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一本道でコイツの後ろを歩く場合は少し注意しなきゃいけない。
海紀が『ハッキリ』見えている分、海紀によって遮られている範囲は当然俺からは見えない。
だから、まあ突然人にぶつかるってことは無いにせよ——身長差あるし——、物やら段差に気付かず俺だけ被害を被る可能性は十分ある。
それが人気のない場所ならまだ良いけど、こんな人目のつく場所で転けようものならとんだ大恥だ。
それに加えて、目線も意識しなきゃいけない。俯瞰して見ればあくまで俺は海紀の奥を見ていることになるから、たとえ口が動いてなくても目線によっては即変な奴認定される。
これまでが基本閑散地だっただけに、今のやりにくさときたら……ちょっと寄るだけ、なんて気軽さは微塵もなかった。
どれくらい神経を使うかって、「あ、トイレに居るかも!」と閃いては素で男子トイレに入って「ヤベ間違えた」と恥ずかしそうに出てくるコイツを一切目で追ってはいけないと自覚しておかなきゃいけない程度には。
開かずの倉庫、男子トイレ、女子トイレ、プールの更衣室と続く廊下を過ぎると、右手に武道場、左手が部室と視界が開ける。普段は二階の部室から軽音部の楽器音が響き渡っているものの、ここまで静かだと違和感しかない。対抗するように音を鳴らす吹奏楽部の金管楽器隊も居ないし。
「おっかしいなあ。鈴香どころか人の気配すらないじゃん」
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