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むしろ何故そこまで居ると確信できるのかが俺からしてみればおっかしいわけだが、一人東奔西走する海紀を置いてボケッとしてるのもちょっと冷たい気がして、申し訳程度に散策する。
校舎側の部室は基本男子用となっているために、ここに居るとは考えにくい。
確か男子陸上部の部室内にはエアロバイクが置物のように鎮座していたはずだけど、まあ流石に今ヤツが漕いでるってことはないだろう。
部室近くの駐輪場で自転車を探すのが一番手っ取り早いものの、俺がヤツのチャリを把握しているわけもなく——。
「海斗!ちょっと来て!」
唐突に遠くから呼び出しをくらってその方向へ進んでみると、どうやらアイツも同じ考えに達したようで、駐輪場で激しく手招きする海紀の姿があった。
ただの手招きじゃなく、風でも起こしたいのかってくらい腕を上下に振る様子からして、それなりの発見なのか。
「どうした?」
周囲に人がいないことを確認し、声を出す。声を出しといてなんだけど、俺はそれを言ってる途中で気が付いた。海紀が立つその横にある自転車の、異変に。
「このチャリって……」
「これ、私のチャリだよ!?」
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