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紬「ごめんなさい、知盛さん。」
重衡と引き換えに解放された紬は、
知盛の元へ駆け寄って来ました。
義経「夫婦仲の良い事ですな。
僕も静に逢いたくなりました。」
継信はこの言葉を聞いて
切なく胸が軋みました。
継信「静様だけなのですか?
義経様の奥方様は?」
なので…
ついつい口にしてしまいました。
義経「沙都か?お前、沙都に気があるのか?ならお前にやるかな?舞妓でもないし…。」
継信「お方様はものではありません!
自分なら彼女を幸せに出来ますが彼女が求めるのは貴方様なのです!」
義経「お前!俺のものを奪う気か!
主の妻に懸想するなんて千年早いわ!」
何故か噛み合わない2人の会話、
弁慶があきれていると2人は何故か
取っ組み合いの喧嘩を始めました。
弁慶「義経様!継信殿!お辞め下され!」
またもや始まる源氏対源氏の戦に知盛達はあきれ果てておりました。
義経「もう良い!俺は帰る!」
義経か「僕」から「俺」に一人称を変える時は理性を忘れて怒り狂っている時でございました。
範頼「あいつは女の事になるとすぐこうなるからな。」
あれだけ卑怯だなんだと言われながら捕虜交換作戦で捕らえた重衡を置き去りにして部下達も置いてさっさと帰ってしまいました。
範頼「異母弟がすまん、だがアイツもアイツなりに源氏の損害を減らそうとした事なんだ。」
範頼に謝られた重衡は微笑みながら
重衡「自分も平家の損害を減らそうとして判断した結果です、兄上には幼い子らがおりますが自分は独身ですから。」
そうして一ノ谷の戦いは源氏の快勝に終わり平家の損害は数えきれぬ程でございます。
知章は討ち死にしてしまい、
重衡は捕虜となり敦盛までも…。
敦盛「沙友理、逃げよ!
そなただけは生きて欲しい。」
沙友理「敦盛様が居ないのに生きろと
言われるのですか?それは酷ですわ。」
敦盛「そなたを道連れには出来ない。
必ずや知盛様の元へ戻りなさい。形見としてこの横笛をあげるから。」
沙友理に形見として横笛を渡した敦盛は、熊谷直実の前に出て斬りかかりました。
武芸には全く自信のない敦盛でしたが…せめて愛しい人が逃げるだけの時間くらい稼げごうと思ったのでしょう。
しかし…
坂東武者には到底敵わず敦盛は
捕まってしまいました。
沙友理「敦盛様…!」
沙友理は懐刀を奮い愛しい人を助けようとしましたが沙友理も捕まってしまいました。
敦盛「この愚か者!そなたは逃げよ!」
沙友理「貴方がいない人生なんか
考えられない。」
沙友理は懐刀を抜くと自らの人生を終わらせてしまいました。
敦盛「この愚か者!」
熊谷直実「見たところ貴方様は息子と同じ年齢でございます。私としては逃がして差し上げたいのですが…。」
直実は沙友理にすがりつく敦盛に声を掛けましたが彼の決意は固いものでした。
敦盛「愛しき女が死に私には生きる望みなどありませぬ。この女は一族の侍女でしたから結ばれる事など無理でしたがそれでも生きていて欲しかった。もし私を哀れと思うて下さるのならば私を討ち取り沙友理と同じ墓に眠らせて下され。」
直実「承知…致しました。」
直実は涙ながらに敦盛を討ち取り範頼に報告すると戦線を離脱し出家しました。
そして敦盛の最期の願いを叶えて
同じ墓に2人を埋めました。
直実「愛に生きた儚い人生か…。
切ない終わりではあるが美しい。」
直実は死ぬまで2人の菩提を
弔い続けたのでございます。
現世で結ばれなかった悲しき恋仲の2人が生まれ変わり今度こそ結ばれるようにと…。
義経「謹慎かよ!俺が何したって!?」
一ノ谷の戦いで快勝をもたらした義経。しかし…頼朝には認められる事はなくそればかりか…。
頼朝「範頼に戦の後始末を全部丸投げして京へさっさと帰り舞妓と遊んでいたとは何事だ!愚かなり!義経!そんなに京が良いなら謹慎を命じる!好きなだけ京にいろ!」
頼朝の命令は沙都のために頼朝が京に与えた屋敷の中で謹慎していろとの事でございました。
沙都「私は嬉しゅうございます。」
沙都はただ義経の側に居られる事が
幸せなだけなのですがさすがにいま
それを言うと…。
義経「お前は亭主が苦しんでいるのを見ているのが嬉しいのか?どんだけ性格悪いんだ?」
ああ、言うと思いました。しかし…
この人の場合自らが蒔いた種なので
ございますが…。
ですが…
沙都に片恋を抱いている継信からすると…
継信『お方様はいつ見てもお美しい。』
じっくり愛しき人の顔が見れたので
立場も場所も忘れてうっとりしていました。
弁慶はこの噛み合わぬ主従を見てあきれておりました。
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