第18章 平家の都落ちと規律。

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範頼「先が思いやられる…。」 範頼は先を案じながら京へと向かいました。 義経「待ってろよ、京美人。」 範頼「はぁ~(溜め息)。」 頼朝はそんな正反対の兄弟をあきれながら見送っていました。 一方こちらは京。 後白河院「西国にいる平家を滅ぼし 安徳帝を連れ戻してくれ。」 義仲を支援してくれる北陸宮の即位… などではなくあくまで安徳帝を取り戻せとの命でございました。 義仲というのは案外義理堅い人物でございまして北陸宮を推したのも源氏に平家を追討せよと令旨を出した以仁王の息子だからです。 しかし… あんまり自らの要求ばかり言い過ぎて これ以上後白河院の機嫌を損ねるわけには参りませんでした。 義仲「畏まりました。」 義仲が西国の平家を討伐する事を誓い、内裏を後にしようとすると院は、 後白河院「ちょっと待ちなさい、こちらの宝剣をそなたに譲渡する故に必ずや孫を…安徳帝を救い出してくれ。」 義仲に高級な飾りが、 施された宝剣を差し出しました。 義仲「はっ!必ずやお救いします。」 後白河院に安徳帝の救出を約束した義仲は、宝剣を腰にある鞘に挿し変えて意気揚々と平家討伐に向かいました。 しかし… 巴『義仲に対して激昂していた院が 宝剣を寄越してまで平家討伐に向かわせるなんて何か裏があるんじゃないかしら?』 ふと疑問に思った巴は 義仲軍にいる間者に命じました。 義仲軍は色んな源氏の寄せ集めですが この間者だけは義仲の家臣でございました。 なので、 巴「絶対に何かあるわ。貴方。 院を見張ってくれるかしら?」 間者・泉「承知。」 それから少し経って間者が 内裏に着くと油断していた後白河院は、 後白河院「く、く、く。確かに孫は可愛いがそなたらの軍勢は悪さをするばかりか米も大量に食べるため京には要らぬ。私には治天の君として京の治安を守る義務がある。経房、早よう上洛するよう頼朝に知らせよ!」 平知康(たいらのともやす)… 院の近臣であるがかなり数奇な運命を 辿る人でございました。 知康「その必要はありません、頼盛殿が亡命する際に鎌倉殿に知らせて下さっているようです。頼盛殿は院や八条院様に借りがありますから必ずやこの事を鎌倉殿に報告すると言われていました。」 後白河院「そうか…。その内に頼朝が助け出してくれるのか…。ならば良い。」 知康「しかし…院、逆恨みした 義仲が襲い掛かって来るかも知れませぬ。万が一の時は我らでは防ぎきれませぬ故僧兵達に援軍を頼んでみましょう。」 後白河院「そちの思うようにせよ。」 知康「はっ!」 間者は義仲の元へ急ぎ向かいました。 間者『主を頼朝らに討たせる訳には… そんなこと…出来る訳がない!』 元々この間者は義仲らが育った所の近くで産まれ育ちましたが父を疫病で喪い母を人さらいに連れ去られて失ってしまった孤児でございました。 孤児「俺には誰もいない。」 気落ちしてしまった孤児は崖に向かい 自らの生涯を閉じてしまおうとしました。 すると… 誰かが後ろから孤児を抱き留め 命を救いました。 孤児「何するんだ?」 孤児が睨みつけるとそこにいたのは、 義仲と巴でございました。 義仲「お前、俺と巴に仕えよ!それで 俺が側に居られぬ時は巴を護れ。 だから…死んではならん!」 孤児「有り難き御言葉でございます。」 天涯孤独になった時に義仲が掛けてくれた言葉はすっかり気落ちしていた孤児の心を救いました。 巴「お父様は疫病でお母様は人さらいにさらわれてしまったのね。」 義仲「それで自棄になったのか?俺は 赤子の時に父親を喪っている。それも 父親の異母兄である男が命令し悪源太 義平という奴の庶子が命を奪ったんだ。」 孤児「そうなのですか…。」 そうして孤児は独自に忍の技を見に付け間者として義仲と巴を陰より支える間者になりました。 幾ら京に住まう人達には嫌われていてもこの間者にとって義仲は生きる意味をくれた希望そのものなのです。 義仲「お前、どこにいたんだ? 勝手にいなくなるな!」 間者が義仲の元にたどり着くと義仲は間者の両肩に両手を重ねて怒りを露に しました。 間者「もう死んだりしません。貴方が 俺の命を救ってくれたんではありませんか?俺は巴様の命で院を見張っていました。」 巴「それで何かあったの?」 間者「巴様、頼盛が頼朝に全てを文に 認めて頼朝の元へ送ってから鎌倉へ亡命したそうでございます。」 義仲「まさか…義経らが攻めて来るかもしれないというのか?」 間者「そうかもしれません、院は我らの事を厄介払い出来たと喜んでいましたから。」 義仲「全軍反転せよ!京へ行く!」 義仲は全軍に初めて指示を出しました。 巴「京へ行って何をするんです?」 追い詰められた義仲は不敵に笑うと 巴に耳打ちしました。 巴「何ですって?」 巴は義仲から告げられた恐ろしき計画に背筋が凍り顔から血の気がサーと引きました。 何故ならば…。
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