第15章 恩を仇で返すもの。

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景時は洞窟の裏手を指差して、 景時「もしや裏手から脱出しているかもしれません。確認してきて貰えますか?」 結構な洞窟なので裏手まで向かっていたらかなりの時間が掛かります。 景親「分かった、2人で見た方が早いな。」 景親は単純なので景時の言葉を 何も疑わず裏手へ向かいました。 景時『さて早いところ頼朝様を逃がさないとな。ここで景親に見つかれば私も裏切り者として処罰される。それに私も平家の駒扱いされるのはもうごめんだ。私も鞍替えしてやろうかと思っていたんだ。』 景時は平家の一族ではありましたが、 平家にこき使われていたためへき易 しておりました。 そんな景時が洞窟に入るとやはり… 時政「頼朝様、お逃げ下され。 宗時が繋いだ貴方様の命、無駄にしないで下さりませ!義時!頼朝様を頼む!」 頼朝「時政殿まで命を無駄になさる おつもりですか?なりませぬ。政子が 悲しみます。」 時政「なれど…。」 景時は頼朝達の姿を確認すると 軽く頷き入り口へ戻ろうとしました。 すると入り口の方から裏口を見回っていた景親の声が聞こえてきました。 景親「裏口には誰も居なかったぞ。 そもそも建物じゃないから裏口なんて ないだろうよ?」 景時「いやいや、可能性はあるだろうよ。相手は満身創痍なんだからさ。」 景親「確かにそうだよな。で、奥には なんかあったか?」 景親に聞かれた景時はいつものように 軽い口調で… 景時「うん?蝙蝠(こうもり)の群れがわんさかいたけど…。」 景親は景時から話を聞くなり顔面蒼白になりました。 実は景親は山奥で育ちましたので、 童だった頃に洞窟でよく遊んでいました。 しかし… 景親少年「ご、ごめんなさい!」 夜行性である蝙蝠は景親少年に安眠を 妨害されてしまい激昂してしまいました。 何とか全力疾走した景親少年は、 我が家に帰って来れましたがそれ以来 「蝙蝠」という言葉を聞くだけで顔から血の気がさーっと引いてしまう体質になってしまいました。 なので大人になった今でも、 景親「無理!無理!無理、無理!」 景時から蝙蝠の話を聞かされると 全力で拒絶していました。 景時「だったら帰ろうぜ。またあの頃 みたいに襲われたら叶わないだろ?」 あの頃は少年でしたが今は武人となり もし襲われたとしても平気ではありますが 景親「無理!無理!無理、無理! 蝙蝠の姿を思い浮かべるだけで 寒気がする。」 「トラウマ」というものは、 簡単に消えたりしません。 なので景親、怪しいとは思いながらも 蝙蝠がいると聞いては入れるはずが ありません。 景親「さて…それなら帰るか。」 景時「ああ、帰ろう。」 単純明快な景親は、 言葉巧みに言いくるめられ 景時と共に去っていきました。
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