第4章 異世界転生した女性

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聖はさておき… 生き霊とは1度出ると出続けるものに ございます。 聖の生き霊「憎い!憎い!知盛様を帰せ!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!」 鳴海「…。」 聖の生き霊は療養中である鳴海を呪い 続けておりました。 そんな中紬は、 鳴海の見舞いに来た頼平に はからずも逢う事となりました。 頼平「そなたが紬か? なんと可愛らしい姫君じゃ。」 武藤 頼平(むとう よりひら)… 鳴海の兄で2歳上の凛々しい公達だ。 頼兼「鳴海が大変な時に女性と仲良く するでない!」 頼兼は愛娘である鳴海が苦しんでいるため何とかしたくて日の本中の陰陽師にお祓いを依頼しました。 しかし…。 陰陽師「怨みが深すぎて 私共では無理です。」 陰陽師達は匙を投げてしまい、 鳴海の体力はみるみる内に衰弱して いきました。 聖の生き霊「子を助けたければ そなたの命と引き換えじゃ。」 鳴海「…。」 それから時は経ち1169年02月16日。 薬師である芳御前と陰陽師である櫻御前立ち会いの元、鳴海は出産の日を迎える事となりました。 それから少し時が経った頃、 芳御前が男児を抱いて皆の元へ 歩み寄って来ました。 芳御前「赤子は無事産まれましたが…鳴海様は度重なる呪いにより衰弱しこの子を産んですぐ息を引き取られました。」 知盛「紬…、鳴海が…鳴海が…!」 紬「知盛さん。」 紬は頼平の正室になる予定でしたが 事態が事態なのでまだ清盛の屋敷に おりました。 頼平「鳴海!鳴海!」 頼兼「鳴海~!」 頼平と頼兼は知盛により清盛の屋敷へ呼ばれていたためその場におりましたが悲しみのあまりその場で泣き崩れてしまいました…。 武藤家より悲しんではならないと感じていた平家一門は悲しみをひた隠し 静かに瞳を閉じ鳴海の冥福を祈っておりました…。 すると… 武藤家との繋がりが切れてはならないと考えていた清盛はなんと無情な命令をここでする事を決めたのでした…。 それは… 清盛「知盛、妻を喪ったばかりで すまぬが継室を娶りなさい。」 愛しき妻・鳴海を喪い、 産まれたばかりの男児と共に遺され 絶望の淵に沈んでいる知盛に対して そのように残酷な事を命ずる清盛。 時子「総帥、幾らなんでもそれは残酷過ぎます。総帥として平家一門の繁栄と安寧を望むのは理解出来ます…。但し今だけは親として知盛の気持ちを察して下さりませ…」 清盛「紬と所帯を持てばよい。 お互い知らぬ中ではないだろう?」 時子からの必死な説得など 清盛の耳には届きませんでした。 紬「総帥、恐れながら私には後ろ楯もおりませんし…私など知盛さんの御迷惑になるだけですわ。」 紬も紬で異世界転生をしたばかりで… 自分には知盛を支える事は出来ないと 1度は辞退しましたが… 清盛「ならば、頼兼。 そなた、紬を養女に迎えるが良い。」 清盛の無慈悲な沙汰は、 まな娘を亡くし絶望の淵に沈んでいる 頼兼にまで及んでしまいました…。 鳴海がとり殺されたばかりでそのような事なぞ考えたくもなかった頼兼… 但し… さすがに平家の総帥たる清盛に逆らう事など出来るはずもなく… 頼兼「総帥が仰せになられるままに。」 清盛からの強い薦めで 頼兼の養女となった紬でしたが… 頼平「これなら惹かれる前に 知盛殿の継室となって欲しかった。」 紬の夫になれると大喜びだった頼平は 紬が義妹になり知盛の継室となる事にとてつもない悲しみを覚えました。 しかし… 総帥たる清盛の命令は絶対です。 紬は武藤家の養女になるとすぐ 知盛の継室となりました。 知盛「紬、 本当に我が妻となって良いのか?」 紬「どうなさいました?」 知盛は祝言を挙げた日の夜、 紬に問い掛けました。 優月「私は知盛さんと太郎を護るためにここへ導かれたのかもしれません。」 鳴海の遺児である男児は幼名を太郎と名付けられ乳母に育てられていました 知盛「紬…。」 すると… 紬を強く抱きしめる知盛の身体に ゾワッ 鳥肌が立ちました。 聖の生き霊「次はこの女か? いつになれば私の元に帰る?」 聖が太宰府へと流されても 聖の生き霊だけは執拗に知盛の側に現れ続けては知盛に執着していました… しかし… 聖の愛が憎しみへと変わり鳴海を呪い殺したとなれば知盛の聖への愛も憎しみへと変貌を遂げても仕方ない事です 知盛「鳴海をとり殺した女の元になど 意地でも戻らん!紬は…大切な人は 今度こそ僕が護り抜く!!」 その時、夫婦の居室の襖が開き、 宗盛「知盛!」 宗盛が先祖代々伝わるという 悪魔払いの太刀を持ってきました。 清盛「宗盛が血相変えて悪魔払いの太刀を貸して欲しいと願うので何事かと思えばこれは大事ではないか?」 宗盛「だから…大事だと言っているではありませぬか?で、使い方は?どうすれば紬を助ける事が出来るのですか?」 清盛「知盛、 それで悪霊を斬れ! さすれば紬は助かるであろう!」 知盛「はっ!悪霊退散!」 知盛は聖の生き霊を 一刀両断しました。 聖の生き霊は… 「ぐ…、く…。」 苦しそうな呻き声を上げると 消えていきました。 知盛「紬、太郎、無事か?」 知盛は紬と鳴海の忘れ形見である太郎きつく抱きしめました。 紬「ありがとうございました。知盛さんのお陰で命拾いが出来ました。それに…」 知盛「それに…なんだ?」 紬は知盛からの問い掛けに 顔を真っ赤にしながら…。 紬「先程の勇姿、素敵でした。」 知盛「そうか…。」 紬の照れが移ったのか 知盛も顔を真っ赤にしていました。 すると知盛は我に還り 太郎の胸に耳を当てました。 すると… 太郎〈=後の平知章〉は、 太郎「スースー。(寝息)。」 知盛「良かった。生きている。」 これ程まで騒がしいというのに… 太郎はどうやら爆睡していたようで… 一同は太郎も紬も知盛も無事だったのでほっと安堵のため息をつきました。 太郎「スースー(寝息)」 それはさておき… 清盛は太郎の事を優しげな瞳で 見つめながら… 清盛「こんなに騒がしいと言うのに 太郎は将来大物になるであろう。」 清盛は太郎の頭を撫でると 素直に感心しておりました。
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