第4章 異世界転生した女性

5/8

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
宗盛「ああ、もう…疲れた!」 宗盛はそれからもしばらく 追い掛けられていました…。 但し… 清子「もう…無理、疲れたわ…」 清子の体力がなくなりようやく 追いかけっこが終わりました。 清盛「ご苦労さん、それが嫌なら 妻のご機嫌は取る事だ。」 清盛は懐から可愛らしい匂袋を 取り出すと時子に渡しました。 清盛「匂袋…。 心が落ち着くから好きだといつも 言っていたよね?時子のお陰で儂はいつも幸せでいられる…」 時子「総帥、ありがとうございます。 私もいつも幸せを感じております。」 知盛も懐から小さな華が施された (かんざし)を鳴海に渡しました。 知盛「鳴海、宮中に挿していく簪が 傷んだって言っていたよね?」 鳴海「知盛様、 ありがとうございます。」 すると… いつのまにやら復活した清子は 宗盛の頭から爪先まで眺めると… 不満そうな顔をしながら 清子「なにも…ないの?」 清盛、知盛と続けば何かの贈り物は あるのか?と期待しましたが… 宗盛「宝飾品、あげよっか?」 どうやら何も持ってない宗盛が 宝飾品コレクションから何かを あげようと提案しましたが… 清子「要らないわよ!馬鹿!」 清子は完全に激昂すると広間から出て 夫婦の居室へと向かいました。 宗盛「… なんで馬鹿って言われたの?」 宗盛の欲しいものと、 清子の欲しいものは違いました。 清盛「鈍感な息子を持つと大変だ。」 総帥である清盛は 鈍感過ぎる息子にため息混じりで 苦言を呈しました。 時子「宗盛、清子の好みを直接聞いた事はある?宝飾品だなんて言わないと思うのだけれど…」 宗盛「聞いた事はありませぬ。 女性ならば宝飾品かと…」 一同「はぁー(溜め息)」 自分の好きなものなら彼女も好きだと決めつける宗盛に対して皆はため息をつく程あきれ果ててしまいました。 紬「たまには喜ばせましょ?」 清盛「彼女の言う通りだ。」 紬と清盛に促された宗盛は、 夫婦の居室で拗ねる清子の元に向かい 宗盛「清子、そなたは何が好きだ?」 初めてその好みを問いました。 すると… 清子も嬉しそうな表情を浮かべ 清子「私の好きなものは貝合わせの貝とか簪とかですけど…。」 好みのものを答えましたが、 さても近視な宗盛は細かいものの違いを見極めるのがとても苦手でした…。 なので… 宗盛「紬、買ってきてくれ!」 紬に丸投げする事を思いつきましたが 一同「自分でいけ!」 またしても一門の皆から激しく 突っ込まれてしまいました。 すると… 鳴海「うっ…。」 突然鳴海が気分を悪くしてしまったようでその場に踞ってしまいました。 知盛「鳴海?どうした? 大事ないか?」 知盛が優しく背中を擦ると 鳴海は苦しげではありますが 知盛に微笑みながら頷きました。 清盛「時子、もしかしてこれは… 懐妊の兆候ではあるまいか?」 子だくさんの清盛・時子夫妻には 見覚えのある光景のようで… 時子「そうかもしれません。 薬師(くすし)を呼んで参りますわ。」 すぐさま準備に取りかかりました。 すると… またしても要らぬ事しか言わぬ この男が… 宗盛「念のため陰陽師も呼ばなければ なりませぬぞ。誰かが呪いを掛けたかもしれませんからな。」 清子「宗盛様なら掛けるかもしれませぬが私は鳴海様に掛けたりはしません。」 宗盛「なんだと!」 こんな時まで喧嘩を始める宗盛と清子に時子はあきれ果てていました。 時子「あんた達、静かにしなさい!」 しかし… 清子「宗盛様のせいで 叱られたではありませぬか?」 宗盛「何だと!」 清盛「や・か・ま・し・い!」 平家の総帥たる清盛に一喝され ようやくこの夫婦の喧嘩は… 宗盛「申し訳ありませぬ、総帥。」 清子「申し訳ありませぬ…」 漸く収まりました…。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加