第20章 平家の意地、見せるは今ぞ。

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女には見境ありませんが…戦になると 軍神と言いたくなる程の力を発揮する 義経が居ないとこれはまた大変です。 ただ…。 範頼に事態が全て委ねられてしまいましたのでこれはこれで仕方ありません。 義経は義経で… 義経「静に逢いたい。」などと沙都の前で他の女の名前を出す始末でございました。 継信のように一途な男性ならばこんな苦労しなくて済むのに…でも義経以外は好きになれない沙都の悲しき宿命でございました。 沙都「そんなこと言わないで下さりませ。」 義経「お前の言葉は心に響かない。」 ダメだ…こりゃ…。 と、言うことで平家にお話を戻しましょう。 一ノ谷の戦いで完敗した平家は、 讃岐の沖合いに浮かぶ屋島に向かいました。 宗盛「そうだ!屋島に行こう!」 まるで旅行会社のキャンペーンみたいに言っていますが…。 清宗「父上…必死感がまるでありません。」 宗盛「当たり前だ、屋島ならば軍艦を持たない源氏は来れまい。必死感など要らんのだ。」 そうそう…。時忠の娘である聖は、 大宰府に送られました。 聖「私は…知盛様と一緒に生きたかっただけなの…。」 しかし知盛の最愛の人だった鳴海を 生き霊により取り殺したのは紛れもなく聖でございました。 なので…あんなに優しくて愛おしかった知盛は聖を目線で射殺してしまいそうなくらいに睨んでおりました。 すっかり忘れていた聖が今さら出てきたのはこの男の責任でございます。 時忠「聖は生きているのか?俺の責任だ。あんなに可哀想な子にしてしまったのは。だからもし生きていれば義経か範頼に嫁がせて刑死を免れよう。」 子を手駒としてしか見てない父親の元に産まれた可哀想な聖は流罪先の大宰府で新たな幸せを見つけておりました。 相手は大宰府のお役人に仕える家臣 東吉でございました。 東吉「おら、家臣と言っても農民だのに本当におらの妻になってくれるだか?」 聖「私は平家から見捨てられた人だから…。」 聖は東吉に生き霊騒ぎの話をしました。 すると東吉はいきなり 聖を抱きしめると髪を撫でました。 東吉「つまり…それだけその人を好いていたという事だろ?おらは君しか見てないよ?ただ銭はないから苦労掛けるかもしれんが…おらの妻になってくれるだか?」 聖は頷きました。 東吉と聖は細々とした祝言を挙げ 正式に夫婦になりました。 この男の手駒はお夕だけになりましたが、お夕もまた知盛に惹かれていました。 お夕「父上、私達は貴方の手駒では ありませぬ。」 時忠「何だ?お前も知盛殿に惹かれているのか?だが辞めておけ。紬に夢中なあの方が他の女に惹かれると思うか?無理だな。」 その時、雪が降って来ました。 時忠「一ノ谷に雪が降るなんて珍しいな。」 嶺子「貴方、何を寝ぼけているんですか?屋島に行く準備をして下さりませ!」 嶺子は不機嫌そうに 時忠とお夕を見ていました。 時忠「はいはい、分かりましたよ。」 お夕の目線には知章を弔おうとしている寄り添う夫婦がいました。 紬「ごめんなさい…。私が人質になんか取られなければ…あの子を喪わずに済んだのに…。」 知盛「もう泣くな。知章が成仏出来なくなるだろう…?知章が紬を助けると決めたんだ。それ以上言うと重衡も知章も困るだろう…。」 紬「はい、知盛さん。雪が降ってきました。寒いので寄り添っても良いですか?」 知盛「おいで、紬。」 2人は雪の中で寄り添っていました。 まるで絵になる2人にお夕は、 『私では紬さんの代わりは勤まらないわ』 悲しみを堪えながらお夕は、 時忠「嶺子もやってよ!」とぼやきながら荷をまとめている父親の元へ戻りました。 平家は一ノ谷から船に乗ると 屋島へ向かいました。 ようやく屋島に腰を降ろした平家でしたが、清盛がいた頃と比べると権威を完全に失っていました。 そんな平家を倒そうとしている範頼でしたがさすがに海を馬に乗って渡る訳にはいかないので…。 範頼「船、船、船、」物凄い勢いで、 船を探すも船は見つかりません。 それで1年時は流れてしまいました。
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