一章

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10話  全て知っていたのに、何故自分から始末を引き受けたのか。  理由は単純、俺が不良品だからだ。  この俺――カイル・ハイデルトは、皇族の中でもトップクラスの魔力を保有しているが、  魔力を魔術として、体外に放出することが出来ない。  魔術を扱う際は、構想▶︎構築▶︎発動▶︎現象と手順を踏む必要がある。  "発動"までのステップは踏めるが、"現象"がどうしても俺には出来ない。  現象、即ち術を世に顕現させること。  事前に魔術が組み込まれた、魔術陣を使えば術の発動は可能だが――  魔力を流すだけなら、魔術師ならば誰でも出来ることだ。  自力で魔術を扱えない不良品の俺が、生かされている理由はただ一つ。  規格外の魔力を、魔術具や魔術兵器の魔力補充に活用出来るからだ。  そして、初老に差し掛かる辺りまでは、魔術の伸びしろがあると言われているので、そういう期待もされているのだろう。  戦争の報せを聞く度に、その兵器の動力源が自分自身である事を思い出す。  今更、罪悪感を感じはしないが――俺には生きる権利なんて無いのかもしれない。
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