第19章 孤立無援な義仲の死

1/7
前へ
/73ページ
次へ

第19章 孤立無援な義仲の死

義仲「院を幽閉し… 俺が征夷大将軍となる!」 巴「それだけはお辞め下さりませ。 信用を失くしてしまいます。」 義仲「義経が来れば、 俺の居場所がなくなるではないか。」 巴は必死に止めましたが、 義仲は聞く耳持ちませんでした。 ついには、西暦1183年11月19日、 法住寺にて両軍は激突する事に… 迎え撃つ後白河院は味方になると表明してくれた法住寺の僧兵らに戦いを任せました。 総大将は平 知康。 平知康「義仲!院に弓引くとは我らが身分を弁えぬそなたらを叩きのめしてくれる!」 義仲「やれるもんならやってみろ!」 しかし…威勢だけは良いものの知康、 絶望的に弱かったため 義仲「ふん!口ほどにもない!」 後白河院の軍は壊滅してしまい味方してくれた僧兵らも全員命を喪ってしまいました。 後白河院「すまぬ、皆。 私はアイツに捕まる訳にはいかぬのだ!」 義仲「どこへ行く?」 後白河院は治安の事を考え逃げ出そうとしましたが追いつめられていた義仲は後先考えずに後白河院を捕まえてしまい、官軍から賊軍へと転落してしまいました。 義仲「院、ここから出ないで貰いたい!」 義仲は後白河院の近臣であり摂政だった近衛 基通の邸宅に後白河院を幽閉しました。 近衛 基通(このえ もとみち)…後白河院の近臣であり摂政でもある。 基通「ほんに乱暴な男でごさいますな。院に対して何たる無礼を…!」 義仲「お前、俺にそんな口を聞いても 良いと思ってるわけ?」 西暦1183年11月21日。 近衛 基通は義仲に対する態度が原因で 摂政の座から解任されました。 基通「ほんに…横暴な…。」 後に据えられたのは…松殿師家。 松殿 師家(まつどの もろいえ)とは…? 妹である葉瑠(はる)が義仲の正室である為義仲とは親交がありました。 師家「この度は摂政にして頂きまして 有り難き幸せに存じまする。義兄上様。」 義仲「葉瑠には… 世話になっていますからな。」 義仲は木曽に残してきた夫人の事を思い出し頬を染めておりました。 葉瑠(はる)… 関白である松殿基房の娘で この度摂政となった松殿師家の妹で、 性格は穏やかで恭順である。 それを見た巴の胸は、 切なく軋みました。 ズキズキッ。 巴は誰よりも慕っていた義仲の元へ葉瑠が嫁いで来た日の事を思い出しました。 遡ること約11年前の 西暦1172年05月10日の朝方 葉瑠「私は、 関白・松殿 基房の娘で葉瑠です。」 突如現れた高貴な雰囲気を醸し出す輿から降りて来た関白の令嬢は田舎娘である巴から見ると天と地くらいの差がありました。 しかし…。 義仲と巴は幼き頃より互いに惹かれ合っておりましたので義仲は当然、 義仲「俺はそなたなど呼んではおらん。俺には巴が居ればよい。早よう帰れ!」 はるばる京から来た関白の令嬢を拒絶し送り帰そうとしました。 すると…。 兼遠「送り帰してはなりませぬ! その方は私がお呼びしたのでございます。」 思わぬ人物が義仲を止めました。 中原 兼遠(なかはらのかねとお)…巴らの父親であり義仲の母親と交流があったため育ての親になりました。性格はとても厳格。 義仲「兼遠、そなたは巴の父親であろう?どうして巴を悲しませる事をする?」 義仲は赤子の時に父親を喪っておりますから兼遠の事を父親のように思っていました。 だからこそ尚更、 兼遠の行動の理由を知りたかった。 兼遠「貴方様は誇り高き源氏の血筋。 頭領(ずりょう)の娘に過ぎぬ巴では 身分不相応というものでございます。」 巴もそれは理解していました。 巴「はるばる京からいらっしゃった葉瑠様に失礼です。父上が仰せの通り私など貴方様の正室にはなれませぬ。どうぞ私に遠慮などなさらないで下さりませ。私は貴方の家臣になりまする。それならばお側にいられます。」 巴は兄である兼平に負けず劣らず武芸に秀でていたため義仲の左腕となる事を決意しました。 そして義仲は葉瑠と祝言を挙げて 夫婦になりました。 葉瑠「義仲様は世間で言われている印象と全然違いますね。優しくて穏やかです。」 義仲「俺にとって葉瑠の側は気持ちが休まるからかな?フフッ。初対面の時は無礼な態度を取ってすまなかった。」 葉瑠「いいえ…。突然誰かも分からない人間が来たら警戒しますよね。」 この時初めて胸が痛むという感覚を覚えた巴は仲睦まじく微笑む2人を見ていたくなくて自らの居室へ急ぎ戻りました。 その日の夜、亥の刻。 義仲「巴、寝たのか?」 なんと義仲が祝言を挙げた日の夜だと 言うのに何故か巴の居室を訪ねて来ました。 巴「どうしてですか?義仲様。」 巴が尋ねると義仲はいつものように 笑っていました。 義仲「簡単な事よ、俺が愛しくて仕方ないのは巴だと言う事だ。俺の家臣になるとか言い切っておきながら俺と葉瑠が話しているのを見ると耐えきれずその場を去る。俺はそんな可愛い巴を好きになったんだ。」 巴「そんなこと… 仰ってからかうおつもりですか?」 義仲「そんなことあるわけない! 俺はお前が誰より好きなんだ。」 巴「義仲様。」 義仲は巴に対して想いを遂げ、 巴はこの日から義仲の家臣であり 愛妾になりました。 時は流れ…西暦1173年03月20日。 義仲の愛妾となった巴は、 義仲の嫡男である遥千代を産んだ。 しかし… 兼遠からは激怒されてしまい 兼遠「巴、和子様は葉瑠様の養子とせよ!あれ程義仲様に懸想するなと申したではないか!」 巴「あの子は私と義仲様の子です。」 兼遠「問答無用!」 兼遠は巴の抗議には耳を貸さず産まれたばかりの遥千代を葉瑠に託してしまいました。 葉瑠「私が… 責任を持ってお育てします。」
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加