第19章 孤立無援な義仲の死

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西暦1184年01月。 義仲が院を脅してまで征夷大将軍になった事は鎌倉の頼朝の元まで届きました。 頼朝「義仲!源氏の名を辱しめよって…絶対に許さん!しかし…院が幽閉されてしまったとなれば対応を変える必要があるかもしれんな。」 政子「左様ですね、義仲の手から院を救い出せば後は院から追討の院宣を頂けるかもしれませんね。」 頼朝と政子が今後の事を悩んでいるその頃義仲の陣営はと言いますと…。 脱走兵が次から次へと続出していましたので義仲の兵力は800しかおりませんでした。 しかし…範頼、義経と宿命の対決をせねば念願叶って手に入れた征夷大将軍の座をみすみす大嫌いな頼朝に譲り渡すことに…。 義仲「それだけは絶対に嫌だ!」 なので…義仲は間者を放って義経らの 動向を探らせる事にしました。 兼光「義仲様、例え理矢理でも院をお連れして北陸へ向かえば幾ら義経でも院に弓を引いたりはしないと思いますが…。」 兼光の言う事も最もでございます。 しかし…現実的に考えてそれは無理でした。 何故ならば… 義仲「兼光、法住寺合戦の折り 比叡山延暦寺から来た援軍の中に 明雲とか申す座主がいなかったか?」 兼光「そう言えば…。」 兼光もようやく思い出しました。 北陸まで最短で行ける道には… 延暦寺があったのでございます。 座主の命を奪った義仲を彼らが通す事など絶対にありませんし…。 今の兵力では座主の弔い合戦だと意気込む彼らから完膚なきまでに叩きのめされてしまいます。 残された道は絶望的ではありますが範頼、義経連合軍と戦うより道はありません。 すると…義経らの動向を探っていた義仲の間者が義仲の元に戻ってきました。 義仲「どうだった?奴らの様子は?」 間者「義仲様、奴らは確実に 京へ近づいています。どう致しますか?」 義仲「それなら手勢を 2つに分けるしかあるまい。」 巴「ただでさえ少ない兵を…。 2つに分けるのですか?」 巴が驚くのも無理ありませんが… 京に義経らを入れないためにこれは 必要な作戦でございました。 義仲「宇治川防衛隊300騎と 瀬田川防衛隊500騎に分ける。 総大将 宇治川防衛隊は巴。」 巴「必ずやご期待に沿えて見せましょう。」 義仲「頼むぞ。瀬田川防衛隊の総大将は、今井 兼平に頼む事にする。」 兼平「必ずや妹を越える働きをすると 約束しましょう。」 一方こちらは範頼と義経の連合軍ですが義仲軍800騎に対して頼朝から与えられた兵力は20000騎になります。 まさに圧倒的兵力でございました。 なので…。 範頼「義経、私は正面から平安京を 目指すため瀬田川から入ろうと思う。」 義経「共に行動すれば その分一網打尽には出来ますが…。」 範頼「それはそうなのだが… しかし…宇治川にも義仲は兵を 回しているだろう…。両軍壊滅となれば。」 義経「平安京から奴は 飛び出して来るでしょうね。」 範頼「そう、飛び出して来た所を叩く。」 義経「畏まりました。」 瀬田川防衛隊を攻撃するのは、 源 範頼率いる10000の本隊でございました。 範頼「逆賊である義仲を完膚なきまでに叩きのめしてやるぞ!」 宇治川防衛隊を攻撃するのは、 源 義経率いる10000の搦手(からめて)でございました。 義経「さっさと終わらせて 可愛らしい舞妓と逢瀬をするぞ!」 範頼「やれやれやれ…。」 その頃義仲はといいますと… 義仲「巴と兼平を信頼しておるから 俺はここを動かぬぞ。」 後白河院が戦の騒ぎに乗じて 範頼らと合流などせぬよう近衛 基通の 屋敷を見張っておりました。 基通「ほんに邪魔くさい。山の匂いが プンプンするわ…くさい…くさい。」 後白河院「基通、止めよ。アヤツに聞かれたら実に面倒な事になるゆえ義経らが京入りするまで待つしかあるまい。」 こちらは宇治川防衛隊の大将である巴。 巴「こちらは命に換えても守りきるわ。」 働き者の愛妾は愛しき人のため戦い抜く事を決意していました。 兼光「巴、この戦で勝つ事は限りなく0に近い…。いいや…絶対に勝てるはずはない。だから万一の時は逃げよう。瀬田川にはそなたの兄がいる。そこまでは必ずや連れていく。」 兼光は巴や兼平と直接的な繋がりはありませんが兄妹同然に育ちましたので見捨てる事など出来ませんでした。 巴「兼光殿…?何を言うの? 私は負ける訳にはいかないのよ。」 義仲が参加する戦には必ず巴がいるというくらいに戦の経験がある巴ですがこの度とても意地になっていました。 兼光「初めて義仲様から総大将に任じられたからって意固地にならなくても良い。命あっての物種だ。それに相手は…。」 兼光の話がちょうど良い頃合いに 差し掛かっているタイミングで向こう岸から義経が10000騎従えて来ました。 義経「諦めて降伏せよ。と言いたいが 僕は強すぎる女性には興味がないんだ。」 出ました、これぞ好みではない女性にはバッサリ言い切ったり相手の背筋が 凍りそうなくらいに冷たい態度をする 義経の得意技・二面性でございました。 ただ… 巴は物心ついた時から義仲一途なので 義経に「興味がない」と言われても 別段気になりません。 巴「私も貴方みたいに頼りなさそうな人嫌いなので御安堵下さりませ。私の心は未来永劫義仲様のものでございます。」 義経「なら…さっさと戦おう! 最も戦わずともどちらが勝つかは 火を見るよりも明らかだがな。」 巴「あんたなんかに私の愛しき人の命は奪わせはしない!」 義仲の命を守るため巴は必死に 義経軍と戦いましたが…。 どうやらやる気があるのは 兼光と巴ばかりでございまして 他の兵達のやる気は皆無でございました。 なので…みな、逃げる、にげる、ニゲル…。 しかし脱走を試みた兵士達はみな、義経軍に手当たり次第討たれてしまいました。 巴「逃げずに戦いなさい!」 巴は多勢に無勢ではありますが… 孤軍奮闘していました。 しかし… 10000騎と300騎の差は、 いかんともし難く 宇治川防衛隊は完膚なきまでに叩きのめされてしまいまして最後まで残ったのは…。 巴「やはり兼光殿の言われた通りでした。」 兼光「巴、懺悔なら後で聞くから今は瀬田川防衛隊に合流するが先決ぞ!」 義経「降伏せよ!」 兼光「断る!行くぞ!巴!」 兼光は巴を自らの馬の後に乗せ 瀬田川防衛隊の指揮を取る兼平の元へ 向かいました。 間者「やはりこうなったか。」 義仲の間者は宇治川防衛隊が壊滅した 事を知らせるため義仲がいる平安京へと向かいました。
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