一章

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5話  ハイデルト帝国の北部に建てられた、とある教会にて――  見習いの司祭が、教会の慈善活動である、市民の治療を行っている時だった。    北部には、押し寄せる魔物から帝国を守護する役割がある。  領土が魔境に面しているので、北部は騎士や魔術師が多く滞在していた。  魔物の討伐に参加していたとある魔術師は、致命傷を負い、近くにあった教会へと運び込まれる。  教会は神聖なものであるが故、魔境に面した北部では貴重だった。  北部に居る司祭に対して、左遷でもされたのかと揶揄するものも居る。  魔術師を運んだ者は、貴重な治療を施せる司祭がいるとは思っていなかったが――  騎士らの呼び掛けに、見習い司祭は手をあげた。  最初は、北部にいる様な司祭、それも見習いの司祭には、かすり傷程度しか治せないだろうと踏んでいた騎士達だが、  彼女が扱う神聖力と、みるみる内に塞がる傷口を見て、態度が一変した。  数刻して、目を覚ました魔術師は、死に際で暴走しそうだった魔力が何故か鎮まったと、見習い司祭に礼を言った。  その報告は、公爵にとって希望の光だった。  元々、神聖力と魔力は、正反対の性質である。  致命傷を治せる程の神聖力を持つものは滅多に居ないので、今まで知ることは無かったが、  膨大な魔力は、膨大な神聖力で、抑え込めることが分かったのだ。
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