一章

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9話  皇帝である俺の父でも、帝国内で無視出来ない存在が四つある。  彼らは帝国建国に貢献し、初代皇帝から直接爵位を授かった、唯一の貴族家。  特にカエディゴ公爵家は、正義感が強い。  公爵の謁見前日に、皇城で殺人事件が起きたと知ったら、皇帝の逆鱗に触れるだろう。  これから俺は明日まで"教育"を受けるはずだ。 「はぁ・・・」 「ひぃっ! い、如何なさいましたか!?」 「誰が発言を許可した?」 「差し出がましいことをしました・・・申し訳ございません!」  部屋では常に、使用人に監視されている。  ため息ひとつも気軽につけない皇子なんて、この世に俺くらいしか居ないだろう。  血の匂いがこびり付いた部屋にいても気分が悪いので、庭園に出向く。  外に出れば、人々は皇族の気に触れない様に、頭を垂れて道を開ける。  俺以外の皇子なら、試し斬りをしたいとでも言って、数人は殺しているだろう。  第二皇子は公爵の謁見を知った上で、わざわざストレス発散に俺の部屋を選んだ。  俺に責任を押し付ける為だけに、好きな紅茶を気に入らないと言って、殺す理由を作った。  "教育"が終わった時、俺の姿を見て笑みを浮かべる第二皇子の姿が容易に想像出来る。
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