第2章 婚約内定

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朝からずっと走り回っていた知盛は、あまりの忙しさに耐えかねて 周りを見渡してはみました…。   しかし… 知盛「誰も助けてくれそうな方は…」 宗盛「お祖父様、 知盛を助けてやらねば…。」 時信「ならん!」 明日のため、時信から蹴鞠の厳しい稽古を付けられている宗盛の助けなど 当然期待出来る訳もなく… 知盛「あまりの忙しさに独り言が増えてばかりだが1人では片付かないし… 誰か助けてはくれぬものか?」 途方に暮れていた知盛でしたが… 救世主とは思わぬ所にいるもので… 次の瞬間、 ポンッと肩を軽く叩かれた知盛が振り返るとそこには優しく微笑む美女と凛々しい公達がいました。 知盛「貴殿方はどちら様ですか?」 知盛が尋ねると 凛々しい公達が答えました…。 頼平「私は、 武藤 頼兼の嫡男で頼平と申します。 此方にいるのが2歳下の妹で鳴海。 役職は治部卿局でございます。」 兄から紹介された鳴海は軽く頭を下げ 優しく微笑みました。 鳴海「知盛様、私共で宜しければ御手伝い致しますわ。さ、兄上。」 鳴海に促された頼平は頷くと 知盛の仕事を兄妹で分けました。 宗盛「もしかして…良い雰囲気?」 宗盛は茶々を入れようとしましたが その瞬間、 キッ 時信から鋭く睨まれたため、 稽古に集中する事にしました。 宗盛「お祖父様、失礼しました。」 稽古に身の入らぬ宗盛はさておき… 時信は気が気ではありませんでした。 知盛も聖も時信にとっては 可愛い孫でございます。 それに時信は幼き頃より聖を養育していたためどれだけ聖が知盛に惹かれていたかこの目で見て悲しくなる程知っています。 時信「聖…。」 時信が聖の事を気に掛けているまさにその頃聖はと申しますと… 怨みが深すぎて自らの心まで 侵されかけておりました。 聖「憎い!憎い!憎い!憎い! に、く、い!」 但し… 呪いの言葉を発しながらも心の隅では まだ知盛を待っている聖は… 聖『知盛様、知盛様、抱いた憎しみにより我が心の全てが焼き尽くされてしまわぬ内に迎えに来て下さりませ。』 しかし… 憎しみと愛の狭間で踠き《もがき》苦しんでいる聖の切なる祈りは知盛には届きませんでした。 宗盛「お祖父様、聖の件は…」 稽古をしたくない宗盛から 聖の事を言われてしまった 時信は… 時信「宗盛、稽古に集中せんか!」 宗盛を叱りながらも聖の事を案じているので猛特訓にはなりませんでした… 宗盛「お祖父様こそ、 蹴鞠の稽古に集中して下さりませ。」 しかし… それを揶揄(やゆ)した宗盛は、 時信「宗盛、そなたは睡眠時間返上で蹴鞠をして貰おう!」 当然ながら時信から厳しい罰が与えられたのでございました…。
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