第19章 孤立無援な義仲の死

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義仲の正室にもなれず子まで奪われた 巴は絶望してしまいました。 兼遠「食事も取らぬとはどういうつもりだ?親に対しての抗議のつもりか?」 巴「…。」 巴はあまりに悲しみと絶望が深くて 3日程食事をしませんでした。 兼遠「まぁ…外に置いておくから いい加減に食べなさい!」 こんな時まで厳格過ぎる父親に嫌気が 差していた巴の元に、 義仲「入るぞ、巴。」 兼平「巴、いい加減に食べた方が良い。」 義仲と兼平が握り飯を作って 持って来てくれました。 巴「美味しいです。」 兼平「その塩むすびは葉瑠殿が作って 下さったのだ。あのお方は関白の娘だから塩を嫁入り道具に持っておられたからな。」 巴「どうしてこのような仕打ちを?」 巴が兄を睨むと義仲が代わりに答えました。 義仲「俺が少しでも食べられるように頼んだ。巴、俺の家臣には勝手に死ぬ事は許可していない。ましてやそなたは育てられずとも我が子の母親ぞ。子を悲しませてはならぬ。それに俺もそなたが死ねば身を斬られるよりも辛いのだ。」 兼平「私もだ。妹に先立たれるなど 兄として身を斬られる以上に辛い。 父上とて厳しい事を仰せになられては いるが同じ思いであろう。」 巴はこの日から気持ちを切り替え 義仲を戦場であろうとどこであろうと 支えきる覚悟を改めて誓ったのでした。 義仲「巴…?巴…?如何した?」 義仲に呼ばれて巴が我に還るとその場にいる皆が巴を見ていました。 巴「何でもありません。」 巴はあまりにも恥ずかしくて耳まで 真っ赤にしていました。 師家「葉瑠は木曽にいるんですよね?」 義仲「葉瑠は優しいですから戦場に身を置く事など辛いだろうと判断しました。」 師家「そうですか…。」 師家は何も言いませんでしたが…。 義仲から置いてけぼりにされた葉瑠は 木曽の屋敷で泣いていました。 葉瑠「私など所詮はお飾りの正室。 私を励ましてくれた遥千代も鎌倉。 私は独りだわ…。」 しかし…義仲軍には離反が相次ぎ 勢力は2000程に激減していました。 義仲「平家に同盟を頼んでみるか?」 兼平「え?平家にですか?」 兼平が驚くのも仕方のない事でございます。何故なら… 兼光「義仲様、倶利伽羅峠の戦いで 平家を完膚なきまでに叩きのめしたのはどこのどなたでしたか?」 義仲「う…。」 義仲は痛い所を突かれて 黙り込んでしまいました。 しかしながら…そうはいうものの 兼光「我が軍がこのまま頼朝に当たれば敗けは確実でございます。ですから…一か八かの確率に賭けてみましょう。」 と、言うわけで義仲の使者は、 一か八かの可能性に賭けて一ノ谷にいる平家の元へ急ぎ向かいました。 馬を急がせ一ノ谷に着いた使者を迎えたのは総帥である宗盛…ではなくて 重衡「倶利伽羅峠で我が軍を完膚なき までに叩きのめしてくれたのは…誰?」 使者「それは…我が主ですが…。」 重衡「それなのによくここに来れますね?帰って貰えますか?平家が賊軍と手を結ぶ事など断じてありませぬ。」 重衡は使者を追い帰しました。 宗盛「どこまでも面の皮が厚い奴だ!」 知盛「あのような奴と逢わせれば紬の 腹の子がまた驚いてしまうからな。」 重衡「兄上は紬様と片時も離れたくないのでございますね。」 知盛「当たり前だ。」 紬「知盛さん、恥ずかしいです。 皆さんの前で…。」 知盛「何を恥ずかしがる事がある?」 宗盛「ヨソでやってくれ。」 重衡「兄上達の惚気はあまりに熱いので暖が要らずで助かりますよ?総帥。」 宗盛「それは清子に先立たれた俺に対する当て付けか?当て付けなのか?」 清宗「落ち着いて下さりませ、父上。 養母様〈=教子〉もいらっしゃるのですから…」 秈千代は元服し名前を清宗に改め 太郎も元服し名前を知章に改名。 宗盛「そなたまでも…!もう良い!」 知盛・重衡・清宗・紬 「そこ…怒る所ですか?」 宗盛「キー、俺はもう居室に戻る!」 宗盛は怒りが頂点に達してしまい、 居室にダンダンと足音を立てながら 向かいました。 清宗「大人げない父親ですみません。」 清宗が頭を下げると知盛と重衡が…。 重衡「総帥は考える事が多いから 疲れているのかも知れませんね。」 知盛「確かに…。重衡の言う通りだ。 では紬が身体を冷やさぬ内に我らも 居室に戻るとするか?」 紬「はい!」 相も変わらず周りが困る程の熱愛ぶりを発揮しながら2人は居室へと戻りました。 重衡「妻か…。 妻がいたらなんか違うのかな?」 清宗「叔父上は、 どうして妻がいないのです?」 重衡「戦に支障が出るからな。」 清宗「妻もいると生き甲斐になりますよ?」 すると… どうやら清宗にもお迎えが来ました。 光里(ひかり)…清宗の正室で頼盛の娘である。政略結婚なのだが清宗にゾッコンのため少しでも清宗が居ないと大騒ぎする。 光里「清宗様、どこに行かれていたのです?光里を独りにしないで下さりませ!」 政略結婚とは言え清宗を溺愛している光里は清宗が居ないと落ち着かない様子でした。 清宗「すまん、すまん。」 光里「独りにしたお詫びに 手を繋いで下さりませ。」 清宗「はいはい、叔父上すみません。 俺も居室に戻ります。」 重衡「はいはい。ごちそうさん。」 独り残された重衡は…誰もいない 居室に帰る事にしました。
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