第15章 恩を仇で返すもの。

4/4

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
こうして頼朝は命拾いをし、 石橋山の戦いが始まる前に北条家が 用意していた小舟に乗り房総半島へ 向かいました。 時政「宗時…すまないな。必ずや 平家を倒しそなたの仇を討ってやる!」 頼朝「義時、時政殿、すまない。 俺のせいで大切な家族を喪わせて しまう事になるなんて…。」 義時「貴方様は生きるべき人間なのです。 そんな事を仰せになられては兄が浮かばれません。2度と仰せにならないで下さりませ。」 頼朝「すまない。」 宗時を喪い気弱になっている一同でしたが彼らの無事を必死に祈っている人がいました。 政子「皆が無事だと良いのだけれど…。」 清山「必ずや政子殿の願い、 叶いますぞ。」 政子「はい、住職様私を匿って頂きまして本当にありがとうございます。」 清山「気にしないで下され。京に娘婿が出稼ぎに行っていたのですが禿の手に掛かり死んでしまいました。娘は嘆き悲しみましてな。しかし僧侶たる私が無益な殺生をするのは避けたいので頼朝様の奥方と姫君をお助けする事で婿の弔いをしたいのです。私なりの弔い合戦ですぞ。」 政子「そうでしたか。お婿さんの御冥福をお祈り致します。」 清山「有り難き御言葉にございまする。」 さて…それからしばらく経った頃、 清山と悲痛な願いと政子の切なる祈りに 守られた頼朝は無事に房総半島へと 到着しました。 それからしばらく経った09月17日、 頼朝が房総半島に逃れて来た事を知った 千葉 常胤(ちば つねたね)が加勢を 申し出て来ました。 房総半島でも平家の横暴に苦しめられて いる人々はたくさんおりました。 彼らからすれば束ねる人物が必要で、 頼朝からすれば石橋山の戦いでかなりの 軍勢を失ってしまいましたので軍勢が 喉から手が出てしまうほど欲しい。 なので… 双方とも利害が一致したため、 頼朝の軍勢はあっという間に 膨らんでいきました。 千葉常胤が合流した2日後の09月19日。 上総広常「頼朝様、我が20000騎の軍勢 是非ともお使い下さりませ。」 上総 広常が20000もの大軍を率いて 合流してきました。 なので… 頼朝は笑いがしばらく止まりませんでした。 義時「頼朝様、 そんなに笑わないで下さりませ。」 頼朝「広常殿、すまぬ。平家にはひどい目に あわされたためこれにて一矢報いる事が出来ると思ったらついついな。」 広常「構いませんよ、今は亡き父君や異母兄上達の仇を討ちたいのでございまするな。」 頼朝「ああ、我らに協力して頂けると 本当に助かりまする。」 広常「無論そのつもりでございまする。」 こうして頼朝は戦わずして大勢の兵を 得る事が出来ました。 そして頼朝は10月06日、 源氏と所縁の深い鎌倉に入りました。 鎌倉に入った頼朝は政子と大姫を 迎えるため伊豆山権現に使者を派遣しました。 頼朝の使者「大姫様、政子様、頼朝様の 命によりお迎えに参りました。共に鎌倉へ参りましょう。」 政子「これも住職様が御守り下さった お陰でございまする。」 清山は誇らしげに微笑むと 小さく頷きました。 清山「これにて弔い合戦勝利じゃ! 清左衛門、見ておるか?儂は平家との 戦いに勝ったぞ!」 清左衛門とは清山の一人娘である 桜の夫で京に出稼ぎへ行ったばかりに 理不尽な最期を迎える羽目になった男。 彼は平家の悪口を言い今まさに禿により命を奪われようとしていた男の命を 救おうとしました。そのため男を庇い禿の前に立ったため平家への謀反と見なされ禿により男と共に命を奪われてしまいました。 清桜尼(せいおうに)「父上。清左衛門様も必ずやお喜びになられます。」 清桜尼(せいおうに)…清左衛門が禿により命を奪われてしまったため出家した桜の法名である。 清山は娘である清桜尼と手を取り合い 犠牲なき弔い合戦の勝利を喜びました。 政子は大姫と共に迎えの輿に乗ると 夫である頼朝の元へと向かいました。 伊豆山権現から鎌倉までは近いため 1週間程で到着しました。 1180年10月17日、頼朝の鎌倉にある 拠点へ輿に乗った政子が大姫を伴い 到着しました。 頼朝「政子、大姫。逢いたかった。」 政子「私もでございます。」 大姫「とと様、逢いたかった。」 さあて頼朝が無事に家族と再会を 果たした所で物語は平家の元へ 戻ります。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加