第11章 鹿ヶ谷の陰謀。

1/3

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ

第11章 鹿ヶ谷の陰謀。

紬が目を覚ますとそこは 見覚えのない部屋の中でした。 「ああ、目覚めたか?」 笑みを浮かべながら紬の顔を覗き込むのは愛しき知盛…ではなく、 「父上、目覚めたようですよ。」 西光の長男である師高と その父親、西光。 そして… 「可愛い女だ。早くものにしたい。」 そんなあまりに軽々しい言葉を吐き 紬をきつく抱きしめた師経。 「離して下さりませ。」 紬が足掻くと師経は更に力を入れ 抱きしめました。 「女は男に従え。さもなければこのまま無理矢理そなたをものにしても良いのだ。そなたが産んだ子ならさぞかし見目麗しき子になろうな。」 「…。」 紬は嫌々ではございましたが、 従う事にしました。 紬『命を奪われるのもこんな奴の子を 産まされるのも絶対に嫌!』 紬は心の中で知盛の笑みを思い浮かべ 耐える事にしました。 紬『知盛さんなら 必ずや助けて下さる。』 紬は愛する知盛の事を誰より信じて おりました。 師経「父上、それでどうするのです? 作戦はいつ実行します。」 師経は腕の中にいる紬の額に口づけを してから西光に問いました。 師高「今は遅いから 今宵はここで過ごそう。」 師高に言われた師経はこれ以上ないくらいに御機嫌でございます。 師経「なら布団を敷いて朝まで添い寝だ。可愛い俺の彼女。」 ゾワッ 紬は師経からの軽々しすぎる言葉に 全身鳥肌が立ちました。 師経「さて…一緒に寝よう。」 師高、西光の間で紬は師経に抱きしめられながら眠る羽目になったのです。 この師経…とにもかくにも面倒過ぎる 性格でございまして…。 師経「ダメだよ、 どこにもいかせない。」 寝返りすらも打たせてくれない 本当に迷惑過ぎる男でした。 その翌日である29日。 西光「清盛殿、貴殿の四男である 知盛殿の継室である紬殿を息子の 元に帰して欲しくば延暦寺を攻める べきではございませぬか?」 清盛はその途端、西光を今にも射殺しそうなくらい激しく冷たい眼差しで睨みました。 清盛「脅迫するつもりか?」 西光「早くしないと師経が気に入って おりますから何をしでかすか分かりませぬ。昨晩も彼女を抱きしめながら何度も額に口づけをしていましたから」 バシン! その瞬間西光の頬を誰かが思いきり 叩きました。無論それは…。 知盛「紬は僕の最愛の妻だ。手を出す事など決して許さない!」 知盛は怒り狂う寸前でございました。 西光「院、この男を流罪にしてくだされ。手を出したのでございます。」 西光は院に告げ口をするべく御所へ 向かおうとしましたが…。 重盛「西光殿、どこに義妹を閉じ込めているのです?もし院に知盛の事を告げ口なさるのならば義妹を連れ去りし事も院にお教えしますぞ。」 西光「くっ!」 重盛に咎められた西光は、 その場を逃げ出してしまいました。 清盛「紬が奴らに連れ去られたのは 分かったのだがどこにいるのかが分からなければ助けようがない…。」 紬がどこにいるのか? 手掛かりが全くなくて困っていたところ平家の一族に手を貸してくれたのは 力丸「紬様は恐らく京におられまする。ですから式神を飛ばして探しましょうぞ!」 宮中に仕える2人の陰陽師でした。 清盛「どうしてそなた達が 力を貸してくれるのだ?」 佐吉「紬様は我らの失敗を被ってくれたり…院に報告しなかったりと大変お優しき方でございましたから。」 知盛「何とかして見つけ出してくれ。」 師経「君の名は紬だったかな?」 優月を抱きしめながら問う師経ですが その息が耳にかかる度 紬は嫌な気分になるのです…。 紬「名前など聞いて どうなさるのです?」 師経はフフンと不敵な笑みを浮かべると後ろから抱きしめていた紬を前に向かせて頬や額にこれでもかと言う程、口づけるので… 紬は唇を噛みながら 必死に苦痛と戦っていました。 師経「紬…。唇から血が出てる。 ダメだよ。自分の身体を傷つけては…。」 やはりこの男が言うと どんな言葉も軽々しく感じます。 この後、紬はこの男のせいで全身に 鳥肌が立ってしまう事になりました。 それは… チュッ。 紬「…!」 師経は紬の唇に口づけをしました。 師経「うん、鉄の味がする。 ダメだよ。可愛い君との初めての口づけが鉄の味だなんて…。」 紬ははっきり言って理解に苦しむ この男から1秒でも早く離れたいと思っておりました。 それを式神が見ていたなど知る由もないこの男は紬の苦しみなどまるで気にもせず自らの本能が求めるまま優月に口づけし続けました。 師経「紬、本当に可愛い。 君は永遠に私のものだ。紬。」 宮中では式神を通じて誰よりも紬を 溺愛している知盛が怒り狂う寸前だと 言うのに…。 知盛「…!師経、我が愛しき紬を 苦しめおって!その罪、万死に値する!」 清盛「落ち着け、知盛。師経の命を奪っては紬の身に危険が迫る。」 清盛の言葉に知盛は異を唱えました。 知盛「今でも十分危険です!」 確かに危険どころか危険すぎる。 まるでハイエナのように鋭い眼光を したまま知盛の妻である紬に口づけを しまくる男。 紬にとっては身を斬られるくらい 苦痛だというのによりにもよって その姿を式神を通じて知盛に見られていたなんて知ったら…。 奈落の底に突き落とされるくらいの深い悲しみに陥るであろう。 だからせめて師経が過ちを犯さぬ内に 紬を取り戻す事が先決である。 万が一にでも師経の子を紬が宿す なんて事になったら… 知盛「紬が宿していいのは、 僕の子だけだ。絶対に助ける、紬。」
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加