第15章 恩を仇で返すもの。

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これに激昂したのが清盛。 清盛「山木が討たれただと!くっ! あの小童(こわっぱ)!恩を仇で 返すとは…!」 山木 兼隆討ち死にの訃報を聞いた 傍若無人な平家の総帥は大庭景親に 命じて頼朝を討伐する事にしました。 景親「総帥、お任せあれ!」 それに加勢するは… 八重姫の父親である伊東 祐親。 祐親「我が娘を傷物にされし怨み、 忘れてはおらん!お前を黄泉国へ送ってやるから覚悟しておけ!頼朝!」 景親が頼朝の正面から攻撃を仕掛け、 怒りの収まらぬ祐親が後ろから攻撃を 仕掛ける手筈となっていました。 祐親がこんなに頼朝を恨むのには 理由がありました。 八重姫は… 祐親の家臣に嫁いでいましたが、 八重姫の夫・木下雪麻呂 「私は祐親様の命令で、 仕方なくお前を嫁にしたのだ。」 毎日毎日こんな思いやりの欠片もない 言葉を投げ掛ける夫との愛のない結婚生活に嫌気が差した八重姫は…。 八重姫「逃げ出してしまおう。」 兄が逃げる手引きをしたため頼朝のいる場所だけは分かっていた八重姫でしたが… それが 最悪の結末を招いてしまいました。 頼朝を忘れられずにいた八重姫は、 密かに頼朝の元へ向かいましたが、 八重姫「頼朝様…。」 頼りの頼朝は八重ではない女性に笑い掛けそれどころか女性は姫を抱いていました。 それが政子と大姫でございます。 頼朝「大姫は政子に似て本当に可愛いな。」 政子「まぁ…頼朝様ったら。」 こんなに幸せな家族、 どこからどう見ても八重姫に付け入る 隙間などありませんでした。 悲嘆に暮れた八重姫は降り続いた雨の 影響で増水した河に身を投げて命を 落としてしまいました。 八重姫を冷たい河から引き揚げたのは近くに住んでいる領民でした。 変わり果てた娘の姿を見た祐親は、 頼朝を暗殺すべく時政の館に向かいますが宗時により追い出されました。 宗時「八重姫が身を投げた事は義弟の 責任ではございません。そもそも貴方様がまだ幼き千鶴丸を手に掛けた上好いてもおらぬ方に嫁がせたのでございましょう?」 宗時の申す事は正しいのですが、 何せこの男は全て頼朝が悪いと思って いますから怨みを一方的に募らせて いました。 西暦1180年08月23日、 石橋山では 双方が睨み合う事になりました。 しかし…多勢に無勢。 頼朝の軍勢は300しかおりません。 祐親の軍勢は同じく300。 なので祐親の軍勢だけならば勝てますが問題は大庭景親でございます。 景親「よし!捻り潰してくれる!」 300しか軍勢のいない頼朝の10倍 30000の軍勢でございます。 まともにぶつかれば景親の言葉通り 完全に捻り潰されてしまいます。 しかし… 頼朝「ここで敗ける訳にはいかん! ここで退いては男児にあらず。」 頼朝は果敢に攻めようとしますが 相手も大将首として狙っておりますのでどうしても… 景親の兵士・八吉「捕まえた!」 頼朝「触るな!」 頼朝が振りほどくとすぐさま 次の相手が…という具合にキリがありませんし頼朝の体力も異母兄だった悪源太 義平のように無限大ではありません。 頼朝「…。」 しばらく戦闘をしましたが、 頼朝は肩で息をしていました。 それは時政も宗時も義時も同じで ありました。 もう隠れるより道がありません。 頼朝「皆で隠れよう。」 宗時「それには及びませぬ。 私が囮になります故頼朝様は父上達を お願い致します。それで頼朝様、私の兜や鎧を頼朝様の兜や鎧と交換して頂きたいのでございます。父上、義時。頼朝様を頼みましたぞ。」 頼朝「宗時!待て!戻れ!」 覚悟を決めた宗時は極めつけに 頼朝の馬に乗ると大庭景親の元に 向かいました。 頼朝「宗時!」 頼朝の叫びを背中で聞いた宗時は、 ニコリと微笑みました。 宗時『頼朝様、最期の奉公で ございます。この宗時、貴方様の 家臣になれたこと生涯の誇りで ございまする。』 宗時は心の中で主に別れを告げ、 大庭景親と一騎打ちをしていました。 時政「頼朝様、今のうちに良さそうな 洞窟に隠れましょうぞ。」 頼朝「良いのか?宗時を犠牲にしても 良いと申すのか?」 時政「宗時が望んだ事にございます。 主君を守り死に逝く事は武人の誇り。」 武人(ぶじん)の誇り《ほこり》。 そんな事を言う時政も宗時も 頼朝にとっては理解に苦しむ人達で ございました。 時政「貴方様は生きねばならぬ御仁 なのです。」 そんな事は 頼朝にも分かっていました。 だけど… 政子の兄である宗時に次兄だった 朝長の面影を重ねていた頼朝は、 頼朝「俺はまた兄を犠牲にして生き長らえなければならぬのか?」 朝長「頼朝、そなたは逃げよ。 正室の子たるそなたは源氏の跡継ぎ。 死んではならぬ…我らの無念、そなたが晴らせ…。」 朝長から告げられた最期の言葉を思い出しながら溜め息を吐いた頼朝は何とか前へと重い腰を上げて進みました。   しかし… 宗時は頼朝のために我が身を犠牲にし命を散らしてしまいました。 それと時を同じくして 義時が洞窟を見つけました。 義時「父上、頼朝様、良さそうな洞窟を見つけ出しました。」 頼朝は義時に案内(あない)され、 時政と共に洞窟へとたどり着きました。 しかし… 大庭景親(おおばかげちか)の追撃の手は頼朝のすぐ近くまで迫っており… 一行が絶体絶命なのは言わずもがなで 景親と行動を共にしていたのは、 梶原景時(かじわらのかげとき)で ございました。 景親「この洞窟、怪しい…。実に怪しい。」 景親は頼朝達が隠れていた洞窟を何度も何度も執拗に眺めていました。 景親「私の経験上絶対に怪しいんだ!」
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