…ブツブツ言っておりました。 知盛「女性は重くても十二単を着るのがこの世界に生きるものの常識です。それに兄上だって父上に戦で鎧を着るのはダサいと言ったら叱られたではありませんか?」 服装選びに必要なのはどの時代にも共通していえる事ではございますが… 時〈Time《タイム》〉、場所〈place《プレイス》〉、場合〈オケージョン〉を略してTPOは本当に大切だという事でございます。 宗盛「かっこ良くないものはダメ。」 … … … 知盛「…」 宗盛の発言に最早何回目かも分からなくなるくらい知盛は頭を抱えておりましたが…どうやら悩みすぎたあまり… 開き直ってしまったようで 知盛「もう兄上はさておく事にして…それよりも紬殿。僕達同い歳なんだから知盛と呼んで貰えませんか?もしも無理なら知盛さんと…。」   優月「なら、知盛さんも紬殿ではなく、紬とお呼び下さい。ダメなら紬さんと…紬殿だと何だか遠くに感じられて寂しさを覚えてしまいます。」 紬と2人だけの世界に入ってしまい すっかり無視されてしまった宗盛は 不満げな顔をしておりました。 宗盛「こら!お前達、2人で世界に入るでない。さては俺の存在を忘れていたな?」 全力で文句を言っておりました。 しかし… 知盛「兄上、すみません。忘れてました。僕と紬の時間を邪魔しないで下さいよ。」 5歳下で昔は「お兄様」、「お兄様」といつも宗盛の後を追い掛けて来ていた可愛らしいはずの弟は… いつの間にやら…すっかり 自分の意見を持つようになりました。 宗盛「邪魔とはなんだ?邪魔とは、 平家で1番優秀な兄に向かって… 昔は可愛らしかったのに生意気になったな…知盛。」 どうやら宗盛の中での知盛は5歳くらいの知盛のまま無邪気に微笑んでいるようでございます。 知盛「兄上、お言葉ですがそれは5歳くらいの時でございます。」 知盛も既に正室を迎えた立派な成人男性ですし第一自画自賛は大変見苦しいのでございます。 知盛「いい加減に弟離れして下され。 最近の兄上は聞き苦しい発言ばかりなさっておいでですぞ。」 宗盛は可愛い弟から悲しくなる発言を何度も言われてしまい今にも泣き出しそうになりながら… 宗盛「き、聞き苦しくない! 断じてそんな事はない!」 全否定しましたが紬も知盛も 宗盛に対して何も言いませんでした。 そんなこんな色んな話をしていたら 3人が乗る牛車が平清盛の屋敷に到着し宗盛は降りてしまいました。 知盛「兄上ときたらこれだからモテないのです。紬、大丈夫だよ?」 紬が不安げな顔をしている事に気づいた知盛が紬の手を握ったまま牛車から降りその場で励ましていると… 宗盛「安心しろ、父上…いや、総帥は女性を取って食べたりはしないから…ただ…少々顔はいかついがな。」 冗談半分に言うと後ろから殺気に近い 気配を感じ宗盛は恐怖を感じながらも振り返りました…。 すると…そこには怒髪天を衝いた清盛が怒り狂っておりました。 清盛「宗盛!誰の顔がいかついだと! 宗盛こそ宝飾品の収集は程々にせよ」 宗盛の宝飾品集めは宮中でも それなりに知られておりまして… いつも叱られてはいるのですが、 宗盛は懲りない性格なので… 宗盛「問題ありません。」 基本的にいつも返す答えがこれ… だからこそ…いつも清盛から叱られているのですが… 紬「こちらのお方が清盛様?」 紬が小声で知盛に問うと 知盛は頷いてから小声で囁きました。 知盛「兄上みたいに迂闊な発言は 控えた方が良いから気をつけてね。」 紬がチラッと宗盛の方を見ると 宗盛は顔面蒼白状態になりながら… うんうんと何回も頷いていました。 清盛「宗盛! そなたは反省しておるのか…?」 実は清盛、いかついとか悪人面とか 顔の事を悪く言われるのが大嫌い。 なので… 清盛「時子、そなたのしつけが悪いせいだ。顔の事を言うなといつも言っているのにどうして宗盛は物覚えが悪いのだ?」 すると… 宗盛の後ろにある襖から女性が 姿を現して清盛の隣に座りました。 時子「宗盛、幾らそちらのお嬢さんの 緊張を和らげてあげたいとは申しても 総帥のお顔の件はなりませんよ。」 宗盛に対してやんわりと 注意をしました…。
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