第18章 平家の都落ちと規律。

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清盛が生きていた頃は兄弟仲良く暮らしていましたが清盛が死んでしまい宗盛が総帥になってからというものの…。 宗盛「俺が規律だ!俺に従え!」と、 いう態度が目立つようになり兄弟は、 共に住めなくなってしまいました。 清盛の館から出た兄弟らはそれぞれに、邸宅を設けて暮らしていました。 しかし…作ったばかりの我が家から 旅立つ日が来てしまいました。 知盛「紬、みつ、 支度は終わったか?」 紬「みつが手伝ってくれましたから。ありがとう、みつ。」 みつ「有り難き…御言葉…うっ…。」 みつは主人である紬夫妻に礼を言われて感極まって泣いてしまいました。 紬「それで相談なのですけれどみつ…。千代丸を連れて実家である伊賀国へ帰ってくれないかしら?」 みつ「…。えっ…?」 みつは伊賀国出身で京へ出稼ぎに来た際知盛に勧誘されて知盛に仕える事になり紬を継室に迎えてからは紬の侍女として仕えていました。 知盛「済まないが… 親としては可能ならどこでも良いから生きて欲しい。それともし伊賀国へみつが帰りそこで誰かと祝言を挙げたなら知忠を養子にして欲しい。」 それは平家の子である事を忘れて 生きて欲しいという意味でございました。 みつ「そ…それは… 千代丸様が成長なされた時に 悲しまれてしまいます。」 紬「怨みに囚われて生きるより、 全て忘れて自分らしく生きて欲しい。」 それは切なる父母の願いでした。 知盛「紬も懐妊しているし全員を 守りきる事は出来ないので千代丸を よろしく頼む。」 牛車の中にはみつと一緒に働いていた 侍女仲間の亜樹(あき)が咲樂を抱いて先に乗り込んでいました。 亜樹「みつ、後は任せておいて。」 みつ「亜樹、感謝するわ。」 知盛に深々と頭を下げられたみつは、 亜樹からも頼もしい言葉を聞き安堵したのか頷くと千代丸の手を引いて伊賀にある実家へと帰っていきました。 知盛「すまん、千代丸。みつの子として幸せに暮らして欲しい。」 紬「みつなら心配しなくて大丈夫です。しっかりしていますから。」 亜樹「お方様の仰る通りですよ。 みつの分も私が及ばずながらお力に なりまする。」 紬「頼りにしているわ、亜樹。」 亜樹「有り難き御言葉にございまする。」 みつも頼りになりましたが… 亜樹も頼りになると信じ、 紬が牛車に乗り込もうとしましたら胎児が紬の子宮の中で忙しく動いておりました。 なので… 紬は優しくお腹を撫でると 紬「母上が貴方を護るから 心配しなくて大丈夫だからね。」 すると…胎児は安堵したようで 忙しく紬のお腹を蹴らなくなりました。 知盛「紬、どうした?大事ないか?」 知盛が心配そうに紬を見つめながら 問い掛けました。 紬「はい、知盛さん。どうやらお腹の子が不安を感じてしまったみたいです。」 知盛「そうか…。大事ない。 父と兄達がそなたを守るからな。」 兄達というものの高千穂と太郎の姿が 全く見えません。 紬「知盛さん、太郎達は…?」 紬が尋ねると知盛は、 知盛「太郎は秈千代の所に行ってる。 何となく気が合うのかもしれないな。 高千穂は前々から決めていたのかもしれないが僧侶になると言って早々と旅立ってしまった。」 太郎も15歳になりましたので両親と話すよりも歳の変わらぬ秈千代と話す方が楽しいのかもしれません。 高千穂は昔から優しい子でしたので戦で人の命を奪うよりも僧侶となり一族みなの無事を祈る方が良いと判断したのでしょう。 紬「高千穂がそのように決めたなら 私には引き留める事など出来ないけれどせめて私にも旅立つ前に顔を見せて欲しかったわ。」 知盛「それはそうだが…。紬は懐妊しているから月盛も不安にさせたくなかったんだろ?それにしても子供達は親が思うよりも確実に成長しているんだと気づかされたな。」 紬「でも…。」 紬は不服そうでしたが知盛は、 知盛「紬、察してやりなさい。 紬は懐妊しているであろう? そんな紬を悲しませては先程のように 胎児が不安になるかもしれんだろ?」 紬「確かにそうならないよう 優しい高千穂が懸命に考えてくれた 結果ですからね。母として受け止めなければなりませんね。」 知盛「そういうことだ。偉いぞ、紬 でさそろそろ牛車に乗るか?知章を迎えに行かねばならないからな。胎児が驚かぬようにゆっくり乗るんだぞ?紬」 知盛は紬の手を取り優しく 牛車の中へと導きました。 紬「はい、手を貸して頂きまして ありがとうございます。」 知盛「ありがとうございますとは 良い言の葉だな。紬が生きていた 時代の言葉か?」 紬「はい、そうですけど…知盛さん。 知章を迎えに行く刻限ですよ?」 知盛「はっ…!紬と話していると 楽しすぎて会話が弾みすぎて埒が開かぬな。では…太郎を迎えに行って参る。」 紬「はい、行ってらっしゃいませ。」 知盛は紬の大好きな笑顔でニッコリ 微笑むと秈千代と話し込んでいる太郎を迎えに行きました。 さて…残念ながらこちらの方々には、 連絡が来ませんでした。
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