第18章 平家の都落ちと規律。

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維盛の妻である小夜子は新たな道を歩き出したのですが夫と息子から全く連絡が来ず不安で潰れそうな夫人がおりました。 それは… 朝子「頼盛様と 為盛は無事なのかしら?」 3男である光盛と共に住まいである池殿で途方に暮れる朝子でした。 平 光盛(たいらのみつもり)… 頼盛と朝子の間に産まれた3男で、 力が強く穏やかである。 頼盛らの出陣からもうひと月。 朝子「頼盛様や為盛からの連絡はなくどうすれば良いのでしょうか?」 朝子は似たような事を何度も光盛に問う程困り果てておりました。 光盛「とりあえず母上…。 院の元へ参りましょう。」 光盛は父親である頼盛が出陣前に話していた事を守り院の元へ行くべきだと言いました。 朝子「頼盛様を捨て駒になさるような一門に私達の居場所はないわ…」 朝子は一瞬、一門と共に都落ちする事も考えましたが頼盛と為盛が合流出来ない場所へ行く訳にはいきません。 それに… このまま屋敷にいては義仲の行軍により大変な目に合わされてしまいます。 朝子は決断しました。 朝子「分かりました。光盛、 荷をまとめて院の元へ参りましょう。」 光盛「承知しました。」 光盛の指示の元、池殿の荷はまとめられて院の元へ家族は逃げ出しました。 どこか抜けている総帥・宗盛は、 宗盛「さあて、行くぞ!」 意気揚々と荷を牛車に乗せて出立しようとしましたが牛が…動きません…。 宗盛「ん?な、何故に動かん!」 宗盛のお気に入りの宝飾品を詰め込み過ぎて牛車の車の部分は辛うじて宗盛と清宗が乗れるくらいのスペースしかありませんので激怒している人がいました。 光里(ひかり)…一門から冷遇されている頼盛と朝子の娘だが清宗を溺愛しているので清宗の正室となりました。 光里「光里はどこに乗るんです?」 これは光里も怒ります。 何故ならこれでは光里どころか…。 清宗「父上、詰めすぎですよ、確実に…これでは光里どころか」 知章「本当、詰め込み過ぎです。」 牛車の近くで話し込んでいた 知章と清宗に指摘された宗盛が牛の様子を見に行くと、 宗盛「な、な、な、」 宗盛が荷を詰めすぎたため宗盛の牛車を引く牛は疲れのあまり目を回していました。 二位尼「宗盛、牛に対して気の毒とは思わぬのですか?何を考えているのです!」 結局宗盛は良い歳であるにも関わらず母親である二位尼にお説教される羽目になりました。 清宗「父上、荷を減らしますよ。 牛が気の毒ですから。」 宗盛「清宗。待て。」 二位尼「宗盛!この期に及んで貴方は、また何を考えているのです!清宗、この祖母が認めます。荷を減らしなさい。」 清宗「はい、お祖母様。 知章も手伝ってくれぬか?」 知章「畏まりました。」 二位尼「重衡、清宗と知章だけでは厳しいでしょう…。2人に手を貸してやりなさい。」 重衡「はっ!」 すると紬と話し込みすぎてようやく 知章を迎えに来た知盛も合流しまして 知盛「何ですか?この荷は?」 知盛が宗盛の宝飾品の多さに唖然と しておりましたら清宗が…。 清宗「叔父上も手伝って下され。 何せ父上の宝飾品は多すぎましてな。」 二位尼「知盛も手伝ってやりなさい。」 知盛「はっ!」 宗盛「待て、待て。待てー!」 宗盛の制止では誰も止まらず牛が疲れるほど詰めすぎた荷はあっという間に減らされ2箱くらいになりました。 宗盛「とほほ。」 宝飾品のほとんどを屋敷に置いてくる 事になった宗盛は自暴自棄になりまして 宗盛「ああ、もう。頭に来た! 義仲に取られるくらいなら燃やしてやる!」 一同「えっ?」 みんなが戸惑っている間に六波羅と 平家一門の邸宅はあっという間に燃えてしまいました。 紬「私と知盛さんの屋敷が…。」 知盛「仕方ない、、、総帥判断だ。」 総帥としての判断と言うよりかは、 義仲に宝飾品を取られたくないから 燃やしたという方が正しいだろう。 