第5章 猫パニック?

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にゃーん! 宗盛「知盛、唐ちゃんがそっちに!」 知盛「唐ちゃんではなく… 三毛ちゃんです!」 知盛は何回訂正したか 分からないくらい訂正しました…。 けれど… 宗盛「三毛猫の唐ちゃんだろ?」 宗盛の物覚えの悪さは 致命的と言わざるを得ないくらい 悪かったのです…。 だからこそ… にゃん!にゃん! 知盛「兄上、唐猫の三毛ちゃんもどうやら名前を覚えよと怒っているのやもしれませんよ…」 知盛も猫の言葉など分かりかねますが きっとそうだと思いました。 何故なら… 唐猫の三毛は知盛ではなく、 宗盛ばかりを狙って引っ掻いているからです…。 宗盛「知盛、猫の言葉なんか分かるのか?それにしても痛い!また引っ掻かれた…!」 知盛「それに、 猫ちゃんは繊細ですから無理矢理掴むと怪我をさせてしまうかもしれませんよ。気をつけませんと…。」 宗盛は猫好きとは言うものの 見かけだけの猫好きなので… 猫への扱いも雑でした…。 宗盛「そなた、猫が好きなのか?」 あまりにも猫について詳しすぎる知盛に対して宗盛はある疑問を持ち、素直に聞いてみる事にしましたが… 知盛「僕が1番好きなのは紬です!」 当然知盛の答えは紬一択。 それ以外の選択肢など…ありません。 宗盛「はいはい、ごちそうさん!」 知盛の解答を聞いた宗盛が あきれた顔をしながら自棄(やけ)を起こしておりました。 何故なら宗盛の正室・ 清子(せいこ)は… 秈千代が産まれる前なら 宗盛に夢中でした…。 秈千代が産まれたら今度は 秈千代に夢中となりました。 清子「あら?いらっしゃったの?」 母となった清子にとって… 宗盛はまるで空気でした…。 そんな宗盛からすると… 宗盛「母にならない妻は貴重だ。」 しかし… 知盛に焼きもちを妬いている程 事態は甘いものでなく…むしろ 深刻なものとなっておりました。 にゃー! 知盛「兄上、 早よう猫を捕まえなければ!」 早く帰りたいと願う2人の気持ちとは 裏腹に唐猫の三毛は逃げ続けるばかりでしたので… 宗盛「清子や紬の元へ帰れんな!」 愛妻家の2人は段々焦りを覚え始めておりました…。 あっという間に刻限は夕方になり西日が美しく部屋を照らしておりました。 いつもならとっくに帰っている頃合いなのになかなか帰らない知盛の事を案ずる紬は… 紬「知盛さんは、 いつお帰りになられるのかしら?」 太郎「キャッキャ!」 養子の太郎をあやしながら知盛の帰りを今か遅しと待ち望んでおりました。 しかし… 知盛「猫!猫を捕まえんと帰れん!」 朝からずっと猫と追いかけっこをしていた知盛は疲労困憊のため言葉遣いが大変な事になっておりました。 にゃー!にゃん!にゃー! しかし… 相変わらず物覚えの悪い宗盛は、 唐猫の三毛…ではなく三毛猫の唐だと思い込んでいるようで… 宗盛「三毛猫の唐ちゃん。待て!」 知盛「だ・か・ら!兄上!唐猫の三毛ちゃんです!だから逃げるんです!」 知盛と宗盛は高倉帝の愛猫(あいびょう)唐猫の三毛ちゃんに振り回されておりました。 にゃん!にゃー!にゃん! 宗盛「もう…ダメ!」 知盛「諦めてはダメです。兄上。」 すると… 2人の前にある女性が現れました。 その女性は… 建春門院「何をしておるのです?」 建春門院の肩にはにゃーと可愛らしい声で鳴く唐猫の三毛がいました。 建春門院(けんしゅんもんいん)…実名は平滋子で宗盛らの母親である時子の異母妹。後白河院の寵愛を一身に受けた寵姫である。高倉帝は建春門院が産んだ後白河院の皇子。 宗盛「建春門院様、その…三毛猫の唐ちゃんが高倉帝の元からお逃げになりまして我らが探していたのでございます。」 建春門院「宗盛殿、相も変わらず物覚えがお悪いのね。この子は唐猫の三毛ちゃんよ。」 知盛「だから三毛ちゃんだと何回も申したではありませぬか。兄上。」 建春門院「私が帝の元へ連れ帰るわ。 何だか妙に懐かれているみたいだから。」 にゃー。 三毛猫の唐…じゃなく 唐猫の三毛は知盛と宗盛の追走を 逃れ建春門院により高倉帝の元へと 帰されました。 高倉帝「三毛、お帰り。」 にゃー。 さてさて猫?ねこ?パニックで疲れた 宗盛と知盛は愛妻の待つ館へと帰って 行きました。 知盛「兄上、疲れました。」 宗盛「猫との追い掛けっこは、 もう…勘弁じゃ。」 宗盛と知盛が 満身創痍で清盛の館へ帰ると、 紬「知盛さん、 どこに行かれていたの? 寂しかった…です…。」 紬が今にも泣きそうな顔をしながら 知盛の胸に飛び込みました。 知盛「お待たせ、紬。 高倉帝の愛猫唐猫の三毛ちゃんが 脱走して大変だったんだ。」 宗盛「三毛猫の唐ちゃんではないのか?」 物覚えの悪すぎる宗盛の独り言にはノーコメントを貫く知盛は、 腕の中にいる紬の髪を撫でながら 宥めておりました。 すると… 清子も秈千代を抱きながら、 清子「確かに 今宵はお帰りが遅かったから 案ずる気持ちはよく分かります。」 宗盛「清子もおいで。」 宗盛は知盛と紬の仲睦まじい様子が とても羨ましいようで 清子の前で両腕を広げました…。 しかし…残念な事に清子から帰って来た反応はまさに絶対零度な反応…。 清子「はぁ?」 清子は紬のように抱きつくつもりは 毛頭ないようで宗盛に対して今にも 凍りつきそうなくらい冷たい視線を 向けておりました。 すると皆の後ろから、 愉快そうな声が聞こえてきました。 清盛「紬と清子は反応が逆だな。」 それは2人の父親であり 平家の総帥・平清盛でした。 時子「宗盛、子が産まれたら女は子を守るために母となるのです。紬と知盛の関係を羨むだけではなく総帥の子として恥ずかしくない態度をなさい。」 清盛「しかし…孫である秈千代と太郎に関しては儂も溺愛してしまうのじゃ…あまり甘やかし過ぎではないのか?と清子と紬に叱られてしまうのだがな…。」 現代の祖父と変わらぬ孫を溺愛する 総帥・清盛でしたがその姿に対して 時子は… 時子「清子と紬から叱られる程甘やかすのは宜しくありませんよ!あ、そうだわ。忘れるところでした。知盛。紬ちゃんの懐妊おめでとう。」 知盛「母上にそう言って頂けると とても嬉しゅうございます。紬。 元気な子を産んでくれ。」 紬「無論そのつもりにございます。」 紬は平安時代末期にて愛しき知盛や 養子の太郎…それにお腹に宿りし我が子と生きていく決意を固めました。
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