第9章 建春門院崩御。

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後白河院がどれだけ仏様を彫っても 滋子の容態は回復せず…それどころか 事態は最悪の結末を辿りました。  後白河院の寵姫だった建春門院滋子は 西暦1176年07月08日の昼下がり… 享年34歳という若さで崩御しました。 後白河院と高倉帝の悲しみは深く 2人は黙ったまま自室で建春門院のめい福を祈り黙祷していました。 それから数日後、 建春門院の弔問のため 清盛と時子夫妻が後白河院の御所を 訪れた際の出来事にはなりますが… 後白河院 「どのような時でも共にいたい。」 建春門院の位牌を抱いて眠るくらい 後白河院は建春門院との御別れが 出来ずにおりました。 時子「それ程建春門院様を大切に思って頂きまして此方としても有難いのですけれど御休みの時まで位牌を御抱きになられておりましたら建春門院様も成仏出来ませぬ。」 後白河院「分かっておる、分かっておるが出来ないのだ。愛しさが溢れて止まらない。もう逢えないのに…それくらい分かっているのに…。」 時子に諭された後白河院は、 少し高い棚に位牌を置きました。 後白河院「ここならばどこにいても 滋子の位牌が見える…。」 時子「出過ぎた事を言いました。」 時子が謝罪すると後白河院は、 うっすらと微笑みながら… 後白河院「きっと滋子もそのように言うであろう。そなたは滋子の代わりに伝えただけに過ぎぬ。」 但し… 建春門院が崩御してからというもの、 後白河院と清盛の間にはピリピリとした変な空気が漂っておりましたので… 清盛「子らも大きくなったしそろそろ 宮中に上がらぬか?」 治部卿局だった鳴海が死んでから 治部卿局の役職が空いていた事に 目をつけた清盛は院付の女房を一族の嫁から出し目付役とする事にしました 清盛「後白河院が下らぬ事を考えぬよう監視をして貰いたいのだ…」 本当ならば… 平家と後白河院の仲が拗れぬようにしたいところではありますが一門の嫁ではパイプ役をさせる訳にもいかず… 紬「院を監視せよ… とはまた穏やかではありませんが…」 それに… 未婚の女性ならばパイプ役も出来るかも知れませんが知盛の嫁である紬では後白河院に惚れられる事もない代わりにパイプ役も期待出来ないのです…。 紬「大事ないかしら? 私なんかが出仕しても…。」 知盛「君なら大事ないに決まってる。 僕も兄上も手伝うから。ですよね?兄上。」 宗盛「無論だ。可愛い妹のためなら 例え日の中、海の中だ。」 知盛「兄上…。それを仰せになりたいのなら例え火の中、水の中です。」 宗盛「そういうこと。さすがだな。」 紬「知盛さんがいて下さるのなら、 私、頑張ります。」 宗盛「おーい、俺は…?」 清盛「頼りにならん!」 優月の代わりに清盛が宗盛の質問に 答え一刀両断しました。 宗盛「そんな…総帥。」 後日、紬は後白河院付の女房 治部卿局になりました。 紬「本日よりお世話になります 治部卿局と申します。」 後白河院「そうか…。」 後白河院は…建春門院滋子を喪ったばかりで全ての事に関して興味がなくまるで無になっておりました。 知盛「紬、院の御迷惑にならぬよう しっかり勤めを果たすのだぞ?」 紬「はい、知盛さん。」 後白河院「熱いのは結構だが他所でやれ!滋子を喪ったばかりの私に見せつけるのか?」 この夫婦、場を弁えなかったため 後白河院に怒髪天を衝かれ追い出されてしまいました。 初出仕でこれでは先が思いやられる気が致しまするが… 平重盛「…紬、知盛。院の御心痛も慮らなければならぬ…。仕事とは人に気を遣いながら処世術を学ぶ場だ…。」 後で知盛夫婦は異母兄である重盛にも叱られてしまいました…。
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