39人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
5話
ハイデルト帝国の北部に建てられた、とある教会にて――
見習いの司祭が、教会の慈善活動である、市民の治療を行っている時だった。
北部には、押し寄せる魔物から帝国を守護する役割がある。
領土が魔境に面しているので、北部は騎士や魔術師が多く滞在していた。
魔物の討伐に参加していたとある魔術師は、致命傷を負い、近くにあった教会へと運び込まれる。
教会は神聖なものであるが故、魔境に面した北部では貴重だった。
北部に居る司祭に対して、左遷でもされたのかと揶揄するものも居る。
魔術師を運んだ者は、貴重な治療を施せる司祭がいるとは思っていなかったが――
騎士らの呼び掛けに、見習い司祭は手をあげた。
最初は、北部にいる様な司祭、それも見習いの司祭には、かすり傷程度しか治せないだろうと踏んでいた騎士達だが、
彼女が扱う神聖力と、みるみる内に塞がる傷口を見て、態度が一変した。
数刻して、目を覚ました魔術師は、死に際で暴走しそうだった魔力が何故か鎮まったと、見習い司祭に礼を言った。
その報告は、公爵にとって希望の光だった。
元々、神聖力と魔力は、正反対の性質である。
致命傷を治せる程の神聖力を持つものは滅多に居ないので、今まで知ることは無かったが、
膨大な魔力は、膨大な神聖力で、抑え込めることが分かったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!