13人が本棚に入れています
本棚に追加
そうこうしてるうちに、行きで爽快に下った裏山が今度はラスボスの如く立ち塞がった。
ラスボスにしては登場が早すぎるけども、これを越えたらあとは平坦な一本道。昼間みたいな遠回りをする必要もないから、ここを越えれば家までそう遠くない。
しっかし、流石ラスボス。さっきまでの『ペダルが軽い』は何だったのか、変速ギアが付いてるわけでもない普通のママチャリですら前に進まない。
昔はこんな坂の十個や二十個、なんてことなかったのに……筋力と体力の衰えは想定の遥か先を行く残酷さ。
ジリジリと復活する汗に応じて、何の気遣いもなく涼しい顔してるコイツを落としたい衝動が押し寄せてくる。
「蒼くん、立派に育ってくれるかなぁ」
「それCCレモン云々のタイミングで言う台詞だろ。しかもお前、蒼くんもう園児じゃなくなってたじゃねえか。計画性が無いにも程があるぞ?」
最後の会話で発覚したのが、実は蒼くんは今年から小学一年生になっていたということ。もし今日幼稚園が開いていたら、最後の一人まで出待ちして危うく俺だけ不審者になるところだった。こんな調子じゃ残りの時間が心配でならない。
「な、何言ってんのよ〜。実はこのスピリット海紀、あの親子が来ること何となく分かってたんだから!」
「ウソこけ。お前嘘言ってる時あからさまに俺と目が合わないからな?気付いてないんだろうけど」
「そ、それは私がそう思わせてるだけなんだから!騙されてんの〜!」
「いやここで目逸らすなよ」
最初のコメントを投稿しよう!