第4章 異世界転生した女性

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小枝「聖様、ふざけないで下さい!」 時忠の側室であり お夕の乳母でもある小枝でした…。 聖「誰がふざけるものか!?帰せ! 私の知盛様で彼奴の知盛様ではない!」 異母妹であるお夕の乳母である 小枝から叱られた聖は自己顕示欲が誰よりも強すぎるため小枝の事を鋭すぎる眼差しで見つめていました。 小枝「鳴海様はただいま生死の淵を彷徨われているのですよ?」 聖「だから何だと言うの?まだそんなに強い呪いは掛けてないのよ…」 小枝「知盛様だって愛しき人が苦しんでいるのをただ見てるしか出来なくて…本当に生きた心地がしないと思います。」 自分の事しか考えてない聖に対して 小枝は怒りを露わにしていました…。 小枝「知盛様を好いておられるならば幸せをお祈りするくらいの広い度量をお持ち下さりませ。」 小枝の言う通りである。 そして小枝はお夕と共に聖を連れて 時忠のいる清盛の屋敷へと向かった… 聖「ハハハハハ!ハハハハハ!」 先程から狂ったように笑い続けている 聖の犯行を時忠や知盛に告げ聖の身柄を検非違使に引き渡す為である。 聖「ハハハハハ!ハハハハハ!」 聖から愛する知盛を奪った 鳴海の命の火が、 鳴海「はぁはぁ…。 く、苦しい。苦しい!」 知盛「鳴海、鳴海、頼むから僕を置いて逝かないでくれ。頼むから。」 知盛は今にも泣き出しそうになりながらも鳴海の手を繋ぎ懇願しました。 清盛「物の怪を祓え! 何としてもだ!」 時子「物の怪ではなく 呪具のせいでは?」 時子の冷静な指摘で慌てていた男達は 少しだけ落ち着きを取り戻しました… しかし… それからすぐまた鳴海の様子が急変したのでございます。 鳴海「苦しい!苦しい!」 すると… 女「ハハハハハ!ハハハハハ!私の愛しき人を奪い私の幸せを奪ったお前など私は絶対に許さない!」 鳴海の枕元に髪を振り乱し黒い服を着た女性が現れたと思ったら恐ろしい事を口にしたのでございます。 女「平家にあらずんば人にあらず!お前は人でなしだ!知盛様を帰せ!知盛様は私の許嫁だったのだぞ…」 知盛はその台詞を聞いてある人物の事をふと想い出しました…。 知盛「聖…か?」 聖「知盛様、 漸く私に気づいて下さったのですね。」 女、否、聖は知盛の手を強く握り 今にも泣き出しそうになりながらも 鳴海の事を呪っておりました。  聖「私は知盛様に嫁ぐ事を許されていたはずなのに…。嫌いになりたいのに…嫌いになんかなれない!」 聖の絶望は何よりも深く 聖の憎しみも誰よりも強く 全ては鳴海の命を奪うため…でした。 鳴海「うっ…。苦しい。」 鳴海は聖からの渾身の呪いにより たちまち弱っていったのでした。 聖「知盛様への愛しさが溢れ出す!それと同時にお前への深く激しい怨みも我が身体を激しく焦がすのだ!許さぬ!許さぬ!許さぬ!」 そのおぞましき光景を見た時忠は 鳴海をこんな目に遇わせた犯人が… 時忠「まさか…聖!」 お夕の異母姉である聖だと ようやく分かりましたが… 聖の生き霊「赤子を産みたければお前の命と引き換えだ!私に知盛様を帰せ!」 鳴海「う…!苦しい!苦しい!」 聖の生き霊に呪いの言葉を告げられる度に鳴海の命の炎はどんどん小さくなっておりました…。 時子「時忠、聖ってまさか…。」 時子が時忠の隣に駆け寄ると時忠は うんうんと何度も頷きました。 聖の生き霊「ハハハハハ!愉快だ!愉快!嬉しくて仕方ないわ!お前など私の呪いで死んでしまうのだ!ハハハハハ!」 聖の生き霊から何度も激しい恨みと 何度も呪いの言葉を浴びせられた鳴海は… 鳴海「…。」 やがてうわ言のように繰り返していた 独り言すら言わなくなってしまいました。 知盛「鳴海!鳴海!」 時忠「どうすれば良い?どうすれば…?」 その時、一台の牛車が 清盛の館に到着しました。 時忠「小枝達が到着したかもしれん。」 時忠が牛車の元へ駆け出すと皆が後ろから追い掛けてきました。 聖の生き霊「ハハハハハ!愉快!愉快!子を喪いたくなければ命を差し出すが良い!アハハハハッ。」 お夕「異母姉上(あねうえ)!馬鹿な事を仰せになってないで罪をお認め下さりませ。」 時実は聖の生き霊に対して怒りを収め自分の身体へ戻るよう説得しました。 聖「産まれてすぐ母親から離され祖父に養育されたかと思えば娘になった途端引き取るなんて理不尽な男。みんな不幸になれば良いの。私に罪を認めよと言うならあんた達こそ私の愛を引き裂いた罪、認めなさいよ。それにしても愉快、愉快!アハハハハッ!」 牛車の中からはお夕と小枝に両腕を押さえられながらも恋敵の不幸が楽しくて仕方ないといった様子で笑いが止まらない聖が降りて来ました。 時忠「聖…。 どうしてこんな事を…?」 聖「母上を…私から奪った女を寵愛する男など父とは思わぬ。どうせ恥を掻かせてくれたなと恨み言を言いに来たのであろう?」 バシンッ!! その瞬間聖の頬に痛みが走りました。 時忠「そなたの命、護るためだ。 弓弦も私もそなたの命を護るために あの女に従ったまでだ。時実らは とても可愛いがあの女を愛した事は… また愛する事などない!」 そんな時、 検非違使である源頼兼が 清盛の屋敷へ到着しました。 時忠「その女を連れて行け。総本家の嫁を生き霊を使い殺そうとした女だ。」 時忠は聖を愛するからこそ検非違使に引き渡し罪を償わせようと思っていたのですが… 聖「この…!私を護る気などないではないか?離せ!離せ!許さん!」 聖にその想いはちっとも届かず 時忠は悲しみのあまり一筋だけ 涙を零しました…。 聖はこうして連行され… 大宰府への流罪が決まりました。
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