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本編より
以下、本編から抜粋。
◆
「毛虫は、色々、知りたい」
ヤモリはうんうん頷き、落ち着いた声で言った。
「そうかそうか。毛虫よ」
毛虫とヤモリが話をしていると、そこへ。
ひらひらと光る蝶が現れた。
時々、ゴミが落とされる上部から差し込む光と同じような、明るい翅を持つ蝶だ。
「ああ、眩しい。あれは何?」
「光蝶さ。あれに付いていけ。別の所に行けるぞ。但し、こことは違う。食べて寝るだけの生活は出来なくなる」
別の所? 何だそれは。
毛虫は疑問が浮かんで、ふつふつと興味が沸き上がる。行けば何があるのだろう。
◆
そうして辿り着いた。
町だ。
人の住む町。
そよ風が体を掠めて、木の葉を揺らす。
人々の活動的な気配を感じる。地下では聞いたことのない話し声や笑い声が響いてくる。
乗り物の音や楽器の奏でる曲も流れてくる。
見たことのない大きな建物や青空の高さに圧倒され、花と緑の匂いに心地良さを覚えた。
青い空には強い光を放つ、大きな存在がある。
じっと見つめることが出来ない光だ。
「あれは何?」
「太陽だよ」
光蝶が答えた。
地下には僅かに差し込む光があった。あれは太陽から発せられた一筋だったんだと白毛皮は頷く。
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