一章

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12 「剣術の訓練がしたいのですが、付き合ってくれますよね? 兄さん?」 「聞かなくても分かるだろ。そっちのタイミングで構わない」  本来訓練では、刃が潰された剣を使うが、いつも第四皇子は真剣を渡してくる。  断れば、俺が頷くまで暴れ回り、使用人を殺して回り、最後には自分を人質にする。  最初は断っていたが、弟の異常性に気がついてからは、俺は頷くことしか出来なかった。 「それでは――今日こそは、兄さんの右腕貰いますね!」  言葉を言い終えると同時に、勢いよく間合いを詰められ、右腕を狙われる。  いつも通りの、防御を捨てた俺の身体の一部を取る為だけに放たれる一撃。 「甘い」 「うぐっ・・・」  無防備に晒された第四皇子の腹部に、俺は膝蹴りを入れた。  地面に蹲った第四皇子の髪を掴んで、反応が無くなるまで蹴りを入れる。  首を掴んで締め上げようとした所で、その光景を遠くから見ていた第四皇子の付き人が、焦った様子で駆け寄ってきた。 「剣を持った第四皇子を俺に近づけるなと命じたはずだが、命が惜しくないようだな」 「っ・・・! も、申し訳ありませんでした! 家族だけはッ! 私の命だけで、どうかお許しいただけないでしょうかっ・・・!」 「くだらない。ゴミがいくら増えようが、償いになるはずが無いだろう? これを連れてさっさと失せろ」  付き人に向けて、第四皇子を投げ捨てる。 「あ、ありがとうございます! この様な失態は、二度と致しません!」  第四皇子を抱えた付き人は、暗殺者顔負けの速度で庭園から離れていった。
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