第13章 宇治橋の戦い。

2/2

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
間者・萌黄(もえぎ) 時忠の妾ですが間者の心得もあり 以仁王の侍女に紛れて秘かに情報を 時忠へ知らせておりました。 萌黄「時忠様、やはり頼政、仲綱 親子は以仁王を連れて逃げ出したよう でございます。」 時忠「ご苦労、 すぐに総帥へ知らせよ。」 萌黄「畏まりました。」 萌黄は急ぎ清盛の屋敷に向かうと すぐに着きました…。 萌黄「総帥、源頼政、以仁王 謀反の疑いがあります。」 萌黄は清盛に頼政らの裏切りについて告げました。 清盛「そんな気はしていた。 重衡、そなたの出番ぞ! 源氏の奴らの出鼻をくじいて参れ!」 重衡は総大将に任命され 清盛の期待に応えるため気合いを入れ 決意を述べたのでございます。 重衡「お任せあれ、奴らを完膚なきまでに叩きのめして参ります。」 重衡は2万8千の軍勢を率いて 頼政らを追い掛けました。 重衡「逃がすな!平家の威信にかけ、 奴らを捕らえよ!」 若き戦上手な重衡が声高らかに叫ぶ度 頼政らの率いる兵らは腰が引けるようで逃亡兵が相次ぎました 頼政「ぐ…進退極まるか、奈良へ 逃げれば何とかなると思うていたのだが…」 仲綱「父上、我らが盾となり 以仁王にお逃げ頂きましょう。」 以仁王「そなたらを置いて逃げる事など私には出来ん!」 そんなこんな話している内に、 以仁王らは宇治橋に到着しました。 頼政「仲綱、宇治橋の橋板を外せ。 そうすれば幾ら平家でも攻める事は… 出来まい。」 仲綱は1000騎の兵士達と共に橋板を 外してしまいました。 重衡「う…。これは攻められぬ。」 重衡は頭を抱えておりましたが、 考え込んでばかりもいられません。 重衡は頭の中で今まで学んできた軍略を思い返していましたが…。 重衡「馬筏(うまいかだ)だ!」 すぐに閃き兵達に命じました。 重衡「馬同士を寄せて川を渡る。 さすれば宇治橋の橋板がなくても 渡る事が出来る。」 意表を突かれた頼政は、 頼政「馬筏だと?」 とても焦りました…。 頼政「これは…まずいな…。」 頼政が幾ら焦っても重衡の率いる2万 8千の大軍はじわりじわりと迫って 来ています。 1度平家に弓引いた以上、 頼政は覚悟を決めました。 頼政「とりあえず以仁王様、 平等院鳳凰堂まで逃げましょう。」 頼政は、自身の後方に座っている 以仁王へ向かって話し掛けました。 しかし… 以仁王「…。」 以仁王は何も言いません。 ピュー。その時弓矢が飛んで来て 頼政の乗っている馬のお尻に刺さりました。 ヒヒーン! 馬はあまりの痛さにビックリしたようで以仁王と頼政を振り落とし走って逃げ出してしまいました、 頼政「いた、た、た、た。」 頼政が腰を擦りながら立ち上がると以仁王の背に深々と弓矢が刺さっており既に以仁王は息を引き取った後でした 頼政は以仁王を息子である仲綱の馬の後に乗せて平等院鳳凰堂へと向かい… 平等院鳳凰堂は歩いて5分くらいの場所にありすぐ着く事が出来ました… 以仁王は身分の高いお方でございますから野ざらしにしておくなどとんでもない事でございました。 なので…頼政は、 頼政「仲綱、以仁王様の事を頼んだ。 平等院鳳凰堂はあの方の御先祖が建てられたお寺。この場所なら以仁王様も安心してお眠りになられるであろう。」 仲綱に以仁王の事を頼むと… 槍を持ち平家の大軍を食い止めようとしました。 仲綱「父上、無理でございまする。」 仲綱は止めようとしましたが初めに 以仁王を弔ってからと思い直し平等院鳳凰堂の中庭の辺りに穴を掘りその中に以仁王を入れると丁重に弔いました。 仲綱『御冥福をお祈り致しまする。 私と父も今よりそちらへ参りまする。』 仲綱は孤軍奮闘する頼政の元へ助太刀に向かいました。 重衡「降伏せよ、頼政!20000をゆうに越した兵を相手にするなど笑止千万!そなたら無駄死にするつもりか?」 挑発する重衡に対して頼政は、 不敵な笑みを浮かべていました。 頼政「フフッ」 頼政に嘲笑された重衡は怒りを露にして頼政へ詰め寄りました。 重衡「何がおかしい!お前、 馬鹿にしてるのか?」 重衡は感情を抑えきれず頼政を弓矢で 狙おうとしましたが逸れてしまいました。 頼政「そんなんでよく戦に出ているな!」 頼政に挑発された重衡は更に頭に血が昇り いたずらに刀を振り回してしまいました。 頼政「痛いではないか!」 しかし…重衡の刀は頼政の足を傷つけ、頼政は逃げる事も戦う事も困難になってしまいました。 仲綱「くっ…!父上、万事休すです。」 仲綱は頼政を狙って重衡が放った矢に 運悪く当たってしまい肩を負傷しました。 重衡「父子共に怪我をしている状態でいかにして我に勝つつもりだ?」 仲綱・頼政「くっ!」 2人は覚悟を決めて自害をしました。 重衡「無謀よ…。」 重衡が勝ち、頼政、仲綱父子は負けました。 清盛「よーくやった!重衡!ご苦労さん!」 重衡「有り難き御言葉にございまする。」 重衡勝利の報告を聞いた清盛は、 大喜びでございました。 重衡「兄上、戦に勝ちましたぞ!」 重衡は総帥である清盛への報告が終わると知盛の元へ報告に来ました。 知盛「勝利したのか、おめでとう。 私も補佐で行くはずだったのだが すまんな…。」 知盛は臨月となりいつ産まれても 不思議ではない紬のお腹を 見つめておりました。 紬「あまり見ないで下さりませ。 恥ずかしいのでございます。」 知盛からの熱い視線に紬は照れながらお腹を隠していました。 知盛「どうして腹を隠す?紬の腹には僕と紬の子がいるんだから。」 重衡「兄上、お熱いのは結構でございますから目のやり場に困るのであまり惚気ないで下さりませ。」 重衡は熱さが日に日に増していく兄夫婦に苦言を呈すると2人の居室を後にしました。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加