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謙蔵「だから私としづは母を弔うと、
お寺の住職に母親の菩提を弔って
貰う事にしました。そしてしづと共に
行商に出る事にしたのです。」
謙蔵の隣でしづは目を輝かせていました。
しづ「謙蔵様の隣で色んなものを見たり色んな事を聞いたり色んなものを味わったり色んな出来事を共有していく内に謙蔵様の事を慕うようになっていました。」
しづは愛おしげに自らの腹を撫でました。
謙蔵「しづは懐妊していて半月だそうです。知度様の異父弟か異父妹になりますな。」
しづ「どうしてもひとめ貴方に逢いたかった。産まれたばかりの貴方を捨てた母なれどどれ程悲しい想いをさせたかと思うとそれだけが悔やまれて…。清盛様の館に着いてみれば貴方が時子様を未だに恨んでいる事を知りました。」
知度「俺だけが立ち止まっていたのか。なぜ俺ばかりが…。どうして皆…。」
知度は1度に聞いた情報が多すぎて
混乱しているようでございます。
清盛「お前も前に進もう、我らは一族。見捨てはしない、決して。共に参ろう。」
清盛は知度に手を差し出し、
知度も父の手を握りしめました。
知度「平家一門は一蓮托生。
時子様、今まですみませんでした。
母ちゃん、元気な子を産んでくれ。」
しづ「有り難きお言葉にございます。
時子様、清盛様、知度様を宜しく
お願いします。では失礼します。」
謙蔵「時子様、これが品物でございます。では失礼します。待ってくれ!しづ。」
時子「相変わらず良い品ね。」
時子が謙蔵の扱う反物の質に感動していると清盛はうーんと唸ってから突然、
清盛「いきなりだがそなたは、
本日から時子の養子になるが良い。」
時子「そんな急すぎませんか?」
清盛「嫌、人を理解するにはその人の
1番近くにいるのが必要だと思ってな。」
清盛も考えてないようでじっくり考えていました。知度の身の振り方を…。
知度「はい、養母様。父上様。
有り難き幸せにございまする。」
知度はようやく素直になりました。
この日から知度は恨み言も言わず
自意識過剰発言も言わなくなりました。
しかし…少しずつ平家の栄華は
衰え始めていました。
栄枯盛衰…栄えるならばいつかは枯れ盛んになるならいつかは衰える。これは自然の摂理にございます。
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