第19章 孤立無援な義仲の死

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義高はさくらに手伝って貰いながら 着物を着替え女性風に髪型も変えました。 大姫「義高様、(もとどり)は?」 (もとどり)とは、 武士の命とも言える髪型で髻を結ってから烏帽子を被るのです。 なので…烏帽子を被るには必要不可欠な髪型でございます。 義高「貴女の涙を止めるためなら例え髻を切ろうが女装をする事になろうがそんな事はどうでも良いのです。」 大姫「義高様…。どうか… どうか…ご無事で…。」 義高は頷くと幸氏に…。 義高「幸氏、後は頼むぞ。」 幸氏「はっ!必ずやさくら殿と姫様を木曽にお連れします故必ずや逃げて下さりませ。」 義高「ああ、では…今はさらば。」 若葉(わかば)… さくらの同期で大姫の侍女である。 若葉「さくらに頼まれた通り馬の蹄に真綿を噛ませておいて城下町に隠しておきました。その場所までは私が共に行きます。」 さくら「さすが若葉ね。」 若葉「誉めても何も出ないわよ? と、そんな場合じゃないわよ。参りましょう、義高様。」 義高「忝ない、みな、必ずやまた逢おう。」 そして義高は侍女達に紛れて 鎌倉の屋敷を後にしました。 頼朝「義高、少し話があるのだが…。」 夕方、頼朝が義高の居室に入ると、 いつも側にいるはずの側近・幸氏の姿が ありません…。 ましてや義高は… 頼朝「何故、顔まで夜着で隠している?」 普段活発で床に臥す事など皆無な人間です。 そんな義高が床に臥してましてや義高の事が誰よりも大好きな大姫が全く取り乱してないのです。 そんな状態ではさすがにバレてしまいます。 頼朝「さあて正体を明かして貰おうか? 義高…いや…幸氏!」 頼朝が無理矢理顔を覆う夜着を剥ぐと そこにいたのは義高…ではなく義高のふりをした幸氏でございました。 頼朝「義高はどこだ!皆の者!追え!」 大姫「嫌、止めて!義高様を許して…。 お願いよ、父上様。」 頼朝は大姫の懇願には耳を貸さず、 幸氏を連行してしまいました。 義高を逃がした罪で牢に入れるためで ございました。 政子「頼朝様、最低です。幼い娘が傷つくとは思わぬのですか?幸氏はいつも義高と大姫と幼なじみのように過ごしていた人間ですよ。大姫にもし義高死すの報が届いたなら私は貴方を許しませんから。幸氏が牢に入れられただけであの憔悴ぶり。もしも最悪の事態になったなら…。」 しかし…事態は政子が恐れた通り 最悪の結末を迎えてしまいました。 それから5日後のこと。 義高は頼朝が放った追手に見つかり 捕らえられてしまいました。 義高「くっ…。無念なり。」 義高は入間川の畔で鎌倉御家人の郎党に命を奪われてしまいました。 郎党「義高、最期に言い残す事はないか?」 一応優しさでしょうか?しかし… 義高は首を振りました。 義高『生まれ変わったら姫様、必ずや 添い遂げましょう。それと約束守れずに申し訳ない。』 義高は心の中で鎌倉にいる大姫の心に向かって最期の言葉を伝えました。 そしてそれからする義高は郎党により 命を奪われてしまいました。享年12歳。 それから1日が経過した06月07日。 郎党「頼朝様、埼玉、入間川の畔にて 義高を討ち取りました!これが証に ございまする。」 郎党が差し出した包みを頼朝が開けるとそこには…。 その時、ポーン、 頼朝の背後で毬が跳ねました。 頼朝「うん?」頼朝が背後を振り向くと義高に買って貰った毬が跳ね、近くに大姫が倒れていました。 頼朝「姫!大姫!さくら!さくら!」 頼朝はいつも大姫の世話をしているさくらを呼びました。 さくらも包みの中身を見てしまい 顔面蒼白になってしまいました。 ただ… 今は大姫を床に寝かせねばなりません。 さくら「しっかりして下さりませ、姫。」 大姫はさくらの腕の中で「うーん」と 酷く魘されていました。 政子「頼朝様!頼朝様!ついでに義時!」 無論政子の怒髪天を衝いてしまい義時まで ついでに叱られてしまいました。 義時「姉上、どうして私まで?」 頼朝「義時、そなた義兄を裏切る気か?」 義時「でも…背後を確認せずに包みを開けた兄上も問題です。許婚が死んだだけでも辛いのに…。あのような惨いものを見せられては…。残酷ですよ、義兄上は…。」 戦の中に身を置きながら生きている 義時や政子でさえ包みの中身は残酷で ございました。 大姫は倒れた日の夕方には 意識を取り戻したものの…。 大姫「義高様、そんな所にいらっしゃったの?こちらで源氏物語を読んで下さいな。貴方は私だけの光る君です。」 大姫は源氏物語を持ちながら壁に向かって笑い掛けておりました。 政子「こうなったのもあの郎党と全く配慮のない貴方様の責任です!どうなさるのです?可愛い盛りの我が子をこんなに苦しめて…。」 頼朝と政子に呼ばれた 薬師(くすし)は、 医師「許婚の死、並びにその証を見てしまい卒倒した姫さんは壁などに向かい微笑みながら「義高様。」と仰せになられるようになったと…。病状はこうですな。」 政子「はい。」 頼朝「左様です。医師殿、政子に配慮がないと言われてしまいました。私は配慮がないですか?」 医師「それは失礼を承知で言わせて貰いますが奥方様の主張が正しいと私も思います。それと姫さんは精神を病まれております。」 大姫は「鬱病」になってしまい、 ずっと壁に向かって笑い掛けておりました。 大姫「フフッ。」 これには政子も頼朝に命令しました。 政子「あの郎党が義高を討った証だと 包みなんか持参しなければ…あの子が 壊れずに済んだのです!」 こうして義高を討った郎党はその責任を取らされて命を奪われてしまいました。 しかし… 大姫はずっと笑い続けていました。 大姫「フフッ。」 頼朝が鎌倉で自らの不注意により、 政子の怒髪天を衝いていた頃、 頼朝「ごめんなさい!」 政子「ごめんで済んだら 検非違使は要りませぬ!」 平家は一ノ谷で確実に力を溜めていました。 紬「知盛さん、」 知盛「紬、どうした?」 紬は産まれたばかりの佐武郎を抱いて 知盛を探していました。 紬「何やら不安になるのです?貴方が 居なくなってしまうのではないか?と…。」 不安げにうつ向く紬の髪を 知盛は優しく撫でました。 紬「知盛さん?」 知盛「僕は紬だけを見ているよ。 どこにいても…ね。君は見知らぬ土地で僕の子を4人も産んでくれた僕だけの大切な姫君だ。」 紬「フフッ。姫君だなんて私はもう34歳なのよ。姫君なんて歳ではないわ。」 優月は16歳で異世界転生を果たした異質な存在にも関わらず知盛と共に歳を重ねる事が出来ていました。 知盛「しかし…異世界転生を果たした存在であるのに僕と同じ時を重ねる事が出来るなんて夢みたいだ。」 それは紬も思っていました。 今までは歳なんて重ねたくなかったのに…。 知盛がいれば歳を重ねるのも喜びの1つとなるのでごさいます。
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