宗盛「では…いざ、西国へ…。」 これで宝飾品を取られずにすむと 御機嫌な宗盛は意気揚々と西国への 道を進んでいきました。 その頃… 山科を防衛していた頼盛と為盛は、 平家一門が都落ちする事など全く知りませんでした。 為盛「父上、京が燃えております。」 頼盛「なんだと?」 為盛に言われて京の異変に気づいた頼盛は為盛と共に「池殿」に向かいました。 山科から京までかなりの時間が掛かってしまい着いた時には5日が経っていました。 頼盛「朝子、光盛…すまん。」 頼盛は灰になってしまった池殿の跡地で家族に対して詫びました。 朝子「…頼盛様…。」 頼盛の後ろから聞きたくて仕方ない 声が聞こえてきました。 頼盛「まさか幽霊か?」 頼盛が振り返ると最愛の妻である 朝子が膨れていました。 朝子「幽霊に足はありませぬ!」 その時朝子の後ろから 「ハハッ。」と笑い声が聞こえてきました。 どうやら後ろで会話を聞いていた光盛が堪えきれず笑ってしまったようです。 頼盛「光盛、笑うでない。池殿が全焼してしまったからてっきりお前達も巻き込まれたかと思ったではないか。」 為盛「しかし、父上。たまたま母上達が避難していたから良かったものを…。あの方には肉親の情というものはないのでしょうか?」 為盛が頼盛の後ろで 腕を組んでいました。 頼盛「こうなれば院に匿って貰うより 手はあるまい。義仲らに身ぐるみ剥がれる訳にはいかないからな。」 こうして頼盛は再会した家族らと共に 後白河院の元へ行きました。 後白河院は平家の都落ちを事前に察知し比叡山に身を隠しておりました。 後白河院「そうか…。そなたの妻は八条院様に長年お仕えしている女官である、なので保護致す。」 頼盛「有り難き幸せでございます。」 さて比叡山から共に内裏に戻った頼盛らは八条院へ身を隠す事になりました。 八条院「朝子、無事で何よりじゃ。 そなたらが住んでいた池殿が全焼したとわらわも仕えておる女官から伝え聞いたもので顔を見るまではとても不安でした。」 八条院(はちじょういん)… 今は亡き鳥羽院の第3皇女で朝子が 大納言としてお仕えしている方である。 朝子「八条院様、御心配をお掛け致しまして申し訳ありませぬ。院の元へ頼盛様と子らと共に参っておりました。」 八条院「そうか…。聞き及んでおるとは思うがもう間もなくあの男が京へ入る事になろう。なのでそなたらは常盤殿に移るが良い。あそこならば長らく使っておらぬから匿えるであろう。」 朝子「有り難き御言葉、お心遣い 深く深く感謝申し上げます。」 さてそうこうしている内に… 八条院に「あの男」呼ばわりされていた源 義仲が京の地を踏みました。 義仲「たのもーう!俺を公家にしてくれ!」 しかしながら京へ来た途端叫びすえる この男は一体何がしたいのでしょうか? 京の民・智草『下品な奴がきたな。』 京の民・冴『これなら平家の方がまだまし。』 いきなり叫ぶものですから義仲は、 念願の京に入ってすぐだと言うのに…。 京の民衆からいきなり白い目で見られてしまう事になりました。 義仲「俺、なんかしたか?」 巴「はしたないですよ、義仲様。」 そうは言っても巴も京での雅な振る舞いなど全く分かりませんので誰かが逃げる時に落としたであろう竹取物語を拾い一所懸命に読んでいました。 この時代に絵巻物を持てるのは、 紬「知盛さん、 竹取物語がありません。」 やはり裕福な清盛の息子である知盛に愛されている紬でございました。 知盛「来る時に落としたのかもしれんな。しかし…今から戻るのは大変危険だ。」 巴が拾ったのは、 知盛が本が好きな紬にプレゼントした絵巻物の1つでございました。 紬「仕方ありませんね。 すみません。知盛さん。」 知盛「紬が無事なら僕は構わない。」 紬と知盛が西国へと向かう牛車の中で 愛を深めている時にこの男は迷走するのでございました。
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