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「まあ落ち着こうや。学校はすぐそこだから寄るのはいいとして、何故平鈴香が居るって分かる?」
「そりゃーあの子は私ばりにストイックだから。多分お盆なんて関係なく自主練してるはず」
「はずって、それつまりまた憶測じゃねえか」
「……ンンンイイじゃん寄るだけなんだからあ!」
体をくねくねとくねらせてタコの口をしてみせるコイツはどうやら——いや間違いなく——先程の反省なんぞ一ミリもしてないだろう。
これで俺と同じA型だと言うんだから、俺は中坊の時点で血液型診断を信じなくなったんだ。
まあまあ、反省してないのは想定の範囲内だしそれはこの際置いておくとして。
ここでわがままに付き合って貸し一つ作っておくのも悪くはない。ちょっと寄り道をするだけだし、何より、海紀はああ言ってるが俺は平鈴香が居るとは微塵も思わない。
こんなお盆真っ只中の夕方だぞ?自主練するにしても流石にもう帰ってるだろ。
第一、学校で練習するなら顧問が校内に居ないといけなくなるし、野球部とかじゃない限りそれは現実的じゃない。
という推測の元、渋々っぽい雰囲気を出しつつ俺は了承した。
海紀の頭に『〜♪』が浮かんでいるのが目に見えて分かるけども、それを見てほくそ笑む俺の内心は流石に読めていないだろう。
少し整理をすると、別に意地でも平鈴香と接触を避けたいわけではない。むしろ、海紀の願いを極力叶えてやりたいってのが俺の想いでもある。
が、『今』は……今だけは、ちょっと勘弁してくれって話だ。朝は『極力やることを詰め込まないと』と思っていたけど、いざ動いてみればこのザマ。まるで体力が持たない。
できれば明日か、あわよくば明後日……。そもそも、対平鈴香となれば会話パターンを色々とシミュレーションしないと、遇らわれて終わるのが目に見えている。
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