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第9章 建春門院崩御。
時は流れて西暦1176年の事に
なるのですが…
知盛、優月は25歳。
太郎は7歳、高千穂も
6歳となっていました。
紬「知盛さん、色々ありましたね。」
知盛「どうした?改まって…。
まだ終わりではないぞ。君はずっと僕の隣で生きるのだから。」
紬「はい!」
とても仲良しな紬と知盛ですが
それは横の方に…失礼しまして…。
紬「横に置かないで下さりませ。」
物語を本題に戻しますと…
時の治天の君である後白河院と
清盛は端から見ても仲良し…では
毛頭ありませんでした。
実はあんまりにも仲が悪いので、
清盛は滋子を後白河院ではなく…
時の帝に入内させようとしていました
しかし…
後白河院と平滋子は互いに惹かれ合い
滋子は後白河院の元へと入内する事に
なりました。
なので…
平 滋子改め建春門院滋子が
気の合わない2人の間を取り持ち
上手いこと均衡を取っていたので、
双方、表立っては争わなかったのですが建春門院滋子の身にもし災いなどが起きれば平家の危機と申しても差し支えありません…。
もし建春門院が崩御など
した日にはそれこそ…
しかしこの年、
危惧していた事が
起きようとしていました…。
それは
ある日の朝の事でございました。
後白河院「滋子、
朝餉食べないのか?」
後白河院が建春門院の食欲の低下を聞きその身を案じて駆けつけました。
すると建春門院滋子は、
後白河院の御所に1番近い局・
夏壷の中で倒れておりました。
建春門院滋子「く、苦しい。」
苦しそうに胸を押さえながら…。
後白河院「滋子…。
私を置いて逝かないでくれ。
頼むから…。」
後白河院は愛する建春門院の身体を抱きしめ懇願しました…。
さりとて懇願したところで
どうする事も出来ぬのが人…。
建春門院「…。」
彼女はあまりの苦しみにより言葉を発する事も出来なくなっておりました。
後白河院「滋子!薬師の芳御前を呼べ。陰陽師の櫻御前も呼べ。出来る事は全てやるのだ。」
院の剣幕に近臣も驚き弾かれたかのように急いで2人を呼びにいきました。
元々感情の起伏はかなり激しい人では
ありましたがこんな状態になったのは
初めてでございました。
後白河院「これが愛するという感情か?滋子を喪えば私は我が身を斬られるよりも辛いのだ神よ、仏よ、もしもおいでになられているのならば我が身に残された寿命を滋子に渡して欲しい。だから…せめて…どうか…。」
後白河院は寝食を忘れるくらい没頭し
仏様を彫り続けていました。
藤原 成親「院、少しでも何かをお召し上がりになりませぬと院の身体を害してしまいまする。建春門院様は国中の陰陽師、祈祷師に命じてただいま祈祷をしております。ですから建春門院様のお目が覚められた際に院に何かありましては建春門院様がお心を御砕きになりまする。ですから…どうか。」
藤原 成親…後白河院の近臣で平治の乱の時に義兄である藤原信頼に片棒を担がされてしまうが平清盛に息子の義兄である事を理由に死罪だけは免れました。
後白河院「食べても味がせぬ。隣で滋子と話ながら食べなければ何を食べたのか分からぬくらいだ。滋子!滋子!」
慟哭する後白河院に成親は、
掛ける言葉を失いました。
建春門院の容態は芳しからず。
意識もしばらく戻らず苦しげに顔を
歪めるばかりにございます。
重盛「院、
御気分は如何でございます?」
その時
重盛が院の居室を訪ねてきました。
後白河院「御気分…
最悪に決まっておる!」
後白河院は重盛の言葉が
癇に触ったようで怒りを
露にしました。
重盛「それは失礼を申しました。
ところで食欲がないとお聞きしましたので貿易で得たお菓子など如何かと
思いお持ちしたのですが?」
平家は日宋貿易で財を貯めておりましたので珍しいものなど色々持っておりましたしお金もたくさんありました。
成親「それは良いですね。食べるもの
自体が変われば食欲もお出になるかも
しれません。」
近臣である成親。平家とはいえ自分に対して忠実な重盛に薦められ後白河院は菓子を食べました。
後白河院「美味である。」
重盛「院御自らお褒めの言葉を頂くなど有り難い限りでございまする。」
後白河院「そなた達、もう出ていけ。」
成親・重盛「では失礼を致しまする。」
こうして1人になった後白河院は、
また菓子を食べても何をしていても
自分の隣で微笑んでくれていた滋子が
眠ったままの事実を思い出し…
後白河院「滋子…滋子…!」
またもや涙に暮れるので
ございました。
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