第5章 猫パニック?

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知盛「分からないけど、 それでも君を知りたいし… 君と本当の意味で夫婦になりたい。」 紬「現代で不慮の事故に巻き込まれ 命を落とした時はどうなるかと思いましたが…知盛さんと太郎に出逢えたので異世界転生も素敵な軌跡ですね…」 知盛はやはり異世界転生の意味が分からないようで小首を傾げておりましたが…優しげな笑みを浮かべながら… 知盛「紬、ありがとう。君に出逢えて 僕も太郎もどれだけ幸せを貰えたか数えきれないほどだ。みつ…。太郎を頼めるかな?」 知盛は寝息を立てながら眠る 太郎を抱き上げると… 侍女のみつを呼びました。 太郎が産まれた時に乳母を選んでいた知盛でしたが鳴海の急逝に怯えて太郎の世話を紬に頼んでいたため乳母は仕事がないので事実上の解雇となっておりました。 そのため、 みつ「畏まりました。」 紬付きの侍女であるみつが 太郎の乳母代わりになったのです。 こうして…  みつが知盛から太郎を預かり部屋を去ると知盛は紬を抱きしめました。 紬「知盛さん?」 知盛「紬、僕も君を愛した証が欲しい。君が太郎と産まれる子ども両方愛してくれると言ってくれたから。」 紬は今宵、本当の意味で 知盛の継室になれました…。 紬「知盛さん、私は幸せです。」 知盛「僕も幸せだよ、 隣で紬が笑ってくれるのなら… 胸を張って幸せだと言えるよ…」 紬「知盛さんが私の事を望んで下さるのなら私はこれから先もずっと知盛さんの隣にいますね…。」 知盛「紬、愛してるよ、心から… だから…絶対に僕より先に逝かないと約束して欲しい。」 知盛は紬を愛するが故、 鳴海のように先立たれるのが恐くて 今にも泣き出しそうな声で告げました 紬「私も知盛さんの事をお慕いしておりますよ。それに私は知盛さんを置いて逝ったりしません。」 こうして2人は出逢ってから初めて 2人っきりの夜を過ごしました…。 時は少しだけ流れまして 西暦1170年10月02日。 紬はいつものように太郎の世話を しておりました…。 太郎「キャッキャ。」 太郎はこの日、 とても嬉しそうに笑っていました。 紬「う…。」 紬は突然気分が悪くなってしまい その場に踞ってしまいました。 みつ「お方様!少々お待ち下さい。 薬師の芳御前をお呼び致します…」 みつが芳御前を急ぎ呼んで来たので 紬は診察を受けました。 すると…。 芳御前「御懐妊なされております。 三月といった所でございます。」 紬「知盛さんのお子が、 私の中にいるのですね。」 紬は感極まった様子で、 優しくお腹を撫でました。 一方こちらは、 朝廷に出仕中の知盛と宗盛ですが 芳御前の妹である陰陽師の櫻御前が紬の懐妊を知らせる為に式神を飛ばしたためこの慶事を知る事が出来ました。 知盛「紬の腹に2人の子が宿った?」 太郎も可愛いけれど紬の懐妊を知った知盛はとても喜んでおりました…。 宗盛「おめでとう、知盛。」 知盛「兄上、太郎も可愛いですが 紬との子に逢うのも楽しみです。」 宗盛から祝福された知盛は、 満面の笑みを浮かべていました…。 宗盛「それはそうだろうな。 紬なら太郎も産まれてくる子も 同じくらい大切に接するだろう。 心根の優しい子だから…。」 義妹であるはずの紬の事を そこまで誉める宗盛の事を不思議に思いながらも知盛はそれより… 知盛「紬の話をされると逢いたくて 堪らなくなりますから辞めて下さい。兄上」 最愛の妻となった紬に逢いたくて仕方なくなったようで耳まで真っ赤にしながら宗盛と話をしておりました。 すると… 高倉帝「何の話をしている?」 後ろから2人の話に入ってきたのは、 なんと…時の帝である高倉帝でした。 高倉帝は後白河院の寵姫である建春門院滋子〈=時子の異母妹〉が産んだ平家の血を受け継ぐ帝なのですが…。 2人は驚きのあまりその場で 一瞬固まってしまいました…。 知盛「えっ…?」 宗盛「へ、へ、陛下…!」 高倉帝は普段御簾の掛かっている玉座に座っているので… 臣下である知盛らに対して気軽に話し掛けられる事などないに等しい事でございました…。 そのため、 宗盛は緊張のあまり… 宗盛「ど、ど、どう… どうなさいました?」 壊れたラジカセのように なってしまったのでした…。 そんな宗盛に対して、 落ち着きのあり過ぎる知盛は、 一瞬驚いただけで後は普通の対応をしておりました…。 知盛「兄上…落ち着いて下さりませ。」 宗盛「これが落ち着けるか!」 すると… 高倉帝は宗盛の言葉など気にも止めず 玉座を出て来た理由を告げました。 それは… 高倉帝「朕の飼っている唐猫の三毛が姿を消してな…。どこに行ったのかと。」 どうやら飼い猫である唐猫の三毛を探していたようでした…。 平安時代では猫を飼うのがちょっとした流行りのようであちらこちらで猫を飼っている愛猫家が増えておりました 但し… 平家一門では清盛が猫嫌いで猫を飼う事など許されませんでした。 清盛「儂は猫が嫌いなんだ、 奴らは気まぐれだから儂は人間も動物も従順なものを好むのだ…。」 平家一門のルールは、 常に清盛なので宗盛も知盛も 猫自体は嫌いではありませんが… 知盛「総帥に逆らうと後が恐い…」 宗盛「それな…」 逆らわない事が家族の安寧に繫がる為 宗盛と知盛は従っていましたが帝ともなると清盛の意向に従わずとも許されるのでございます。 知盛と宗盛の置かれている諸事情はともかくと致しまして…知盛が周りを見渡すと少し離れた所から にゃーん! 猫の鳴き声が聞こえました。 高倉帝「三毛ちゃんか?」 高倉帝の猫好きは宮中の誰よりも突き抜けておりますので声のする方へ向かおうとしておりました。 しかし… 時の帝があまり玉座を離れて あっちこっちフラフラしておりますと さすがに臣下としても困りますので… 知盛「我らが探しますから陛下は玉座でお座りになっていて下さりませ。」 宗盛「猫ちゃんが玉座にお帰りになられるかも知れませぬ。」 高倉帝「そうか…ならば頼むぞ。」 高倉帝は2人に唐猫「三毛」の捜索を 頼むと玉座へ戻っていきました。 宗盛「知盛、で、 三毛猫の唐ちゃんを探すぞ!」 知盛「兄上、それを仰るなら、 唐猫の「三毛」ちゃんです。」 人の名前を覚えるのが苦手な宗盛が 猫の名前を覚えられずはずもなく…
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