第19章 孤立無援な義仲の死

5/7
前へ
/73ページ
次へ
間者「義仲様、巴様の奮戦空しく 宇治川防衛隊は壊滅してしまい兼光様と共に瀬田川防衛隊の元へ向かわれました。」 義仲「それならば瀬田川防衛隊と合流するしか他に手段はあるまい。」 間者「何故です?わざわざ総大将が危ない橋を渡らずともここにいらっしゃって下されば安全かもしれないのに…。」 義仲「宇治川防衛隊が源 義経により全滅したとなれば義経に入京を許したも同じ。戦わずして捕縛されるよりも俺は戦の中で死ぬ事を選択するよ。散って逝った兵達の為にも。」 義仲は間者と共に瀬田川防衛隊の元へ 向かいました。 その頃瀬田川防衛隊を任されている兼平は、 兼平「怯むな!押せ!押せ!押せ!」 範頼「無謀だ、止めておけ!」 兼平「妹と義仲様の無事な姿をこの目で見るまでは死ぬ訳には参らん!」 すると… 巴「兄上~!」 兼光の馬の後に乗り手を振る妹と、 その前で微笑む竹馬の友である兼光。 兼平「無事だったか!」 しかし…妹と再会を果たしたとは 言いましても油断など絶対に出来ません。 何故ならば… 兼平「あ、逃げるな!」 瀬田川防衛隊の方も逃げ出す兵が 続出していました…。 ただ彼らも宇治川防衛隊同様範頼軍に よって命を奪われてしまいました。 兼平「くっ! だが負けるわけにはいかない!」 その時ようやく向こうから 義仲「兼平!巴!兼光!無事か?」 間者「皆様、御無事でしたか?」 兼平・巴・兼光「義仲様と間者!」 ようやく3人が 待ち望んだ人達が合流しました。 しかし範頼軍は義仲軍が逃げ出す兵多数だったためほとんど無傷で済みましたが…。 対する義仲軍は死闘を何とか乗りきり ギリギリの体力しかない3人と 戦に参加してないため体力はあるけれど義仲と間者2人で範頼軍を攻撃したとしても残念ながら無意味にございます。 なので彼らは逃げる事を選択しました。 西暦1184年01月20日。 近江国粟津原まで逃げる事は出来ましたが背後からはほぼ無傷な範頼が大軍で迫っていました。 義仲「巴、これまでよく俺に付き従ってくれた。俺は巴のひた向きな強さと優しい所と天の邪鬼な所が誰よりも好きだった。」 巴「義仲様?」 突然の義仲からの言葉に巴は顔を真っ赤にしながらも違和感を感じていました。 すると…。 義仲「だから…生きよ!巴。生きて俺と兼平や兼光、この戦いで逝ってしまった全ての人間の菩提を弔って欲しい。間者、あの約束覚えておるな?」 間者「無論覚えておりまする。義仲様がいらっしゃらない時に巴様をお守りせよとのお約束でございました。」 義仲「なら話は早い。頼むぞ。間者。」 間者「はっ!」 義仲は巴を馬に乗せました。 間者が手綱を引き出発しようとしたその時 巴「義仲様、私も誰よりも優しく頼りになる義仲様に惹かれておりました。今までお世話になりました。」 義仲は何も言わず巴に背を向けていました。 兼平「義仲様、最後くらいお別れの言葉はないのですか?」 すると義仲は肩を震わせて泣いていました。 本当は義仲だって誰よりも大切な巴と 離れたくはありませんでした。 しかしそれ以上に巴が死ぬのは… 耐えられなかったのでございます。 こうして巴は間者と共に戦線を離脱し義仲は兼平、兼光の腹心2人と決死の 戦いを挑むのでございました。 義仲「兼平、兼光、参るぞ!我ら幼き頃より共に生きて来た。それ故死ぬ時は3人一緒だ。」 義仲が決意を新たにしていると兼平と兼光が2人同時に首を振りました。 兼平「我ら義仲様が範頼軍の名も知らぬ一兵卒に討たれるなんて納得がいきません。」 兼光「兼平の申す通りにございます。 我らが囮になります故誰もおらぬ所で 静かに御自害なさって下さりませ。」 兼平と兼光の覚悟は本物でございました。 幼い頃より共に暮らしていたので義仲には彼らの性格がよく分かっていました。 義仲「では… そなたらの言葉に甘えさせて貰う。 さらばじゃ!兼平!兼光!」 とは…言ったものの義仲は彼らの身が 案じられて思うように進めませんでした。 なので…。 範頼軍一兵卒「木曽義仲、覚悟!」 背後から範頼軍の一兵卒に弓にて 射られそうになってしまいました。 義仲「…!」 義仲が気づいた時には、 その一兵卒は義仲の至近距離におり まさに絶体絶命でございました。 それに気づきいち早く義仲の元に たどり着いたのは…。 兼光「義仲様の命はそなたらになぞ くれてやらぬ。」 まさに間一髪、 兼光が義仲の身代わりとなり一兵卒に 討たれてしてしまいました。 義仲「兼光~!」 兼光にすがり付いて泣く義仲に 今度は兼平が駆け寄って来ました。 兼平「兼光が命を懸けて稼いだ時間を 無駄にしないで下され。次は私が稼ぎます。ですから…お早く…!」 兼平に急かされて義仲は後ろ髪を引かれつつも馬を急がせました。 しかし…兼光を喪い兼平も喪う事に堪えきれず…ついつい立ち止まってしまった義仲を容赦なく範頼軍の一兵卒が放った弓が貫いてしまいました。 範頼軍の一兵卒 「木曽義仲、討ち取ったり!」 その声を聞いた兼平は、 「義仲様を討たれたいま、戦う意味は 最早ない。もうこうなってしまっては 潔く自害して果てるのみぞ!」 こうして兼平も自害して義仲の後を追いここで木曽義仲の家系は滅んでしまう事になるのでございます。 何故ならば…。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加