第14章 紬の葛藤。

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第14章 紬の葛藤。

西暦1180年07月10日。 紬は三男である(紬の子だけなら次男)千代丸を産みました。 紬「知盛さん、私達の子です。」 知盛「そうだな。紬、 良く頑張ってくれた。ありがとう。」 知盛に笑い掛けられて紬は舞い上がりそうになりました。 紬は誰よりも 知盛に惹かれていました。 出逢った時より、 祝言を挙げたすぐ後よりも しかし… 異世界転生を果たしたとは言え…現代が恋しくないと言えば嘘になります。 何故ならば… 本を読むのが大好きな紬が 紬「知盛さん、私は本を読むのが 好きなので本を読みたいのです。」 知盛に書物が欲しいとお願いすると 知盛が持ってきた書物は文庫本…ではなく小難しい言葉で書かれた万葉集だの…源氏物語だの…竹取物語だの…でした。 さすがに歴史が得意な紬でも 現代語訳されたものなら何回も 読んだ事はありますが…。 紬『こんなの読めないよ…!』 紬は心の中で悲鳴をあげましたが さすがに優月が喜ぶだろうと思いながら書物を探していたであろう知盛の気持ちを無下にすることなど到底出来るはずもありません。 紬「知盛さん、ありがとう。」 にっこり笑って御礼を言うと知盛は、 嬉しそうに笑っていました。 知盛の満面の笑みが見たくて 今日も紬は、なかなか慣れない平安時代でも頑張ろうと思うのでした…。 しかし… それらは…別に生きるためになくても生きるために支障ありません…。 紬が1番困ったのは、 紬「シャワーがない!」 平安時代には現代で当たり前のように使っているシャワーなんて…あるはずなく… 知盛「シャワーって…なに?」 平安時代を生きる人間なら知ってるはずだろ?と言わんばかりに知盛は首を傾げていました。 しかし… 毎日お風呂に入ると魂が汚れるかもしれないから3日に1回占いでお風呂に入って良いよという結果が出てから入るとか聞いた時には、 まるで頭からたらいが落ちてきたかの ような衝撃でございました! 紬も今までの生活とこの時代の違いに戸惑いながらも愛しき知盛と愛しき子らのため何とか生きてきました。 来てすぐの時はこんなに大変でしたが生まれたての千代丸を産湯に入れると 占いをしました。 しかし… その結果は凶。 つまりお風呂に入ってはならない…。 紬「今日くらい入らせてよ!」 ついつい文句が出ましたが… 仕方ありません。 なので… お香を炊く事にしましたが… 紬は優柔不断なので 頭を抱えてしまいました。 平家の総帥を父に持つ知盛の継室になると他の人よりもお香があるのです。 中には 贈り物として貰う事もあります。 紬「ああ、決まらない!」 叫んでいても気分は落ち込むばかりなのでいつも紬の近くにいる知盛に お香を決めて貰う事にしました。 知盛「なら…若葉はどうだい? 夏だから若葉が良いかもしれないよ。」 すると… どこから現れたのかは、 興味がありませんが… 宗盛「夏だから蝉時雨も良いだろ?」 蝉時雨(せみしぐれ)とは… 宗盛が適当に混ぜ合わせて作り 奇跡的に完成したお香。 しかし… 清盛「何だ?この煩すぎる匂いは…?」 強烈な匂いと強烈な匂いを混ぜ合わせた超強烈なお香のため嗅いだ清盛は、 ショックのあまり3日3晩、気を喪っておりました。 大庭景親のトラウマは蝙蝠で、 清盛のトラウマは蝉時雨というお香。 共にその言葉を聞く度に 顔面蒼白になる程でございます。 知盛「御産という命懸けの仕事を終えた紬と千代丸の目を回させてはなりませぬ…。」 清盛は4日目の朝、 時子の悲痛な声で目覚めると 義弟である時忠に命じて 封印しておりました。 しかし… 知盛「兄上、 どうして持っているのです?」 知盛が尋ねると宗盛は、 意味深な笑みを浮かべながら、 宗盛「総帥に渡す前に… 1個懐にしまっていたのさ、 秈千代と今晩匂いを楽しむかな?」 知盛「兄上、秈千代と義姉上様と時雨丸と御自分が4日気絶してても良いのですか?悪い事は言いませんからお辞め下さりませ。」 宗盛の正室である清子は、 肺疾患により命を落とし宗盛は教盛の娘である教子を継室として迎えており時雨丸が産まれていました。 宗盛「大事にはなるまい。」 知盛の制止も聞かず宗盛は、 蝉時雨のお香を炊きましたので、 秈千代「く、臭い!」 教子「何ですか?これは…」 バタン! 宗盛「知盛、紬、秈千代達が…!」 秈千代達はあまりの臭さに倒れてしまい宗盛は知盛達を呼びに来たので倒れませんでしたが蝉時雨の匂いは清盛の屋敷に充満しました。 これにより… 時子「宗盛!」 清盛はトラウマのため顔面蒼白になっておりますので宗盛は母である時子に 思いっきり叱られました。 時子「いい加減になさい! 臭いでしょ!」 宗盛「臭い、臭い、言わないで下さい!」 時子「臭いものは臭いのです!臭い!臭い!臭い!!」 時子に思いっきり臭いと何度も言われた宗盛は凹んでしまいました。
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